2019年12月31日火曜日

検証:「京都市の『計画』の驚くべき成果」


後藤 恭子 (2019) 自転車都市のインフラ整備に一つの答え 疋田智さん「京都市の『計画』の驚くべき成果」, cyclist. Available at: https://cyclist.sanspo.com/504828 (Accessed: 26 December 2019).

京都市の自転車政策が大きな成果を上げていると主張する疋田氏の記事ですが、根拠のない断言や論理的飛躍、誇大表現がいくつも紛れ込んでいます。

裏を返せば、ファクトチェックの練習には打ってつけです。サイゼリアの間違い探しよりは簡単だと思うので、皆さんも挑戦してみてください。

疋田氏の記事を一通り読んだら続きをどうぞ↓



第1〜2段落

第1文

ものすごく地味だけど、ものすごく重要なニュース。今年3月に京都市から発表された「京都・新自転車計画の進捗状況と今後の方向性について」というリポートがある。その内容が、地方自治体がなすべき自転車政策ということで、非常に示唆に満ちていたのだ。

そもそも京都市の「新自転車計画」は、今から9年前の2010年に始まった。

違います。2010(平成22)年に策定されたのは「改訂京都市自転車総合計画」で、疋田氏が言う「京都・新自転車計画」は2015(平成27)年からです。


第2段落

第2文

そもそも京都市の「新自転車計画」は、今から9年前の2010年に始まった。最初に策定したポリシーが「自転車はエリア単位で考えなくてはならない」という考え方だった。
違います。2010年の「改訂京都市自転車総合計画」にはそのような方針は見られません。

「面的整備」という言葉の初出は、おそらく2012(平成24)年3月作成の「自転車通行環境整備プログラム(整備方針)(案)」です。残念ながら資料そのものは見当たりませんが、以下の協議会資料で引用されています。


これがのちに「京都・新自転車計画」(p.37) にも反映されます。

第2段落

第4文

そもそも京都市の「新自転車計画」は、今から9年前の2010年に始まった。最初に策定したポリシーが「自転車はエリア単位で考えなくてはならない」という考え方だった。A地点からB地点に自転車レーンを引っ張るというような考え方ではなく、該当の街区なら縦横すべてに自転車スペースを作るという考え方だ。だから、まずは自転車ピクトグラムと、矢羽根(方向を示す矢印のようなマーク)を、京都市役所前から1ブロック、2ブロックと描いていった。
事実誤認です。京都市役所があるブロックの東西南北の延長線上に当たる道を将棋の飛車のようにStreet Viewで探索すると、2018〜2019年撮影の写真でもそうしたマーキングはほとんど見られません(方角にもよりますが)。

2020年1月23日追記{

探索範囲のイメージ

筆者は疋田氏の言う「ブロック」を「道路で四方を囲まれた範囲」と解釈し、「京都市役所前から1ブロック、2ブロック」の真偽を判断するならこのようなサンプリングで足りると考えましたが、ブロックが「歩道のある片側2車線以上の幹線道路で四方を囲まれた範囲」など、より広範な単位を指している場合は、そのごく一部しか確認できていないことになります。後者の解釈を取った場合の整備実態については次の節で触れます。


京都市役所から西方向
  • 寺町通 ×
  • 御幸町通 ×
  • 麩屋長通 ×
  • 富小路通 ×
  • 柳馬場通 破線とピクトグラム
  • 境町通 ×
  • 高倉通 ×
  • 間之町通 ×
  • 東洞院通 ×
  • 車屋町通 ×
  • 烏丸通 法的効力のない自転車レーン

京都市役所から東方向
  • 河原町通 ×
  • 木屋町通 ×
  • 川端通 ×
  • 新洞経10号線 ×
  • 新洞経9号線 ×
  • 新洞経8号線 ×
  • 新洞経7号線 ×
  • 新洞経5号線 ×
  • 新洞経3号線 ×

京都市役所から北方向
  • 押小路通 ×
  • 二条通 矢羽根(河原町通りから西に1ブロックのみ)
  • 夷川通 ×
  • 竹屋町通 ×
  • 銅駝緯1号線 矢羽根
  • 春日緯17号線 矢羽根
  • 丸太町通 矢羽根
  • 春日緯16号線 矢羽根
  • 春日緯15号線 矢羽根
  • 春日緯14号線 矢羽根

