2015年5月17日日曜日

乗用車の死角ってこんな感じ?

死角の想像図

下記の資料を参考にドライバーの死角を想像で描いた図です。

上の図が正確かどうかは分かりませんが、交差点の設計にはこういう情報が変数として必要なはずです。道路の視距に続いて、今度は車の死角の話です。



オランダの自転車インフラの設計ノウハウを伝えるウェブページでは、交差点などで車と自転車が交差する時の角度が90°になるように設計する事が重要だと指摘されています。(今回の記事で引用している外部サイトのページはいずれも2015年5月17日に最終閲覧)

http://www.protectedintersection.com/
埋め込み動画のナレーションから(書き起こし原稿
With this design, drivers turn 90 degrees to face the bike lane before they even cross it, making people on bikes highly visible and out of the driver’s blind spot.
/*訳: この設計では、ドライバーは90°転回した形で自転車横断帯に差し掛かる事になる。それにより、自転車利用者がドライバーの死角に入らず、非常に認識しやすくなる。*/

http://www.cycling-embassy.org.uk/wiki/cycle-paths-are-dangerous-where-they-cross-junctions
/*略*/ the cycle track is set back from the main road, so that a car turning into the side road has made the full 90 degree turn before they encounter the cycle track crossing, meaning that they have clear sight lines along the cycle track to see approaching cyclists.
/*訳: ……自転車道は車道から引き離される。これにより、脇道に曲がる車は自転車道の横断帯に差し掛かる前に完全な直角ターンを済ませている事になり、自転車道上を接近してくるサイクリストをはっきりと見通す事ができる。*/

http://crowize-vienna.blogspot.jp/2013/08/notes-on-copenhagen-hamburg-and.html
/*略*/ Often there were no traffic lights because they were not needed due to the tight junction corners reducing car speeds, the clear rights of way reducing the need for negotiation
and the 90 degree angle between cars and bikes improving viability at junctions.
/*訳: ……信号機が無い場合が多い。交差点の角の曲線半径が小さく、車の速度を抑制できる事、優先通行権が明確に示されている事、そして、車と自転車を90°で交差させる事で交差点の機能〔視認性の誤りか?〕を改善している事で、信号機を不要にしているからである。*/

http://www.aviewfromthecyclepath.com/2014/05/the-best-roundabout-design-for-cyclists.html
The design of Assen's roundabouts results in crossings of roads always being at 90 degrees /*略*/ This makes it easier for both drivers and cyclists to see what is happening in all directions of interest.
/*訳: アセンのラウンダバウト設計では横断帯が必ず90°で車道と交差している……。この為、ドライバーとサイクリストの双方が、注意を向けるべき方向の状況を確認するのが容易なのである。*/

https://aseasyasridingabike.wordpress.com/2014/09/03/setting-back-cycling-why-have-the-transport-research-laboratory-got-junction-design-so-wrong/
/*略*/ good visibility as cyclists and motorists cross perpendicularly.
/*訳: ……サイクリストとドライバーが直角に交差するので視認性が高い。*/

私は最初にこれらの記事を読んだ時、交差角度が90°に近ければ近いほど良い、言い換えれば、15°よりは30°、30°よりは45°、45°よりは60°の方が良いのだと思ってしまいました。

が、

死角の範囲を図に描いてみると、どうやらこれは間違いのようです。

死角の想像図(再掲)

乗用車のドライバーの死角は左右それぞれの斜め後方に分布しているらしい。となると、中途半端に角度が付いた状態が一番危険っぽい。

これを実際の交差点に当て嵌めたらどうなるかは今後書くつもりですが、日本国内の自転車インフラ設計指針の類いに、ドライバーの死角を取り上げているものが有ったかなあ。

日本は過去、車道で車との事故が多発した事を理由に自転車を歩道に上げたという経緯が有りますが、どこを走らせるにせよ、視距や死角を綿密に計算しないと事故は防げないと思うんです。

そういう、一つの交通システムとしての堅固な工学的基礎が、過去から現在に至るまで碌に築かれてこなかったんじゃないかと疑わざるを得ないんですよね。今の日本の未熟な状況を見てると。

2015年5月19日追記

道路運送車両の保安基準で関係しそうな第21条(運転者席)と第44条(後写鏡等)、それに、対応するそれぞれの告示をざっと読んでみましたが、斜め後方の視界についての具体的な角度指定とかは無いですね。何となく後ろの方が映っていれば良くて、斜め後方は規制の埒外。

前方視界についても、Aピラーで見えない分は基準を満たせていなくても良いとの注記(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示: 第105条第183条)。


2015年5月23日追記

交差点での視距の問題は場合分けして考える必要が有りそうですね。

車道の規模
  • 左折専用レーン(または実質的に左折車だけが通るレーン)が有る
  • 左折と直進(さらに右折)が兼用レーン

交差点の規模
  • 幹線道路同士の交差点
  • 幹線道路と細街路の接続点
  • 幹線道路沿いの駐車場などの出入り口

信号制御
  • 信号機が無い(細街路との接続点や駐車場の出入り口など)
  • 信号機は無いが誘導員がいる(大型店の駐車場出入り口など)
  • 信号機が有る(フェイズ分離無し/右折フェイズ分離/左折フェイズ分離)

クルマの挙動の種類と段階
  • 幹線道路から左折/右折(交差点に接近/転回開始/横断歩道など/転回終了)
  • 細街路から左折/右折(略)
  • ほか

交通参加者の有無とタイミング
  • 歩行者[1, 2, ...](赤信号の間に来て待機/青信号に変わってから到着/いない)
  • 自転車[1, 2, ...](略)(灯火の有無/反射材の有無)
  • クルマ[1, 2, ...](略)

ドライバーの挙動
  • 速度(定速/減速/徐行/停止/加速)
  • 操舵(車線の左端に寄る/転回する/転回と反対方向にハンドルを軽く切る)
  • 視認方法(窓から直接確認/ミラーで確認/車外カメラの映像で確認)
  • 視認に伴う動作(眼球を動かす/首を回す/上体を乗り出す)
  • 視線の配分(注視対象がn方向/一方向への注視時間がn秒)

クルマのミラー(ドア、フェンダー・ミラー)
  • 角度
  • 映せる範囲
  • ミラーに映る像の大きさ 
  • 助手席の同乗者や荷物の有無

環境条件
  • 天候(晴れ/雨/雪)
  • 時間帯(日中/日の出/日の入り/夜間)


まだまだ有りそうですが、列挙していて一つ思ったのは、ドライバーが適切な確認動作をしても危険な死角を解消できないのはマズいだろうという事です。

どんなに不注意なドライバーにも事故を起こさせないような安全な構造が有ればそれに越した事は無いですが、まずはその前に、普通の運転をしている限りは安全が保たれる構造である事が必要かと。