2008年12月21日日曜日
オーボエ
オーボエを始めたい。しかし、いきなり買うには敷居の高過ぎる楽器だ。
近所の店に、中国製でプラスチック製で中古の激安品が有ったが、
試し吹きしようにも、リードを取り扱っていない。
どこかで実物に触れられないものかとネットで調べ廻り、
以前トラヴェルソを買った銀座の楽器店なら有りそうだと見当を付けた。
金曜日、銀座ライオン近くの展覧会を見に行ったついでに、
調べておいた店の管楽器売り場を覘いてみると、
確かにオーボエもリードも揃っている。
お店のご好意でリードを付けた楽器を試す事ができたが、
このリード、篳篥吹きの目には信じられないほど薄い。
理科の実験で使うプレパラートに譬えるなら、
篳篥の蘆舌はスライドガラスで、オーボエのリードはカバーガラスだ。
(小学校低学年の頃、カバーガラスをそれと知らずに
パキパキ割って遊んだ記憶が思い出される。)
リードは小さめのコップに入れた水に軽く浸す。
この薄さだと、熱湯に入れようものなら即成仏だろう。
また、放って置くと閉じてしまうのは篳篥とは逆だ。
リードの先端を唇に載せるだけで戦々恐々、息もつけない。
(歯に直接当たると、それだけで割れる事があるらしい。)
しかも楽器本体が篳篥より遥かに重く、下手に動かせない。
運指を教えてもらいながら「ドシラソファミレド」と一応音は出たものの、
こんなに緊張を強いられるのでは、まともに吹ける気がしない。
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オーボエにはもう一つ、「管の割れ」問題がある。
高温多湿な日本だけの問題と思いきや、
海外の掲示板でもよく嘆かれているのを見る。
日本の笛は伝統的に、管の内側は漆塗りにし、
外側は籐などを巻き付けて補強しているが、
なぜ西洋の木管楽器はそうした防護処理をしないのだろうか。
2008年11月23日日曜日
新宿サザンテラスの電飾
2008年11月9日日曜日
狩衣の採寸
青葉雅楽会が所有する狩衣の内、身頃の幅が狭い一領を採寸した。
生地は黄色に臥蝶丸。薄手で袖幅も狭いので、夏用だろう。
黄金分割を探してみると、
首紙(衿)は普通の狩衣と同じく、和紙で分厚く仕立ててあるが(約8mm厚)、生地の薄さと釣り合いが取れていない印象を受ける。古い狩衣では、特に衿付けと肩山線が接する部分で、屡々糸の解れや肩裏布の破れが見られるが、着装時に狩衣全体の重さが此の一点に掛かる為だろう。袖付けの解れより繕い難い、厄介な箇所だ。
(JW_CAD で製図。クリックで拡大できる)
生地は黄色に臥蝶丸。薄手で袖幅も狭いので、夏用だろう。
黄金分割を探してみると、
- 鰭(はた)袖幅と奥袖幅 (26 : 42 cm)
- 肩山~袖付け下端と其処から袖底 (26.8 : 45.2 cm)
首紙(衿)は普通の狩衣と同じく、和紙で分厚く仕立ててあるが(約8mm厚)、生地の薄さと釣り合いが取れていない印象を受ける。古い狩衣では、特に衿付けと肩山線が接する部分で、屡々糸の解れや肩裏布の破れが見られるが、着装時に狩衣全体の重さが此の一点に掛かる為だろう。袖付けの解れより繕い難い、厄介な箇所だ。
(JW_CAD で製図。クリックで拡大できる)
2008年10月29日水曜日
2008年10月19日日曜日
音楽ブログ開設
この Blogger サービスでは画像と動画以外は記事に添付できないので、今まで録音してきた自分の演奏はパソコンの中に腐らせてきたが、音声配信に丁度良い、別のサービスを見つけたので、早速ブログを開設した: http://www.voiceblog.jp/aberramus
2008年7月21日月曜日
2008年7月13日日曜日
障子張替え
カーテンに続き、染みや黄ばみが付いていた障子も張替え。
白も眩しい新しい和紙を木枠に載せ、端をテープで仮止め。
先に糊を塗っておいてから一気に貼り付けるだけ。
簡単そうだ。
おかしい。
ピシッと貼ったつもりだったが所々浮き上がっている。 和紙をよく見ると紙の端全体に大きな染みがあった。 未だ使っていない残りの紙を平らに広げてみると、同様の染みと凸凹が。 何故か知らないが保存中に水を吸ってしまっていたらしい。
気を取り直して二枚目。
今度はできるだけ染みの部分を避けて張ろうとしたのだが…。
しまった! 糊が!