京都市役所から南方向
  • 姉小路通 ×(御幸町通以西は連続線とピクトグラムあり)
  • 三条通 ×
  • 立誠緯3号線 ×
  • 立誠緯5号線 ×
  • 立誠緯7号線 ×
  • 立誠緯8号線 ×
  • 立誠緯10号線 ×
  • 蛸薬師通 ×

通称名の付いていない「○○号線」の場所は「京都市認定路線網図提供システム」で確認できます。

第3段落

第1文

今では、京都中心部の細街路には、これでもかとばかり縦横に敷かれ、細かい街路に入ると自転車マークを見ないところがないくらいになっている。
誇大表現です。審議会資料を見れば、マーキング設置は一部区域に限られていることが分かります。

京都市 (2019-03-13, p.6)

また、整備対象の区域内でも全ての通りに例外なく設置されているわけではありません(例えば京都文化博物館が面する三条通は、2019年5月時点では未設置です)。

京都市 (2019) ‘議題資料 京都・新自転車計画の進捗状況と今後の方向性について’. 平成30年度 第2回 京都市自転車政策審議会, 13 March. Available at: https://www.city.kyoto.lg.jp/templates/shingikai_kekka/cmsfiles/contents/0000250/250078/03_gidaishiryou.pdf (Accessed: 30 December 2019).

第2文

今では、京都中心部の細街路には、これでもかとばかり縦横に敷かれ、細かい街路に入ると自転車マークを見ないところがないくらいになっている。するとどうだ。まずは自転車が左側通行を守るようになった。
論理の飛躍です。疋田氏はマーキング設置と左側通行遵守の間に因果関係があるかのように書いていますが、審議会資料に掲載されている調査結果には、同じような道路構造、交通状況の道路でマーキングを「設置しなかった」場合のデータ(対照群)がないため、マーキング以外の要因(安全教育、街頭指導など)を取り除いた正味の効果を評価することができません。

京都市 (2019-03-13, p.8)

第3文

今では、京都中心部の細街路には、これでもかとばかり縦横に敷かれ、細かい街路に入ると自転車マークを見ないところがないくらいになっている。するとどうだ。まずは自転車が左側通行を守るようになった。これまでは左右デタラメに走っていたのが、矢羽根通りに左側通行。
誇大表現です。生活道路について言えば、マーキング設置前から左側通行率は78%と高く、整備後の改善は7ポイントと小幅です。

京都市 (2019-03-13, p.8)

2020年1月23日追記{

これに関しては見落としがあって、「生活道路(室町学区)」では整備後に自転車の車道走行割合が36ポイントも伸びて9割に達しています。

京都市 (2019-03-13, p.8)

もし道路左側の非車道部分(路側帯)を通行する自転車が少なかった場合、車道・非車道合計での道路左側通行率は前述の7ポイントより大きく向上していた可能性があります。

なので正確には、左側通行率の改善幅は「小幅」ではなく「不明」ですね。


第4文

今では、京都中心部の細街路には、これでもかとばかり縦横に敷かれ、細かい街路に入ると自転車マークを見ないところがないくらいになっている。するとどうだ。まずは自転車が左側通行を守るようになった。これまでは左右デタラメに走っていたのが、矢羽根通りに左側通行。これで(おそらく)出合い頭の事故が減った。
客観的根拠のない憶測です。

2020年1月23日追記{
この次の段落は疋田氏の今回の記事とは直接関係ありませんが、疋田氏が過去に繰り返し発信していた、自転車に左側通行さえ守らせれば事故が大幅に減らせるのでその啓発に最優先で取り組むべき、という見解に対して注釈として付記したものです。


そもそも、無信号交差点での出会い頭事故で自転車側に多い法令違反は一時不停止や安全不確認です(藤田, 2012, p.4)。左側通行さえ守れば良いというものではありません。

藤田(2012, p.4)


藤田健二 (2012) ‘四輪車と自転車の無信号交差点・出会い頭事故の人的要因分析’, in. 第15回 交通事故・調査分析研究発表会. Available at: https://www.itarda.or.jp/presentation/15/show_lecture_file.pdf?lecture_id=76&type=file_jp (Accessed: 28 November 2019).


