2010年3月9日火曜日

自転車道

自転車で出掛けるのが好きだ。
ママチャリだが、下り坂で立ち漕ぎすれば
そこそこスピードも出る。もちろん走るのは車道。

路線バスより早く目的地に着く。
場合によっては電車より早いかもしれない。

が、それは車道だけを走れればの話。
目的地に向う途中、自転車を歩道に
上げざるを得ない箇所が幾つか有る。



道路交通法では、自転車は車道の左側の端を
走るようにと定められているが、(第17, 18条

原宿付近の

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明治通りを南下する車線の左端は左折専用だから
自転車は直進できない。

目白台付近の

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目白通りを東進する車線も、同じく左端が左折専用で、
下手をするとそのまま不忍通りに入ってしまう。

(しかもこの交差点を起点に不忍通りは下り坂。
歩道に上がり損ねると、日本女子大を過ぎ首都高を過ぎ、
護国寺前の交差点を右折すれば講談社。
この前通ったら化物語の垂れ幕が掛かっていた。)

これをどう走れと?

仕方無いから歩道に上がるが、

 ・狭い道幅
 ・店の看板
 ・植木鉢
 ・耳の遠いご老人
 ・耳の遠いご老人並に耳の遠い、携帯片手の若者
 ・動きの予想できない子供、犬

到底まともなスピードは出せない。

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さて一方で、「自転車は歩道を走るもの」と
考える人が、現状では大多数を占めている。

警官さえも「危ないから」と言って、車道の自転車を
制止して歩道に引き戻す。引き戻された。かなりムカつく!
(警察庁は車道走行を原則としている。)

畢竟、歩道上に自転車が溢れ、歩く側から
すれば「鬱陶しい」、「危ない」という事になる。

実際、一部の自転車乗りは徐行などせず
歩道を飛ばしている。見ていて危なっかしい。
(人の振り見て我が振り直せれば良いと思う。)

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こういう事情で、いま全国各地に
自転車道が整備されつつある様だ。
その内の一つが東京の環状6号線。

幹線道路で車道の制限速度が高い上、
勾配にカーブで自転車には危なかったが、
漸く自転車用のレーンが整備された。



標識を立て、植え込みを造作し、
路面のブロックも色を変えてある。
設計者はさぞ鼻が高いだろう。



看板が心配する様な放置自転車も、
少なくとも自転車の動線上には殆ど無い。



だが実態は、

 ・自転車レーンに迷い込む歩行者有り
 ・歩行者エリアを縫って走る自転車有り

で、設計者の意図が全く伝わっていない。

そもそも誰も標識など見ないし、ブロックの色も気にしない。

(電車の例を見よ。座席の乗客が足を投げ出さない様に
床を塗り分けてあるが、完全に無視されている。)

植え込みに至っては「駐輪に丁度良い」とか
「景色に変化が有って良い」くらいの意識だろう。
歩道と自転車道の境界だと誰が気付けるのか。

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自転車はスピードを出さないと意味が無い
という意見が有る。自転車に詳しい疋田智氏は、
例えば通勤をクルマからチャリに変えて
初めてエコロジーと言えると主張している。

「自転車は遅いし10kmも漕げないから
通勤は今まで通り車で」では意味が無い。
「自転車の方が早い」、「10kmなら余裕で漕げる」
となれば車から移行できるというのが氏の主張。

(体力に自身が無い人でも細身のタイヤの
自転車なら楽にスピードが出せるそうだ。)

この観点から見直すと、環状6号線の自転車レーンは

 ・歩道より狭い幅員
 ・どっち方向にも通れる「対面通行」
 ・頻繁に途切れたり突然折れたり

自転車の高速走行が考えの埒外だった事が想像できる。

自転車レーンを車道と同じレベルに下げて
歩道とはハッキリ分けてしまえば良かったのに。

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と、ここまではスピード至上主義の意見。
だが一方、上の様な駄目な自転車レーンは
「歩行者とぶつかるかも知れない」という不安で
自転車乗りの注意力を高く保つ効果も有る。

これは車のドライバーの話だが、
白線、縁石、ガードレール、植え込み等々、
歩道と車道の区別が厳然とする程、
事故のリスクを甘く見てアクセルを踏み込む。

高速道路がその最もたるもので、
「俺この前160km/h出したんだぜ」などと
自慢する学生が同じクラスに!

(本人が平気でも、周りのドライバーが
驚いてハンドル操作を誤ったらどうする。)

「安全に安全に」と作った道路が却って危険。
Vanderbilt氏の調査・インタビューからは
そんな実態が浮かび上がってくる。

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結局どっちが良いのか。
恐らくは、「自転車はこういうもの」という、
その時々のイメージに因って変わるだろう。

日常生活でちょっとママチャリに乗るだけの人
にとっては現状で問題無いだろうし、

スピードの快感に囚われた走り屋にとっては
不満の極みだろう。

今は「低速派」が多いから現状の自転車レーンが
肯定されようが、将来、都市交通の中で自転車の
役割が重みを増せば設計方針も変わるかもしれない。

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疋田智 『自転車の安全鉄則』 朝日新聞出版
Tom Vanderbilt (酒井泰介訳) 『となりの車線はなぜスイスイ進むのか?』 早川書房