2015年8月6日木曜日

パールイズミ UV フルフィンガー グローブの改造


Pearl IzumiのUV フルフィンガー グローブ(2014年モデル)

裁断や縫い代の処理、パッドの配置がやっぱりどうしても不満だったので、自分で改造しました。今回の記事はユーザーよりはメーカー向けの内容かもしれません。

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パールイズミ UV グローブのレビュー



まずは人差し指の先端部分(裏返した状態)。左が改造後、右が市販状態です。
指の根元側は人工皮革で、先端だけタッチ操作対応の生地が使われていますが、
市販品は生地の切り替わり位置が指の末端側に近く、


この切り替わり部分が人差し指の腹の中ほどに来てしまい気持ち悪いです。
特に皮革素材は分厚いので、その端が直接肌に触れると気になるんですよね。
そこで、生地をカットしたり重ね方を変えたりして、
生地の切り替わりが人差し指のDIP関節の辺りに来るように、
皮革地の段差が肌に直接触れないようにしました。


市販状態では左右とも、人差し指がロール軸で斜めに捻れていました。
自転車に特化した立体縫製とかそういうものではないと思います。
人差し指の腹が手袋の指の側面に来てしまい、機器のタッチ操作が快適にできません。
この個体だけの不良かもしれませんが、検品で撥ねてほしかったですね。


この問題も改造で直しました。親指側の襠(まち)の布を一旦外し、
カットして幅を狭くしてから縫い付け直す事で捻れを解消しました。


左が市販状態、右が改造後です。襠の黒い布の幅を半分ほどにしました。
ただ、改造で捻れを戻し過ぎた事で、今度は逆方向に
僅かに捻れが発生してしまったので失敗です。
(そもそも捻れの原因はこちら側の襠だけじゃないっぽい。)


裏返して嵌めた手袋の指先。人差し指は4枚、中指から小指は5枚の生地の
接合部が指先に集中し、ダブついた縫い代で着け心地が悪いです。
手袋は造りが複雑になればなるほど着け心地が悪化するので、
自転車専用の製品より100円ショップの薄手の手袋の方が圧倒的に快適です。

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夏のウェア (3) 100均手袋の実力


手首の生地の接合部(市販状態)。ここは肌に触れないので
縫い代が出っ張っていてもそれほど気になりませんが、


一応、フラット縫製に変更しておきました(手縫い)。


掌側はサイズ表記のタグがチクチクして気になったので、
(なんでこんな場所にタグを縫い付けるんでしょうかね?)


除去した上でフラット縫製にしました。
なお、手首の生地は手のひら側も手の甲側も袷(あわせ)仕立てですが、
ここを袷にする理由がいまいちよく分かりません。
UVカットなら単(ひとえ)で充分ですし、熱の発散や重量の面でも
単の方が有利だと思うんですが……。


市販状態では水色で示した部分にパッドが配置されています。
これは購入直後に撮った写真なので汚れが付いていませんが、


半年ほど使ってから再び撮ると、ゲルが入った一番分厚いパッドの部分が
殆ど汚れておらず、このパッドが役目を果たしていない事が分かります。
実際、ロードバイクに乗っている時も、パッド部分をハンドルバーに載せようと
意識的に努力しないといけないのが不満で不満で……。
小指側の中手骨から手根骨にかけてをハンドルバーに載せる事が
滅多にない私にとっては、このパッドは飾り以外の何物でもないです。


本体から取り外したパッド部分の補強生地。
肝心のパッド部分に汚れが殆ど及んでいません。


それだけではありません。意識してパッドを載せたら載せたで、
親指のMP関節付近とSTIレバーの根元の間に大きな隙間が空いてしまいます。
隙間を埋めるようにしっかり握ろうとするとMP関節側が
手根骨側よりも下がってしまい、とても握りにくいです。
ブレーキを掛けると掌の前方に荷重が来るので、この欠点が更に目立ちます。
(握っていて楽なのは、これとは逆にMP関節側が高くなる姿勢です。)


この問題の原因は、小指側のゲルパッドと同等以上の厚みを持つパッドが
親指側に配置されていない事です。手のひら各部のパッドの
ボリューム配分が著しくバランスを欠いているんですね。


本体から取り外したパッド。配置を改善しようにも
大きさや形が中途半端で使いにくいので、これは再利用しません。


肌に接する側(上側)から、柔らかい布地、(本体のメッシュ生地)、
シリコンパッド、スポンジ、人工皮革という構成でした。


これら4パーツの厚みの合計は7mmです。


代わりに取り付けるパッドです。厚みは大迫力の11mm。
サイクリングタイツに付いていたパッドを切り抜いて流用しました。
これだけ分厚ければ荒れた路面でも衝撃の大部分を吸収してくれるでしょう。


取り外した元のパッド(2ヶ所)と、新しい大型パッドを縫い付けた本体。
なんか名菓ひよ子みたいな形ですね。


裏返した手袋。左が市販状態、右が改造後です。
超巨大なパッドが目立ちます。これだけ巨大だと、もしかしたら
手袋を嵌めにくくなるかなと思いましたが、意外にも改造後の方が
手を入れやすかったです。パッド表面の滑りが良いからですかね?


ちなみに手の甲側は特に改造していません。

で、とりあえず片側だけ改造した段階で、改善効果を確かめる為に実際に装着して外を少し走ってみたんですが、掌の衝撃吸収力が劇的に上がった反面、パッドの縁の堅い部分が親指と人差し指の間の水掻きに当たって地味に痛かったです。ロングライドをしたら擦れて炎症になりそう。


そこで、パッドの形状と配置を見直しました。
親指と人差し指の股に当たる部分でパッドの中身のスポンジを
楔形に削り取り、末端に向かって厚みが徐々に減るようにしています。
 試着した限りでは、擦れはそんなに気にならなくなっていました。


面倒だったので、指の股の部分には縫い付けていません。


改造してみて

正直、ウェア専業メーカーの製品がここまでレベルの低いものだとは思っていませんでした。見てくればかりを追求して、着け心地やフィット感といった基本的な部分を犠牲にしていますね。人間工学的な面でも疑問が多いです。

部品点数が多く、作るのに手間が掛かっている製品だというのは分かりますが、労力を投入する方向を全力で間違えているという印象です。



2015年8月13日追記

改造後のグラヴの試験を再び行ないました。今回は本格的なロングライドで、
  • 家から富士山麓までの136km
  • 富士山麓を一周する118km
  • 富士山麓から家までの139km
の約400kmをほぼ連日で走り、未改造の右手との違いを比較しました。

改造後のパッドは、配置、厚みとも具合が良く、荒れた路面の衝撃を効果的に吸収してくれました。また、親指と人差し指の股が擦れる事も有りませんでした。ただ、ブレーキを掛けた時に荷重が集中するこの部分には、もう少し厚めのパッドが欲しいと感じました。

未改造の右手は衝撃が手のひらに直接的に伝わってくるのがハッキリ分かりましたが、今回のロングライドではペダル荷重を強く意識し、ハンドルバーにはできるだけ体重を載せないようにしていたので、右手も目立ったダメージは受けませんでした。