疋田氏が全くの憶測で語っている「出会い頭事故の減少」は本当に起こっているのでしょうか。京都府警が事故統計を京都府オープンデータ ポータルサイトで提供していますが、予め車種別や年齢別、原因別で集計されてしまっています。データ利用者が自由な切り口で分析するのは難しいですね。

疋田氏ではなく京都市はどう認識しているのかというと、第1回審議会の議事摘要(京都市, 2018-10-25)に次のような事務局発言があります。
走行環境整備と事故の関係性はしっかりと検証したいと思っている。検証作業の途中であるが,概要のみお伝えすると,ひとつの交差点でみたところまだ明確にな /*原文ママ*/ 結果はみえていないというところがある。広域的に検証をかけていきたいと考えている。

京都市 (2018) ‘議事概要’. 平成30年度 第1回 京都市自転車政策審議会, 25 October. Available at: https://www.city.kyoto.lg.jp/templates/shingikai_kekka/cmsfiles/contents/0000245/245903/06tekiroku.pdf (Accessed: 30 December 2019).

第4段落

もうひとつ画期的だったのが、これら路面のピクトグラムを整備したらクルマの平均スピードが落ちたことだ。これは歩行者にも非常に評判がよく、これまで「ドケドケ運転」をしていたクルマがおとなしくなったという(京都市の担当者の話)。
不確かな伝聞情報です。審議会の資料にはそのような調査結果は載っていません。載っていないだけで仮に調査が実施されていたとしても、
  • サンプルサイズは十分大きい?
  • 有意差は出た?
  • 客観的な測定をせず単に印象を尋ねただけなのでは?
  • マーキング未設置路線と対照した?
  • 設置対象に選ばれた区域で歩行者(特に外国人観光客)が増えたからでは?
  • 自動ブレーキ搭載車が増えたからでは?
などの疑問に答えられるだけの堅牢な調査だったのかどうか不明です。談話ではなく正式な報告を待ちましょう。

なお、第1回審議会の議事摘要(京都市, 2018-10-25)に次のような事務局発言があります。
また,例えば交差点において,いままでは交差点内を直進するのが難しいので歩道側に避けるような行動をされていた行動から矢羽根に沿って走行するという行動に変わったというデータがあり,整備前と比較し15%近く増えている。生活道路についても,まずは速度が低下しているというデータと,交差点の一時停止を表すびっくりマークについても,我々としては今後一押しで整備をすすめていきたいと考えている。
ここではデータが「得られた」とは明言していません。文が不完全なまま流れています。自動車の速度なのか自転車の速度なのかも不明です。

京都市 (2018) ‘議事概要’. 平成30年度 第1回 京都市自転車政策審議会, 25 October. Available at: https://www.city.kyoto.lg.jp/templates/shingikai_kekka/cmsfiles/contents/0000245/245903/06tekiroku.pdf (Accessed: 30 December 2019).

第7段落

同じような「自転車等駐車場」が都心部だけで数えて16も設けられた。小中学生への自転車教育も充実させた。地元NPOや警察と協力して数々の安全教室を開いた。さらにいうなら、大きな交差点には右折用のバイクボックスまでできた。一歩一歩進んできた末に、京都の自転車ランドスケープは間違いなく変わりつつある。
チェリーピッキングが疑われる記述です。二段階右折の待機位置はマーキングされた。では、それは実際に使われているのでしょうか。

記事に掲載されている疋田氏撮影の写真の場所は東山丸太町交差点のようですが、東大路通も丸太町通も自動車交通の激しい路線(平日の昼間12時間合計でどちらも1万2000台クラス)でありながら、自転車道も自転車レーンも整備されておらず、自転車の車道通行率(単路)は丸太町通が28%、東大路通が14%とかなり低いです。

東山丸太町交差点(Google Earth @35.017397, 135.778411)

同じ丸太町通の別の調査地点では、単路に比べ交差点では車道通行率がさらに10ポイント近く下がることが分かっています。

京都市 (2019-03-13, p.8)