白も眩しい新しい和紙を木枠に載せ、端をテープで仮止め。
先に糊を塗っておいてから一気に貼り付けるだけ。
簡単そうだ。
おかしい。
ピシッと貼ったつもりだったが所々浮き上がっている。 和紙をよく見ると紙の端全体に大きな染みがあった。 未だ使っていない残りの紙を平らに広げてみると、同様の染みと凸凹が。 何故か知らないが保存中に水を吸ってしまっていたらしい。
気を取り直して二枚目。
今度はできるだけ染みの部分を避けて張ろうとしたのだが…。
しまった! 糊が!
2008年7月10日木曜日
ヴェラ
授業で発表したフランス語の短編小説の和訳を、折角だから載せてみようと思う。
訳したのは、Villiers de L’Isle-Adam 著、Véra の冒頭部分。
原文を掲載しているサイトもある: http://aliquid.free.fr/spip.php?article2891
---
『ヴェラ』
オスモワ伯爵夫人に捧ぐ
「肉体にとって、其の中身より外形の方が本質的である」――近代生理学
愛は死よりも強いとソロモンは言った。 そう、其の不可思議な力に限りは無い。
数年前のパリ、秋の夕暮れでの事だった。
陰鬱なサンジェルマン街の方へ、帰りの遅くなった馬車の灯りが点々と流れていた。
其の内の一台が、数世紀を経た庭園に囲まれた或る邸宅の前に止まった。
入口のアーチの上にはアトル伯爵家の紋章――青地に銀の星、「蒼白な勝利」の文字、
其の上には、ボネットを頭に載せたオコジョの柄で縁取られた王冠――が威厳を示していた。
館の重厚な扉が開かれると、車から男が降りた。
年の頃三十五、六。 喪服を身に纏う其の顔は今にも倒れそうな程、色を失っている。
玄関前の段で、押し黙った召使達が松明を掲げている。 彼らには目も遣らず、
這い上がる様に段を踏んで館に入った、其の男こそアトル伯爵であった。
伯爵はふら付きながら白い階段を上がる。 其の先の部屋には正に其の日の朝、
彼が、ビロードと菫(すみれ)を敷き詰めた棺に、波打つ麻布に包んだ逸楽の夫人を、
次第に消え行く誓いの人を、ヴェラを、彼の絶望を横たえたのだった。
上で扉が音も無く開かれた。 彼は覆いの布を掛けた。
部屋の物は何もかもが、前日、夫人が残した通りになっていた。 唐突な死が襲ったのである。
昨夜、彼の愛する妻は深い快感の中、甘美な抱擁に我を忘れ、恍惚に心を打ち砕かれて失神した。
夫に別れのキスをする間も無く、微笑みながら、一言も発する事無く、一瞬で唇が血の紅に染まった。
そして長い睫毛が、黒いベールの如く、美しい双眸の闇夜を覆った。
言葉にし難い一日が過ぎた。
昼頃、地下墓所でのおぞましい儀式が済んだ。
アトル伯爵は付き添いの者達を墓地から引き取らせると、一人、彼の妻と共に、
大理石の壁に四方を囲まれた霊廟に閉じ篭り、鉄の扉を引いた。
棺の前、三脚架の上で香がゆっくりと焦げていた。
ランプから発する光の環が若き故人の枕元に投げ掛けられていた。
彼は立ったまま物思いに耽り、希望無き愛情だけを抱いて其処に一日中留まった。
六時頃、日も暮れる頃になって其の神聖な空間を出ると、彼は扉を閉め直した。
乱暴に鍵を抜き取ると、入口の階段の端から背伸びをして、其れをそっと墓の中に抛り入れた。
鍵は扉の上の三つ葉模様を通って中の敷石の上に落ちた。
何故こんな事を? もう戻って来る事はあるまいという謎めいた決意によって。
そして彼は今、主を亡くした部屋を再び見ている。
大きな襞を取ったカーテンは薄紫のカシミヤに金の刺繍。
其の下に開かれた十字型の枠の窓からは、夕方の最後の光が筋となって射し込み、
古い木の額に収まる、今は亡き人の肖像画を照らしていた。
伯爵は視線を其の周りに巡らした。 前日、肘掛け椅子に投げ捨てられたドレス、
暖炉の上の宝石に真珠の首飾り、中途半端に畳まれた扇子、香水の小瓶…。
もう其の香りを彼女が嗅ぐ事は無いのだ。 乱れた儘の黒檀のベッドの上、
愛くるしくも崇高な頭が載せられていた事が見て取れる枕の傍らに、
彼は血の滴りに赤く染まったハンカチを見た。 死の直前、若き魂が翼を打った痕跡である。
開いたピアノは永遠に完成する事の無い旋律を保っている。
彼女が温室で摘んだインドの花は、ザクセンの古い花瓶の中で枯れ掛けている。
そしてベッドの足元、黒い毛皮の上には小さなミュールが一足。
ビロード生地の上にはヴェラの可笑しげな言葉が真珠で縫い取られている: 「ヴェラを見れば恋をする」
彼女の足が、歩く毎に中に敷き詰めた白鳥の綿毛にくすぐられていたのは、つい昨日の朝だったのだ!
