ネーデルラントの自転車インフラ設計マニュアルは、自転車が最短距離、最小時間で移動できるようにすること (directness) を自転車ネットワークの5大要件の一つに据えていますが、日本の自転車政策ではその要件が目標として掲げられることは滅多にありません。行政は自分が自転車利用者からどれだけ時間を奪っているのかにまるで無関心のようです。
そこで、意識を向けてもらう材料を得るべく、池袋駅の南にあるアンダーパスを題材に検証実験をしました。自転車にはスロープ付き階段への迂回を指示し、車道を通らせないという、橋やトンネルでよくある状況の場所です。ここで「側道への迂回」と「車道の直行」を両方、両方向から試し、その所要時間の差を迂回による時間損失としました。
実験結果はあくまで一例ですが、直線距離で僅か300mほどの移動で損失は最大2分38秒。側道に迂回せず先にアンダーパスを抜けた自転車が15〜20km/hで定速移動した場合、約660〜880mもの大差が付く手痛い損失です。当然、現地では少なからぬ人が看板を無視して自転車で車道を直行しています。
別の見方をすれば、車道の一部を自転車道や自転車レーンに転換することで、今よりもっと多くの人が劇的な時間短縮の恩恵を受けられるということです。自転車のネットワーク整備、自転車の利用環境改善とは本来こういうことを言うんですよね(→ルールを遵守させることにしか興味の無い諸氏)。