以上から、東山丸太町交差点でも車道上の二段階右折の待機スペースはほとんど使われていないのではないかと疑われます。記事の写真を見ても車道上の自転車は皆無で、よく見ると画面左端に横断歩道上を渡る自転車の車輪が写っていますね。

ユーザーから使われていない、求められていないインフラなのであれば、整備しても前進とは言えません。

余談:王道から逸れる京都市、そのきっかけは…

京都市も20年前は「自転車総合計画」で、
  • 自転車にとって幹線道路の車道は危険であり、自転車道を整備する必要がある
  • 意識調査では自転車道のネットワークを整備すべきと9割の人が回答
と書いていました(京都市, 2000, p.21):
自転車は,道路交通法では車道を走行することとなっていますが,交通量の多い車道での走行は,自転車利用者にとって非常に危険です。自転車が,歩道を走行することを認められている場所もありますが,幅の狭い歩道での自転車の走行は,歩行者,特に高齢者や身体に障害のある人にとって危険であるうえに,自転車もスムーズに走行することができません。
そのため本市では,道路の幅が十分に確保できる場所で自転車歩行者道や自転車道の整備を図っています。

// 中略

既存道路など,そのような走行空間の整備が困難な箇所についても,建設省が推進する「既存道路空間の再構築」の手法を本市においても検討し,自転車利用の安全性や利便性の確保を図っていきます。

// 中略

自転車等についての実態・意識調査によると,日常生活型自転車道ネットワークを「是非整備すべき」という強い意向が41.9%,「できれば整備すればよいと思う」が47.2%と,合わせて約9割の人が「整備すべき」と回答しており,日常における自転車利用の際の安全・快適な走行空間のネットワーク化が強く求められています。

10年前の「改訂京都市自転車総合計画」でも、
既存の自転車歩行者道や河川の遊歩道などを活用しながら,自転車道,自転車レーンの整備又は既存の自転車歩行者道等を改築することにより,自転車通行環境のネットワーク形成を図ります。
との姿勢を維持していました。

その方向性のまま着実に事業を進めていれば、今頃はニューヨークやロンドンの先を行く、掛け値なしの世界的自転車都市になっていたかもしれません。


方向性が狂い出したのは2014年、「改訂京都市自転車総合計画の見直し検討部会」が設置されてからです。これ以降、京都市の自転車政策は、自転車利用者にとっての安心感や快適性を度外視し、ピクトグラムを点々と設置しただけの幹線道路の車道に自転車を走らせようとする押し売り的な内容に様変わりしていきます。

その部会に有識者として新たに加わっていたのが、疑わしい主張の数々で日本の自転車政策を惑わしてきた古倉氏や、その広告塔である疋田氏でした。

京都市 (no date) ‘部会委員名簿’. 平成26年 第1回 改訂京都市自転車総合計画の見直し検討部会. Available at: https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/cmsfiles/contents/0000170/170895/bukaimeibo.pdf (Accessed: 31 December 2019).

余談おわり。

第8〜9段落

その結果、どうなったか。目に見える結果が出たのである。まずは<表1>をごらんいただきたい。京都市が自転車総合政策をスタートさせたのが前述したように平成22年(2010年)のことだ。まずは自転車事故の総数。平成22年の翌々年から、事故数がぐっと減っていく。

「翌々年から」というタイムラグは当然で、スタート年にコンセプトと施策案を決め、翌年に工程表に従って実際の施工を行うわけだから、結果は翌々年からなのである。
京都市(2019-03-13, p.24)

時系列の取り違えと論理の飛躍があります。

2010年策定の「改訂京都市自転車総合計画」には「面的な整備」の文言がなく、ピクトグラムや矢羽根が広範囲に設置され始めるのはもう少し先のことです。

一部区域(御池通、河原町通、四条通、烏丸通に囲まれた約800m四方)だけは先行して生活道路にマーキングが集中設置されたことが2013年撮影のStreet Viewで確認できますが、たったそれだけの範囲への設置で、京都市全体の自転車事故件数が目に見えて減るでしょうか。少し無理のある推論だと思います。

一方、「改訂京都市自転車総合計画」の下で2014年までに整備された44.6kmの通行空間のうち、最多の36.7km(全体の8割)を占めたのは歩道上を色分けした整備形態です。疋田氏の論法に倣うなら、歩道上の視覚的区分も京都市の自転車事故を劇的に減らしたことになるでしょう。

京都市(2015, p.4)


京都市(2015, p.5)

京都市 (2015) 京都・新自転車計画 ~みんなにやさしいサイクルPLAN~. 京都市建設局自転車政策推進室. Available at: https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/cmsfiles/contents/0000179/179704/keikaku.pdf (Accessed: 26 December 2019).

