都道441号 西池袋通り(豊島区西池袋・2016年5月撮影)
交差点内の自転車横断帯は歩道上の自転車通行空間と幅や中心線が揃っていないものが多いですが、西池袋や港南(後述)は別格のズレ具合です。しかしこれらの横断帯は一概にダメな設計として否定できない利点を持っているように思われます。
都道441号 西池袋通り(豊島区西池袋・2016年5月撮影)
港区道1164号(港区港南・2019年4月撮影)
港区道1164号(港区港南・2019年4月撮影)
考えられる利点1
車道左端を通行する自転車が交差点を直進する際、自転車横断帯を通行する義務に従ってもほぼ真っ直ぐ進めるのは利点の一つでしょう。しかしこの記事で指摘したいのはそれではありません(そもそも両路線とも車道端は路上駐車で塞がりがちで自転車の通行空間としてはまともに使えませんし)。考えられる利点2
幹線道路から生活道路に左折する車を、自転車利用者が恐怖を感じない位置で待機させることができるかもしれない。これが、無駄に広い自転車横断帯に感じる可能性です。西池袋通りの或る交差点の航空写真(出典)
現状ではご覧の通り、自転車通行空間と自転車横断帯は幅も中心線もバラバラです。
では自転車通行空間を一定幅で真っ直ぐ交差点に渡すとどうなるでしょうか。
生活道路に左折しようとする車は、自転車が近付いている場合、恐らくここで待機すると思います。自転車横断帯の縁の白線を停止位置の目安にするドライバーが多いので。
すると、自転車としては車との距離が近過ぎて、もし車が動き出したら撥ねられるかもしれないと不安になり、図のような回避行動を取るわけです。これも現実の道路でよく見掛ける行動です。このとき近くに他の自転車や歩行者もいるとカオスですね。
しかし無駄に広い横断帯であれば、左折車はここで止まってくれるかもしれません(現地で観察できれば良かったんですが、当時はその可能性を考えていなかったのでスルーしてしまいました)。
その場合、自転車は左折車から十分距離を取って交差点を真っ直ぐ通過できます。
改善案
ただ、設計は根本から見直した方が良いと思いますが!
解説
生活道路との無信号交差点はこのイメージのように歩道、自転車道を平面で連続させるのが恐らくベストの構造です。細かい解説や細部の写真は下記ページにまとまっているので一読をお勧めします。Schrödinger’s Cat (2012) ‘Continuous paths across minor junctions’, The Alternative Department for Transport, 21 August. Available at: https://departmentfortransport.wordpress.com/2012/08/21/continuous-paths-across-minor-junctions/ (Accessed: 26 June 2019).
この記事では簡単に3つの理由を説明します。
1. 誰に優先通行権があるのかがデザインで直感的に分かる
通行空間が連続している方が優先、分断されている方が劣後だということは直感的に理解できるでしょう。標識や路面標示の意味を忘れたドライバーでも大丈夫です。2. 車の速度を強制的に落とさせることができる
生活道路に出入りする車は合計2回スロープを乗り越えて歩道・自転車道を横切ることになるので速度を下げざるを得ません。これは事故防止、事故被害軽減に繋がりますし、ドライバーが歩行者、自転車に道を譲る確率が上がるでしょう(単路の横断歩道では、車の速度が高いほどドライバーは横断者に道を譲らなくなる傾向があります)。3. 自転車や車椅子にとって段差が解消され快適になる
これは説明不要ですね。東京都建設局(2016, p.22)もバリアフリーの観点では歩道の連続化(切り下げ構造化)を推奨しています。東京都建設局 (2016) 東京都道路バリアフリー推進計画. Available at: http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2016/03/DATA/70q3t102.pdf.
ただ、段差や急な擦り付け勾配の解消だけが理由なら歩道のセミフラット化や縁石のスロープ化といった代替手段でも間に合ってしまいます。また建設局は
支道の幅員が広い場合や自動車交通量が多い場合など切下げ構造での整備が適切でない場合には、切開き構造とすることができる。と言っていますが、支道の幅員が広い場合でもオランダでは普通に連続構造を採用していますし (Schrödinger’s Cat, 2012)、その支道が生活道路である場合は、生活道路の静穏化に失敗しているということですから、むしろそちらを是正すべきです。日本の車最優先の思考は本当に根深い……。