2019年11月27日水曜日

明治通り(並木橋〜広尾一丁目)の自転車レーン

他地域の自転車レーンと同じく、実態は単なる水色の停車帯でしたが……


渋谷橋交差点の南側アプローチでは面白い工夫が見られました。


渋谷橋交差点のデザイン

渋谷橋交差点の南東方向の明治通り。右手の矢羽根は車道端から離れていく。


常時左折可の第1通行帯から直進レーンの第2通行帯へ自転車を誘導

現行の道路交通法では認められるかどうか際どい通行方法ですが、そんな法律の隙間を縫うようにナビラインが引かれています。

普段から車道を走り慣れているであろう自転車ユーザーからは画期的との評価も聞かれますが、そもそもこの通行方法自体が老若男女を問わず誰もが気軽にできるものではないことは心に留め置くべきでしょう。

あくまで、自ら望んで車道を走っているような狭いユーザーグループをターゲットにした、特殊で過渡的な措置と捉えるべきです。


待機位置には交通島が迫り、空間に余裕が無い。


交差点の全景。矢羽根、自転車横断帯、横断歩道が併存している。


樹脂ボラードの撤去

この交差点には以前、自転車横断帯を保護する樹脂ボラードが並んでいた。


しかし駒沢通りに矢羽根が設置されると撤去された。

狭い上に双方向通行でもある自転車横断帯を樹脂ボラードで囲めば自転車同士の危険な錯綜を招くことは想像に難くありません。しかしボラードはそれよりずっと大きな脅威である車から自転車を守ってくれていたはずです。

二段階右折の待機空間の安心感を高めるだけでなく、車道の信号とは無関係に自転車がいつでも左折できるようにする速達化効果もあったと考えられます。


明治通りでも以前はボラードで保護されていた車道端の空間が、


ボラードの無い自転車レーン化したことで路上駐車の侵入に耐性が無くなった。
(画像出典

これははっきり言って退化です。車道からの物理的な分離という長所を保ちつつ、自転車通行空間を広げる方向に進化させるべきでした。


単路のデザイン

他地域の自転車レーン同様、路上駐車に塞がれ、バス停で分断されている。


整備区間の概ね半分は自転車レーン(黄色)ではなく矢羽根(橙色)

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映像資料

今回の取材では写真よりも映像の素材集めに力を入れました。注釈は動画内や、YouTubeの動画説明文に入れてあります。

歩道橋から




地上の実走

以下、当日走った順番に並べています。



初見では二段階右折の場所が分かりにくい他、直進する場合も交差道路の常時左折可レーンから来る車に注意が必要という問題があります。











自転車インフラ整備の社会的意義

そもそもなぜ自転車通行空間を整備するのか。受動的理由としては歩道上での歩行者との交錯という足元の問題に対処するため、能動的理由としては自転車という移動手段の役割を拡大していくため、でしょう。

しかし明治通りの自転車レーンはどうでしょう。このレーンが整備されたことで、女性や高齢者の自転車ユーザーにとっても車道が十分安心な環境になったでしょうか? 周辺の小中高校が生徒の自転車通学を許可するでしょうか? 企業が従業員の自転車通勤を快く認めるでしょうか? 安全性に懸念を持たれるようではインフラ整備の社会的意義は限定的でしょう。安物買いの銭失いです。