第11〜12段落

そればかりではない。全交通事故の総数を比較しても、<表2>の通り、これまた平成24年から目に見えて減っている。

私の推測では、たとえ視覚的な分離だけといえど、歩行者と自転車とクルマに、なんとなくの場所指定をすることで、クルマのスピードが落ち、全交通事故が減ったのである。
第3の要因を見落としている可能性があります。全交通事故が減少したとなれば尚更、自転車政策とは別の、もっと大きな要因が働いた可能性を考える必要があります。

例えば、平成24年は祇園と亀岡でドライバーが車で歩行者計30人を死傷させるという社会的な大事件がありました(産経新聞, 2015)。これを受けて規制速度の引き下げや車止めの設置、車道幅の縮小などの対策が一挙に進みましたよね。これに言及しないのはおかしいです。


第12〜14段落

私の推測では、たとえ視覚的な分離だけといえど、歩行者と自転車とクルマに、なんとなくの場所指定をすることで、クルマのスピードが落ち、全交通事故が減ったのである。その結果が、次の表3。全国20の政令指定都市の自転車分担率(全交通の中でどれだけ自転車を使うか)と自転車事故率を座標図にしたのがこれだ。

京都の位置が右下に鎮座しているのが分かるだろう。この第4象限にあたる部分は「自転車をたくさん使うのに、自転車事故は少ない」という最も優秀な状態を表している。岡山市、広島市、熊本市も優秀なんだが、中でも突出して京都市がスゴいことが分かっていただけると思う。

つまり、この約10年の中で、京都という街は日本で一番「自転車が最も頻繁かつ安全に使われている大都市」という称号を手にしたのである。これを重要といわずして、何を重要といおうか。
京都市(2019-03-13, p.25)

誤った推論です。

(「自転車が最も頻繁に使われている」大都市が京都ではなく大阪なのは脇に置いておきます。分担率のデータが10年前の古いものであることにも目を瞑りましょう。)

交通分担率と人口あたり事故件数からなる2軸グラフは「状態」であり「変化」ではないので、この図だけでは京都市の自転車施策の効果を推し量ることはできません。

そこで目が向くのが事故件数の「変化」を表す前出の推移グラフですが、これは「人口あたり」になっていません。

政策審議会の資料は京都市と大阪市を対比していますが、京都市がここ10年で人口が減少しているのに対し、大阪市は増加しています。事故件数は人口あたりで正規化しないと両市の比較に使えません(本当は自転車の総走行距離/人・年で正規化したいところですが)。


第15段落

2019年は論理的な自転車施策とインフラが、初めてその果実を得た年なのである。
誤った結論です。

本稿で見てきたように、疋田氏の記事は事実誤認、誇大表現、論理の飛躍、憶測、第3の要因の見落としなどが満載でした。

それらを排し、手に入る情報から冷静に考えれば、「自転車施策と事故減少の間の因果関係は分からない」というのが正確なところでしょう。


2020年1月4日追記{

サンスポ記事からコメント欄消失

疋田氏の記事には当初コメント欄があり、自転車に優しいとは言えない京都の実情が寄せられていましたが、2020年1月4日現在、コメント欄そのものが消失しています。

2019年12月26日17時08分に閲覧したときの記事末尾


2020年1月4日15時24分に閲覧したときの記事末尾

本件は roadbikenavi (2020) の指摘で初めて気付きました。

roadbikenavi (2020) ‘国道20号(甲州街道)府中の自転車ナビラインを見て思ったこと。’, ロードバイクが欲しい!初心者向けナビ, 4 January. Available at: https://roadbike-navi.xyz/archives/12554/ (Accessed: 4 January 2020).

}追記ここまで