2011年に出た新訳の『狂気の山脈』を読んだ。
書評の通り、確かに読み易い。
語順が良く整理されていて文が滞りなく流れる。
ただ、日本語として不自然な点が全く無いわけではない。
本編後半で多用されている「ほのめかす」は
どうにも日本語の感覚からずれている。
例えばこれ。
p.221
読者に届ける言葉程度では、あのおぞましさは
ほのめかすことさえできはしない。
個人的な理解では、「ほのめかす」の意味は
話し手が或る命題を直接的に言明{できない/したくない}状況下で、
それでも聞き手に何とかその命題を推測させようとして、
命題に関連が有る表現を使い、間接的に情報を与える事。
ところが訳文に頻出する「ほのめかす」には
こうした含意が無く、単に
「曖昧な表現をする」などの意味で使われているものが多い。
「情報を少ししか出さない」
これ、気にならないかな。
---
あと、長さの単位がインチ、フィート、マイルのままか。
読みながら頭の中で換算してイメージを掴むのが面倒なので、
個人的にはメートルに直して欲しかった。