其の向こう、暗がりに置かれた置時計は、伯爵にバネを壊されていた。 もう二度と時を刻まないように。
ヴェラは逝ったのだ! では一体何処に!……今この瞬間、生きているのか。 何をしに…。
不可能だ。 愚かしい。 そうして伯爵は未知の思索に自らを沈めていった。
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訳したのは、Villiers de L’Isle-Adam 著、Véra の冒頭部分。
原文を掲載しているサイトもある: http://aliquid.free.fr/spip.php?article2891
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『ヴェラ』
オスモワ伯爵夫人に捧ぐ
「肉体にとって、其の中身より外形の方が本質的である」――近代生理学
愛は死よりも強いとソロモンは言った。 そう、其の不可思議な力に限りは無い。
数年前のパリ、秋の夕暮れでの事だった。
陰鬱なサンジェルマン街の方へ、帰りの遅くなった馬車の灯りが点々と流れていた。
其の内の一台が、数世紀を経た庭園に囲まれた或る邸宅の前に止まった。
入口のアーチの上にはアトル伯爵家の紋章――青地に銀の星、「蒼白な勝利」の文字、
其の上には、ボネットを頭に載せたオコジョの柄で縁取られた王冠――が威厳を示していた。
館の重厚な扉が開かれると、車から男が降りた。
年の頃三十五、六。 喪服を身に纏う其の顔は今にも倒れそうな程、色を失っている。
玄関前の段で、押し黙った召使達が松明を掲げている。 彼らには目も遣らず、
這い上がる様に段を踏んで館に入った、其の男こそアトル伯爵であった。
伯爵はふら付きながら白い階段を上がる。 其の先の部屋には正に其の日の朝、
彼が、ビロードと菫(すみれ)を敷き詰めた棺に、波打つ麻布に包んだ逸楽の夫人を、
次第に消え行く誓いの人を、ヴェラを、彼の絶望を横たえたのだった。
上で扉が音も無く開かれた。 彼は覆いの布を掛けた。
部屋の物は何もかもが、前日、夫人が残した通りになっていた。 唐突な死が襲ったのである。
昨夜、彼の愛する妻は深い快感の中、甘美な抱擁に我を忘れ、恍惚に心を打ち砕かれて失神した。
夫に別れのキスをする間も無く、微笑みながら、一言も発する事無く、一瞬で唇が血の紅に染まった。
そして長い睫毛が、黒いベールの如く、美しい双眸の闇夜を覆った。
言葉にし難い一日が過ぎた。
昼頃、地下墓所でのおぞましい儀式が済んだ。
アトル伯爵は付き添いの者達を墓地から引き取らせると、一人、彼の妻と共に、
大理石の壁に四方を囲まれた霊廟に閉じ篭り、鉄の扉を引いた。
棺の前、三脚架の上で香がゆっくりと焦げていた。
ランプから発する光の環が若き故人の枕元に投げ掛けられていた。
彼は立ったまま物思いに耽り、希望無き愛情だけを抱いて其処に一日中留まった。
六時頃、日も暮れる頃になって其の神聖な空間を出ると、彼は扉を閉め直した。
乱暴に鍵を抜き取ると、入口の階段の端から背伸びをして、其れをそっと墓の中に抛り入れた。
鍵は扉の上の三つ葉模様を通って中の敷石の上に落ちた。
何故こんな事を? もう戻って来る事はあるまいという謎めいた決意によって。
そして彼は今、主を亡くした部屋を再び見ている。
大きな襞を取ったカーテンは薄紫のカシミヤに金の刺繍。
其の下に開かれた十字型の枠の窓からは、夕方の最後の光が筋となって射し込み、
古い木の額に収まる、今は亡き人の肖像画を照らしていた。
伯爵は視線を其の周りに巡らした。 前日、肘掛け椅子に投げ捨てられたドレス、
暖炉の上の宝石に真珠の首飾り、中途半端に畳まれた扇子、香水の小瓶…。
もう其の香りを彼女が嗅ぐ事は無いのだ。 乱れた儘の黒檀のベッドの上、
愛くるしくも崇高な頭が載せられていた事が見て取れる枕の傍らに、
彼は血の滴りに赤く染まったハンカチを見た。 死の直前、若き魂が翼を打った痕跡である。
開いたピアノは永遠に完成する事の無い旋律を保っている。
彼女が温室で摘んだインドの花は、ザクセンの古い花瓶の中で枯れ掛けている。
そしてベッドの足元、黒い毛皮の上には小さなミュールが一足。
ビロード生地の上にはヴェラの可笑しげな言葉が真珠で縫い取られている: 「ヴェラを見れば恋をする」
彼女の足が、歩く毎に中に敷き詰めた白鳥の綿毛にくすぐられていたのは、つい昨日の朝だったのだ!
