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2022年4月18日修正{
新セキュリティー仕様のURL
最終更新版
これはなに?
国土交通省・警察庁の「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の内容が事実誤認に基づいた不合理なものであると批判する文書です。ガイドライン策定に関わった有識者らが見落としている国内外の論文や事例を集め、それらに基づいた提言もしています。
形式としてはレビュー論文に近いですが、分量は400ページ弱で、参考文献も350本超と、かなり気合を入れて作りました。
2017年5月18日追記{
せっかくなので交差点設計についての提案を一つ。
意見書の本文では使わなかった画像です。
都道401号(国道20号)の半蔵門交差点を題材に、
既存の道路用地の中でここまで自転車環境を改善できるという例を描きました。
上の部分拡大
}追記ここまで
ガイドラインの何が問題?
現行ガイドラインは1970年から続いてきた日本の自転車政策の方向性を大きく転換し、幹線道路であっても車から構造的に保護されていない車道に自転車を通行させる事を容認(実質的には推奨)しています。その背景には、「海外の自転車先進国では自転車の車道通行が一般的であり、統計的に歩道通行より安全である」という主張が2000年代中頃から日本国内で急激に台頭してきた事があります。
しかしガイドライン策定に関与した有識者らの議論を詳しく見ると、「自転車は車道を通行すべし」という信条的な結論ありきで、
- その結論に都合の良い調査研究だけを引用する
- 都合の良い結果だけが出るように実験計画を立てる
- 先行研究や実験結果を都合良く解釈する
これらの影響を受けて策定されたガイドラインには、整備形態の選定基準や交差点の設計例などに多くの欠陥があり、その指針に従ってインフラ整備を行なえば、海外諸国がかつて経験した失敗を再び一から繰り返す事になる可能性があります。
文書の目的は?
何よりもまず、欠陥ガイドラインに従って危険な通行環境が整備され、そこで死傷事故が発生するという理不尽な事態を防ぐ事です。
曲がりなりにも国の指針であるガイドラインには事実上の強制力があり、実際の整備を担う地方自治体は、その急進的な記述に対して直感的には違和感を覚えていても、指針に背く形で自転車通行空間を整備する事が困難です。国の指針を否定して独自の案で会計検査や警察協議を乗り越えるには厖大な労力を要しますが、自治体レベルではその作業に振り向ける余力に乏しいからです。私が作成した文書はそうした自治体が理論武装する上で役立つように、独自研究ではなく、誰でも入手できる国内外の論文や報告書を中心に構成しています。
一方、ガイドラインを無批判に受容している自治体に対しては、指針通りに通行環境を整備し、その利用を推奨する事が、利用者の命を奪う結果に繋がりかねないと警告する事を意図しています。
自治体職員以外には関係ない?
文書のもう一つの目的は、自転車通行空間の在り方に関する国内の議論の正常化です。
ガイドラインの内容に影響を及ぼした有識者らの議論には、前述のように様々な研究上のバイアスがあり、自治体や警察、一般市民、マスメディアを(意図的ではないにせよ)欺く格好になっています。その結果、「交通の激しい幹線道路であっても自転車は車道を通行する方が安全であり、それを促す施策を推し進めるべきである」という認識が広がってしまっています。
これは、「自転車の利用を促進し、かつその事故リスクを引き下げるには、幹線道路では車から構造的に保護された自転車専用の通行空間が必要である」という近年の世界的な認識に逆行するものであり、車道上での車との危険な混在通行状態からは少なくとも一段上のステップ(歩道通行の暫定容認)に立っている日本にとっては、過去への後退に繋がりかねない誤った認識です。
今回私はこの文書で、有識者らの主張や議論の問題点を徹底的に追及する事で、専門家に対し、一般社会からの科学者への信頼に誠実に応えるよう求めていますが、それと同時に、一般社会に対しては、専門家の言を無批判に受け入れるのは危険であると警鐘を鳴らしています。
また、有識者らの主張に賛同して車道通行原則を肯定している自転車利用者、特にスポーツ自転車の愛好家に対しては、「自分だけが快適に走れればそれで良い」、「一般の自転車利用者も我々のように車道を走るべきだ」といった考え方が、都市の交通社会全体を視野に入れた場合には必ずしも合理的とは言えない理由の一端を説明しています。