2012年10月11日木曜日

車道の走り方 二台の路駐の間で

自転車で車道を走る時の注意点シリーズ。

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前方に路駐車両がいる場合、慣れた自転車乗りなら車道中央側に進路変更して路駐車両の右側を通過すると思います。

では路駐が少し間隔を空けて二台連続している場合、自転車はその二台の間で路肩に寄って後続車に道を譲るべきでしょうか?

それは却って危険であると指摘されています。



アメリカの州政府や州の運輸局が作成した自転車の安全運転マニュアルでは、連続する路上駐車の横を通過する時は車と車の間で道路の端に寄らず、真っ直ぐ走るのが安全であると説明しています。(*1)

*1 日本の国交省や警察はアメリカの州公式マニュアルほど実際的で詳しい自転車安全運転の手引きを作成していません。そもそも自転車の安全確保に何が必要か分かっていない様です。例えば国交省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所が2007年に作成した自転車の安全運転指導案には、車の流れを優先して自転車を危険な状況に追い込む誤った指示が記載されています。(駐車車両を追い越す場合、第二通行帯に進入してはならないという記述。)


該当部分の引用とリンクを以下に挙げます。
(オリジナルのPDFやウェブページには分かりやすい図解が付いています。)

オレゴン州政府が発行する自転車運転の手引き(pdf)
Ride in a Straight Line
This will make you more visible to motorists. don't weave in and out of parked cars – you may disappear from motorists' sight and get squeezed when you need to merge back into traffic.

ウィスコンシン州運輸局が紹介する自転車の安全運転規則(html)
Don't pull into the space between parked cars. Ride just to the right of the actual traffic line, not alongside the curb.

イリノイ州運輸局が発行する自転車安全運転の手引き(pdf)
Parked Cars: Don't wave in and out of parked cars, because you'll confuse drivers; ride in a straight line.

ヨーロッパにも同様の考え方が有ります。

フランス内務省が紹介する自転車の安全(html)
Positionnez-vous clairement sur la chaussée, ne zigzaguez pas notamment entre les voitures.
道路上では走行位置をハッキリさせましょう。ジグザグ走行は、特に車と車の間では避けましょう。
2012年10月28日追記
リンク先のページが消えてしまったので、代わりに、ほぼ同じ内容が書かれているリーフレット(pdf)を参照してください。


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さて、では路上駐車の二台の車がどのくらい近ければ、真っ直ぐ走るのが安全で合理的と言えるのでしょうか。逆に、路上駐車の二台の車がどのくらい離れていれば、車道の端に寄って後続車に道を譲るべきなのでしょうか。

以下の要素を元に計算してみました。
  • 車道(または車両通行帯)の幅員
  • 路駐車両1の{全長、全幅(ミラー含む)、車道左端と車体左端の間隔}
  • 路駐車両2の{ (同上) }
  • 自転車の{全長、全幅(乗員含む)、速度、進路変更速度(*2)}
  • 後続車の{全長、全幅(ミラー含む)、速度}
  • 路駐車両と自転車の間で確保すべき側方間隔
  • 自転車と後続車の間で確保すべき側方間隔
  • 車と自転車の間で確保すべき車頭時間(*3)
*2 斜めに走った時、運動の左右方向の成分が秒速何メートルかという意味。
*3 時間で測った車間距離。但し先行車の後端と後続車の前端の間隔とします。


例として、以下の条件を設定しました。
  • 片側二車線で物理的な中央分離帯が有る
  • 車両通行帯の幅員はそれぞれ3.50m
  • 路駐車両は全長4.46m、全幅2.00m、車道端との間隔0.50m
  • 自転車は全長1.67m、全幅0.50m、速度33.3km/h(*4)、進路変更速度1.0m/s
  • 後続車は全長4.46m、全幅2.00m、速度50.0km/h
  • 路駐車両と自転車、自転車と後続車それぞれの側方間隔1.50m
  • 自転車と車、車と自転車の車頭時間2.0秒
*4 ギヤ50x17Tで700x23C車輪を90rpmで回すとこの速度になります。


計算は以下の四段階を想定しました。
  1. 自転車が最初の路駐車両をパスしてから進路を左に寄せる段階
  2. それを見て後続車が追い越しを開始する段階
  3. 後続車の追い越しが完了し、自転車が元の走行位置に戻る段階(*5)
  4. 自転車が次の路駐車両をパスする段階
*5 追い越して行った車との車頭時間を2秒以上確保できる事を条件とします。


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式は省略しますが、以上の条件を基に計算したところ、第一から第四段階までの全行程に10.25秒必要で、この場合の路駐車両の駐車間隔は93.95mでした。

二台の路駐車両の間で安全を確保しながら後続車に道を譲るには、路駐車両は約90m以上離れている事が必要で、それ以下の間隔であれば自転車は車道の端に寄らずに真っ直ぐ走り続け、路駐車両が途切れた所で改めて道を譲る方が良いという事になります。

なお、後続車が二台以上連なっている場合は、路駐車両の間で一旦道を譲ってしまうと自転車は元の走行ラインに復帰できず、二台目の路駐車両の手前で停止を余儀なくされます。