2015年2月6日金曜日

大橋の自転車環境

移転した大橋図書館に初めて行った時、図書館周辺の道路があまりに自転車で走りにくくて、濠に守られた城を攻略している気分になりました。

大橋図書館周辺の道路(Google Maps)



大橋は国道246号と都道317号(山手通り)が複雑に接続している地点で、道路構造は車を最優先して設計されており、歩行者はまだしも、自転車の利便性は全く考慮されていません。

山手通りの富ヶ谷方面(地図では上)から大橋図書館に自転車でアクセスしようとすると、とんでもなく遠回りになるか、大きな危険が伴うかの二つに一つです。


図書館への経路

水色の線は歩道を通行した場合の経路です。地図上端の日本地図センターを起点にすると、図書館まで徒歩なら300mの距離ですが、自転車の場合は歩道橋を使えないので、
  • 山手通りのY字分岐を経由する最短経路でも500m、
  • 246号の横断歩道を経由する最も長い経路では650m
と、ほぼ倍の距離になります。

ピンク色の線は車道走行した場合の経路ですが、車道の車の流れは速く、安心とは程遠い環境です。
  • ランプウェイを避けて迂回すると500m
  • ランプウェイを使えば僅かに近道で450m
ですが、勾配が急で、車との速度差が大きく開いてしまいます。

タワー東側の道路

このように周辺道路で何度も迂回を強いられ、目的地に中々近付けないので、自転車で大橋図書館に行く時は、濠に囲まれた城を攻略している気分になります。こういうのを"cycle-hostile"(自転車に厳しい)って言うんですね(対義語は"cycle-friendly")。


片側2車線+停車帯

タワー東側の道路は山手通りからY字分岐して246号に繋がる連絡線で、車の交通容量を最重視した設計です。この150mの区間の途中には横断設備が無く、歩行者と自転車の動線を分断しています。


4車線道路を横断する自転車

もちろん、車の流れが途切れたタイミングを見計らって横断する利用者はいます。道路の構造が利用者のニーズから大きく外れている所為で生じるリスク・テイキング行動ですね。画面奥は246号との交差点、大橋交差点です。


大橋交差点の歩道橋

山手通りと246号の接続点には歩道橋は有りますが、自転車が安心して走れる空間は用意されていません。


その一つ西隣りの大橋病院入口交差点の歩道橋

ここは地上に横断歩道が無く、歩道橋が唯一の横断手段になっています。大橋、大橋病院入口と2連続で地上に横断施設が無いので、自転車は相当な迂回を強いられます。(歩道橋のエレベーターに自転車を載せても良いならここで渡れますが、未確認です。)


246号下り線は4車線

歩道橋から車道を見下ろしています。

下り線側の歩道

大橋病院入口交差点

大型の丁字路です。第1通行帯はバス専用レーンですが、規制時間帯は夕方5-7時だけです。


二段階右折する原付用の待機空間が有ります。

仮に車道上に自転車レーンを設けるとしたらこうですね。
(Inkscape と GIMP で作図しました。)

丁字路の横画なので、自転車が車と同じ信号に従うのは無意味です。このように空間を分離して停止線を消し、車の信号とは関係無く常に通過できるようにすべきです(バイパス構造)。

画面奥には交通島方式のバス停を作ってみました。自転車が停車中のバスに足止めされないようにする為の工夫です。歩道とバス停の間の横断歩道には、ゼブラの手前に
「 ▽ ▽ 」
を描いてあります。これは「道を譲れ(give way; yield)」を意味する欧米の路面標示です。

で、そんな自転車専用の通行空間が無い現状がどうなっているかというと、

車と近接して走る自転車

ミニバンが不充分な側方間隔で自転車を追い越しています。

前方の青い軽自動車が減速し、後続のタクシーが第2通行帯に車線変更しています。

ミニバンが不充分な車間距離で自転車を追走し続けています。

左折車に進路を塞がれる自転車

先頭の自転車は左折車の右側に回避して通過できましたが、後ろの2台は進路を塞がれてしまいました。


246号上り線は4車線

今度は上り線を見て行きます。


都心方面(東)

池尻方面(西)

バスベイに入ろうとするバスの後ろを自転車が走っています。

バスの右側を通過する自転車とトラック

安心とは程遠いですね。











方向指示器で発車の合図をしているバスを2台の自転車が追い越しています。同じ246号の三軒茶屋の方で言われている自転車の「問題行動」というのはこういうのを言うんでしょうね。ただ、元はと言えば自転車がバス停をバイパスできる通路が無い事が原因で、自転車の行動だけを責めるのは誤りです。


バスの前で信号待ちしていた自転車が走り出す瞬間

ロンドンであればASL (advanced stop line; bike box) と呼ばれる自転車用の信号待ち空間が設置されているであろう空間でママチャリが信号待ちしていました。

その後も一台の車のように通行帯を占有して走る (= vehicular cycling) ママチャリ

いや、恐れ入ったね。John Forester の影響が30年後の日本のママチャリにまで及ぶとは。



安心だが走りにくい歩道か、不安だが走りやすい車道か

インフラの欠陥の所為で、選びたくない二択状態になってしまっています。