車の速度を物理的に落とす構造の実装が省かれがちだったこれまでのゾーン30の失敗イメージを払拭するように、新たに「ゾーン30プラス」と銘打って仕切り直した生活道路の安全策。東京都ではその初事例となった本所を自転車で見物した。
ゾーン内の道路の一本に試験的にスラロームが設けてある。一方通行の逆行側には事実上のprotected bike laneを用意している点が画期的。ただし順方向は狭い中で車と混合するので、後続車がいる場合は心理的に落ち着かなかった。同じ理由からか、歩道を選ぶ自転車利用者も少なくない。赤信号で前方に車が詰まっている場合は、空いている逆行レーンに入り右側通行でパスする自転車利用者も(撮影していない時に)見かけた。
車の速度は確かに抑えられているものの、派手な路面ペイントや無数の樹脂ボラードで景観の乱雑さが増していることも否めない。「生活道路だろうと車の円滑な通行が最優先」という既存デザインの根幹(具体的には、高い縁石や切れ目の少ない横断防止柵、滑らかなアスファルト舗装の車道など)を変えていないため、その性質を打ち消そうとする追加要素が煩くなってしまうのだ。デザイン要素同士が喧嘩している。
全てのデザイン要素が一貫して「この通りは端から端まで人が主役。車両の運転は慎重に」とのメッセージを発するように、歩車道の同一平面化や柵の撤去、歩道駐車を防ぐ必要最小限の車止め設置、ブロック舗装化(またはStreetPrintのような凹凸加工)、車道へのプランター千鳥配置、交差点の部分的閉鎖による直進ルートの遮断などをすれば、安全性と景観の上質さを両立できるように思える。