半蔵門交差点の現状(3D地図画像の出典はiOS付属のMaps)
半蔵門交差点の改良案(上の画像をGIMPで加工)
現状の説明
内堀通りは東京都区部でも特に交通の激しい幹線道路で、憲政記念館の辺りから半蔵門にかけては長い上り坂で自転車と車の速度差が大きくなる上、車道には停車帯などの余白が一切無いので、両者の混在通行は極めて危険です。私自身、実際にこの区間を自転車で走っていて車に危険な追い越しをされた事が何度か有ります。
皇居側の歩道はかなり狭く、皇居ランナーで混雑しているので、普通自転車(歩道通行を許可されている一般的な寸法の自転車)でもまともに走れません。カーゴバイクやトレイラーバイク(いずれも100kg程度までの荷物を運べる貨物自転車)に至っては通行不可能です。
反対の最高裁判所側の歩道は一部にやや広い区間も有り、歩行者も疎らですが、細街路との交差点の縁石やdrivewayの粗い石畳で乗り心地がかなり悪い(小径車では転倒の危険がある)上、皇居側と違って長い信号待ちが必要で、内堀通りを回る経路で移動する場合、旅行速度が大きく低下します。
なお、千代田区は自転車の交通分担率が東京23区の中でも最底辺(*)、つまりユーザーの少ない地域ですから、自転車インフラの整備が果たして必要なのかという議論も考えられます。しかし千代田区は一方で、単位面積当たりの車の通行量が23区の中で最も高い地域ですから(**)、限られた道路空間の交通容量を最大化する事、つまり自家用車からバスや自転車への転換を最も真剣に考えるべき地域です。
* 2010年の国勢調査では、千代田区が居住地または通勤・通学先で、通勤・通学の移動手段として自転車のみを使っている人の割合は0.60%と、少数派である自家用車(1.09%)のさらに半分でしかありません。
** 東京都「ロードプライシング資料集>都関連交通情報データ>(4)区部自動車集中交通量密度」但しデータは1994年の道路交通センサス
以上の問題意識から私は、内堀通りには自転車インフラが必要であり、しかもそれは、恐怖感の麻痺した一部のハードコアな自転車愛好家だけでなく、年齢、性別、体力、そして車種を問わず誰もが安心して利用できて、しかも歩行者に危害を加えない構造のものであるべきだと考えて、記事冒頭の図を描きました。
改良案の解説
半蔵門交差点の現状(再掲)
半蔵門交差点の改良案(再掲)
青い帯が自転車道です。
幅員は2.5m程度で、カーゴバイクを考慮すると少し狭いですが、普通自転車同士の追い越し・すれ違いには充分余裕のある幅です。
自転車道は双方向通行を想定しています。内堀通りを時計回りに(道路全体から見て右側通行で)移動する人にとって、幹線道路との交差点での信号待ちを全てスルーできれば移動時間を大幅に短縮でき、自転車の交通モードとしての優位性・競争力が高まってモーダルシフトを促せるからです。
そのために、皇居(手前)側を直進する自転車は車道の信号とは無関係に交差点を通過できる構造(直進バイパス)にしています。
元々車道の第一通行帯だった部分を転用しているので道路全体の幅はそのままです。
現状の歩道の縁石は、大規模な工事を不要にする為、できるだけそのままにしています。
植樹帯で車道と区分し、車の侵入を防いでいます。
車道の左折バイパスは廃止しました。曲線半径が大きすぎて高速で通過する車が多く、横断歩行者や直進自転車にとって非常に危険だったからです(***)。
細街路との交差点は歩道と自転車道を平面で連続させ、車には段差を乗り越えさせて強制的に最徐行させる構造です。このデザインはまた、優先通行権が歩行者・自転車の側にある事が直感的に理解できます。
内堀通りは駐停車禁止にし、全車線を走行用に使う想定です。
新宿通りは必要に応じて植樹帯の部分を駐車枠やバス乗降場(※バスベイではない)に置き換えられます。
交差点の信号機は完全な歩車分離式(歩行者・自転車と車)を想定しています。
車道上の横断歩道のゼブラは無くしました。信号機の有無に関わらず全ての横断箇所にゼブラを引くと、ゼブラが持つ歩行者優先の意味が薄れると考えたからです。
自転車道上の横断歩道には信号機を設けない想定なのでゼブラを引いています。
*** これは交通事故分析センターが纏めた代表的な事故パターンにも含まれています。
図の出典: 交通事故総合分析センター(1999年)「イタルダ・インフォメーション 特集・自転車事故」No.23
2019年5月18日追加{
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