蜂の大群かと思ったら、南アフリカ「伝統の」楽器。(本当?)
World Cup ですっかり有名になった Vuvuzela は
良くも悪くも世界の注目を集めている。
ニュースあり、吹き方あり、批判あり、通販あり、アプリあり……。
嫌悪する向きも多い中、フランスのCATV局が
中継音声から vuvuzela 音のみをカットする技術を導入。
映画の音響を手掛ける専門会社の技術を応用したそうだ。
詳細は分からないが、vuvuzela の音の
周波数帯だけを分離する方式と伝えられている。
それなら、やっている事は equalizer と同じだ。
既に Youtube には、市販の graphic equalizer を
使ったやり方を指南する動画も出ている。
さあ、では自分でもやってみよう。
まずは本当に上の動画で紹介されている設定で良いのか、
vuvuzela 自体の音を分析して確認する。
音源は適当に見つけた動画のものを使った。
(目標はスタジアムの音から vuvuzela だけを消す事なので、
vuvuzela だけを綺麗に収録した音源は却って都合が悪い。)
分析は Praat で。
数秒間切り出して、周波数帯域ごとの振幅を見る。
0-22050 Hz
高周波数帯域がガクッと落ちている。
ネット配信用に圧縮された音声だから仕方ない。
0-11025 Hz
0-5512 Hz
0-2756 Hz
最後の spectrogram には各 peak に周波数を書き添えた。
一番低い基本周波数は約 233 Hz だから、シの半音下。
スタジアム付近で売られている(90%が中国製の)vuvuzela は
B♭だそうだから、分析結果と符合する。
(勿論、吹き方で多少上下はする。)
だが spectrogram を見ると、それより上の 409 Hz や709 Hz
(=基本周波数の整数倍)の山の方が大きいのが分かる。
つまり、本当に押さえ込むべき周波数はこの辺り。
(しかも、233 Hz を削るとスタジアムの歓声や
アナウンサーの声まで一緒に消えてしまう。)
以上から、equalizer の設定は
の様にするのが良さそうだと言える。(使用ソフトは Cubase AI 4)
実際に試した結果、vuvuzela の音はかなり削減できたが、
同時にアナウンサーの喋りも聴き取りにくくなってしまった。
別にどうしても聞きたいわけじゃないが、
話し声だけ聞こえて内容が聞こえないとなると、
人間、苛々してくるものである。
高性能な音響機器が有れば別かもしれないが、
ここは妥協して、少しは vuvuzela の音も残す設定の方が、
差し引きでは精神衛生上良さそうだ。
といった結果。
equalizer は意外と多くのソフトに付いている機能なので、
お手持ちのソフトで試してみては?
(vuvuzela の音を消せると謳うソフトウェアも有るらしい。
vuvuzela の音を収録した特殊なMP3をTVと同時に流すと
音波が干渉し 合って云々。原理的にはまず有り得ないのだが。)
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ちなみに、何度も vuvuzela まみれの試合を観た所為か、
個人的にはあの音、あまり不快ではなくなってきた。
慣れてきた。
興味が湧いてきた。
いや、もう寧ろ
吹いてみたい。