「物流の大動脈」とかね。
なら車は血液だろう。
ところで血液はどこで酸素や栄養を
体組織に受け渡ししているだろうか。
大動脈の只中で? いや、毛細血管で。
この構図は日本の道路には当て嵌まらない。
交通量の多い大動脈たる大通りが
毛細血管も兼ねて乗り降り・荷卸しに使われている。
---
不自然だ。
この不自然な構造の所為で、
道路の物理的な幅員と有効に機能する幅員が
乖離してるんじゃないのか?
「もっと車線が必要だ」とか
「自転車レーンに割く余裕なんか無い」とか
言われているが、本当だろうか。
亀戸駅前の京葉道路
赤丸で示したトラックが荷卸しの為に減速し、後続車が堰き止められている。
駐停車を容認すると(一時的にではあるが)2車線も死ぬ事例。
なお、後続車が右隣の車線に移れないのは、
この状況に至る直前の車間距離が短過ぎた事が一因。
---
そんなボトルネック現象の定量的な分析は
交通工学の専門家に任せるとして、
では、大動脈と毛細血管の機能分担を
道路に応用するとどうなるのか。
香港の実例。まずは大動脈から。
香港島のGloucester Road。
黄色の二重線は「終日駐停車禁止」。
路肩に駐停車している車両は皆無で、
四車線全てが滞り無く流れている。
Gloucester Roadには側道が有る。
黄色の一本線は時間帯指定の駐停車禁止。
(この場所は8:00-10:00と17:00-19:00が駐停車禁止。)
やはり駐停車している車両は皆無で、全車線が流れている。
では一体どこで荷卸しや乗り降りをしているのかというと、
Gloucester Roadの一本裏手に当たるJaffe Road。
駐停車の規制は無く、まさに毛細血管として機能している。
道路の幅は広くないが、一方通行にする事で
駐車スペースを捻り出している。
(以降、自分で撮った写真に適当なものが無かったので
GoogleMap の StreetView に頼る。)
車だけでなくバイクの駐輪スペースも確保されている。
更に狭い通りの場合は片側だけ駐停車禁止になる。(Wanchai Road)
---
大通りと裏通りの関係を模式図にするとこんな感じ。
道路ネットワークの模式図
裏通りは何本も平行に引かれているので
一方通行でも然程不便にならない。
東京では千代田区、中央区、港区、台東区、墨田区の
それぞれの一部地区でこれに近い道路網が整備されている。
が、大通りと裏通りの役割分担が不徹底で、
大通りでの駐停車を防げていない。
---
話を香港に戻す。香港島の対岸に当たる九龍も
大動脈/毛細血管が明確に分かれている。
大通りの Nathan Road は7:00から19:00まで駐停車禁止。
片側二車線にしてはスムーズに流れている。
(一部のバス停は歩道の切り欠きが無く、ボトルネックになっている。)
対して裏通りの Parkes Street では駐停車が規制されていない。
写真右手の黄色い標識は規制解除の標識。
同じ Parkes Street の少し先。
ここは駐停車台数が多過ぎて3列駐車になっている。血栓の様だ。
道路の役割分担を明確にしても
車が多過ぎると機能不全に陥るという例。
これは自家用車の抑制が必要。
ついでに紹介。
同じParkes Street。交差点に接続する手前に狭窄部が設けられ、
横断歩道の直前での駐停車を牽制している。
(狭窄部の手前から駐停車禁止の規制が復活している。)
この構造は同時に歩行者の横断距離を短くする効果も有る。
---
と、実に良く練られた香港の道路だが、
自転車の走行環境に関しては東京以下。
自動車の交通量が凄まじいから大気汚染も騒音も酷いのだが、
だからといって自転車が優遇される気配は無い。
中心街を離れれば違うらしいのだが……。
---
さて、翻って日本は亀戸。
商店主の「荷卸しできない」の声に屈して
実に半端な自転車道を整備してしまったが、
「大通りは通行、裏通りは荷卸し」と
機能分化を徹底しておけば
そもそもこんな問題は生じなかった。
考えが足りなかったな。
View Larger Map