其の向こう、暗がりに置かれた置時計は、伯爵にバネを壊されていた。 もう二度と時を刻まないように。
ヴェラは逝ったのだ! では一体何処に!……今この瞬間、生きているのか。 何をしに…。
不可能だ。 愚かしい。 そうして伯爵は未知の思索に自らを沈めていった。
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2008年7月7日月曜日
2008年7月6日日曜日
2008年6月14日土曜日
2008年6月1日日曜日
英語の語末子音の識別
大学の授業で使っている、英語音声学の教科書 (1) に以下の様な聴き取りの練習問題が載っている。
( ) 内のどちらで発音されたかを識別させる練習だが、教科書の付属CDではどちらも語末子音が無声で発音されているので、識別に役立つのは直前の母音の質である。問題文には「特に, 母音の長さに注意しなさい」と書き添えてあるが、実際に聴いた印象では余り変らない。そこで音声分析ソフト (2) を使って CD の音声を視覚化した所、長さとは別の要素に顕著な差があった。以下に其の画像を挙げる。(画像をクリックすると拡大できる。)
画像は上から順に問題文の1~6に対応させて並べたので、1段目と2段目、3段目と4段目、5段目と6段目を比較すれば母音の質の違いが分かる。この画像で分かるのは、問題となっている箇所の母音がいずれも、その後半で無声化している事である(声門閉鎖ではない)。これらの母音は其々の対で 1. 長さが殆ど同じだが、2. 無声化している区間の比率は明らかに異なる。
(1) 川越いつえ 『新装版 英語の音声を科学する』 大修館書店 2007年
(2) Praat (http://www.fon.hum.uva.nl/praat/)
1. Here's a (a. bag b. back).
2. Here's a (a. bag b. back).
3. Where is the (a. cab b.cap)?
4. Where is the (a. cab b.cap)?
5. This is a (a. bed b. bet).
6. This is a (a. bed b. bet).
( ) 内のどちらで発音されたかを識別させる練習だが、教科書の付属CDではどちらも語末子音が無声で発音されているので、識別に役立つのは直前の母音の質である。問題文には「特に, 母音の長さに注意しなさい」と書き添えてあるが、実際に聴いた印象では余り変らない。そこで音声分析ソフト (2) を使って CD の音声を視覚化した所、長さとは別の要素に顕著な差があった。以下に其の画像を挙げる。(画像をクリックすると拡大できる。)
画像は上から順に問題文の1~6に対応させて並べたので、1段目と2段目、3段目と4段目、5段目と6段目を比較すれば母音の質の違いが分かる。この画像で分かるのは、問題となっている箇所の母音がいずれも、その後半で無声化している事である(声門閉鎖ではない)。これらの母音は其々の対で 1. 長さが殆ど同じだが、2. 無声化している区間の比率は明らかに異なる。
(1) 川越いつえ 『新装版 英語の音声を科学する』 大修館書店 2007年
(2) Praat (http://www.fon.hum.uva.nl/praat/)
2008年5月3日土曜日
2008年4月7日月曜日
2008年4月2日水曜日
直垂を CAD 図面化
2008年3月31日月曜日
浦安の舞
浦安の舞の音程曲線を模式化した譜面。
音程線の下には絶対音名の略称と歌詞を付記しました。
クリックで拡大
※音程は物理的な測定に基づくものではなく、耳で聞き取ったものです。
また、参考にした音源の演奏も機械的に正確なものではないので、
作曲者の意図したものとは厳密には異なる可能性が有ります。
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篳篥の蘆舌をレビューしてみました。
音程線の下には絶対音名の略称と歌詞を付記しました。
壱 = 壱越(D)プライム(’)付きはオクターブ上を意味します。
断 = 断金(D#)
平 = 平調(E)
勝 = 勝絶(F)
下 = 下無(F#)
双 = 双調(G)
鳧 = 鳧鐘(G#)
黄 = 黄鐘(A)
鸞 = 鸞鏡(A#)
盤 = 盤渉(B)
神 = 神仙(C)
上 = 上無(C#)
クリックで拡大
※音程は物理的な測定に基づくものではなく、耳で聞き取ったものです。
また、参考にした音源の演奏も機械的に正確なものではないので、
作曲者の意図したものとは厳密には異なる可能性が有ります。
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篳篥の蘆舌をレビューしてみました。
2008年2月28日木曜日
バレンタインデー先渡し
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