夏用サイクリングウェアの効用や欠点をまとめてみます。
三回目はグローブを取り上げます。
グローブの機能
スポーツ自転車に乗るときにグローブを着用すると、
以下のような利点が有ります。
- 日焼けが防げる
- 汗で滑るのを防げる
- 転倒したときに手を守れる
- ハンドルから伝わってくる振動が吸収できる
- ハンドルを強く握り締めても肉刺(まめ)ができにくい
ハンドルを握った手の形に合わせて仕立てられており、
当然快適に使えると想像しますが、
100円ショップの手袋でも、ものによってはかなり使えます。
そこで、この記事では
今までに試したさまざまな100均手袋を比較し、
自転車用グローブにも応用できる
選び方の要点をまとめていきます。
なお、以下で紹介している手袋は全てダイソーの商品です。
スベリ止め付コットン手袋
手のひら側の全面に細かいイボが付いた
薄手(生地は1.5mm厚)のコットン手袋です。
同じ薄手の手袋には他に、生地がナイロンのものや、
指切り仕様のバリエーションが有ります。
Lサイズで、手首から中指の先までの全長が215mm
(着用時は230mm)、手首部分の幅は平置きで70mmです。
腕の尺骨茎状突起までしっかり覆ってくれるので、
アームカバーとの間に隙間ができず、日焼けを確実に防げます。
自転車用のフルフィンガー・グローブは日焼け防止を謳った製品でも
なぜか尺骨茎状突起に届かない長さのものばかりなので、
この点では100均に軍配が上がります。
コットン製なので吸汗性能は非常に高いです。
手のひら側も手の甲側と同じ生地で、
細かいイボは有りますが、夏でも蒸れません。
サイクルグローブの場合は手のひら側に皮を使ったり
パッドを配置したりしているので、もしかすると
この点でも100均の方が性能が上かもしれません。
但し速乾性は低いので、ボトルの水を零したりすると
なかなか乾きません。そしてすぐに臭くなってきます。
振動吸収性については100均手袋にはあまり期待できませんが、
ハンドルに体重を掛けなければ問題ありません。
そもそも、ロードバイクという乗り物は、
ハンドルに載せる体重が有るならそれをペダルに載せて加速しろ!という性格の乗り物のようなので、
グローブ(やバーテープやCFRP製ハンドル)で
問題を解決しようとするのは本質を外しているような気がします。
ただ、急な下り坂(25%超など)をブレーキを掛けながら延々と下るような場面では、
さすがに親指と人差し指の間が痛くなってきますし、
脚が売り切れた後はハンドルに体重を乗せてしまうので、
手根骨の周辺に擦れが生じます。
私の感覚では、120kmくらいまでなら別にこれでも良いや
と思える手袋です。
3本指先カット フィット手袋
2年ほど前に買った手袋で、恐らくナイロン製です。
厳冬期以外はずっとこれを使い続けていたので、
ボロになっていますが、生地自体には破れはありません。
乗車時に負荷が掛かっていた所は
白いゴムいぼが剥がれ落ちているので一目瞭然です。
注目したいのは中指と薬指の付け根の部分で、
いぼの剥げが二箇所、円形に生じています。
これは立ち漕ぎをしたときに強く握り締めて剥がれたもので、
同じ場所の皮膚には肉刺ができています。
自転車用のグローブなら立体裁断やパッドで防げたかもしれません。
他には、親指と人差し指の間の摩耗
(ブレーキ時に慣性で前に進もうとする人の体重を受け止める部分)と、
小指側の手根骨周辺の摩耗
(惰性で走行している時にハンドルバーに載せている部分)が目立ちます。
これらの部分も、自転車用のグローブでは
パッドが重点配置されている部分です。
この手袋は恐らく、最初に紹介した「スベリ止め付コットン手袋」の
ナイロン・指切り版だと思うのですが、
使用に伴って手首のゴムが伸びてしまいました。
コットンより摩耗に強い反面、伸びやすいのかもしれません。
現在の手首部分の幅は95mmで、着用してもブカブカなので、
隙間から直射日光が手首に当たって日焼けしてしまいます。
スベリ止め付ドライブ手袋
これは車のドライブ用の商品です。日焼けを気にする女性向けですが、
薄手でイボ付きであり、手首の生地が伸びる心配も無いので試してみました。
ところがこれは大失敗で、生地の耐久性が低く、すぐに破れてしまいました。
破れたのは意外にも親指の先端です。
(写真では破れた箇所を既に切り落としてある)
ハンドルバーやブレーキレバーと全く接触しないこの部分が
なぜ破れるのかというと、手袋の指の長さがほんの数ミリ短く、
ブレーキを掛けるたびに親指が生地を突っ張っていたからです。
自転車用グローブでも一人一人の指の長さに
完全に一致するかどうかは店頭で試着しないと分かりません。
少しでも短ければ、
ブレーキを掛けるたびに指の爪が圧迫されたり(後述)
生地に負担が掛かったりしますし、
少しでも長ければ
余った生地がシフトレバーとブレーキレバーの間に挟まってしまいます。
特に親指と人差し指は、
手袋と指の長さが5mmずれたらもうアウトと考えて良いと思います。
ワークグローブ
300円手袋も試しました。この商品は店頭でもかなり注目度が高かったようで、
客が試着のためにパッケージを開封した痕跡と、
それを店側がセロテープとホチキスで何度か補修した痕跡が見られます。
手のひら側は全面ネオプレンです。薄々予想はできていましたが、
5月の時点でも猛烈に蒸れました。汗でべちゃべちゃになる程ではありませんが、
休憩の時に手袋を外すと手の皮膚が真っ白になっていました。
そして最大の問題点は、サイズの選択を誤ったため、
指先が突っ張ってしまう事です。
しかもこれは上のドライブ手袋と違い、生地に伸縮性が無く、
非常に強い上に、ハンドルと接する部分のグリップも強力なので、
ブレーキを掛けるたびに指の爪がグローブの生地で押さえ込まれ、
ちょっと我慢できないほどの痛みが出ました。
どうやら、ダイソーの手袋のサイズ表記は、
明確に男性用/女性用と区別された商品以外は
男女共通でS、M、Lのようで、
Mは男物のSかXSに相当するようです。
自転車用のグローブでも、フルフィンガーのものは
試着をして慎重にサイズを見極める必要が有りそうです。
黒のすべり止め手袋
これは普通の軍手です。
手首の日焼け防止については申し分の無い製品でした。
生地の厚みは2.5mmでモコモコしています。
吸汗性は有りますが、なにぶん分厚いので5月でも暑苦しく感じます。
生地は摩耗に弱く、これを着用して走った後にデュアルコントロールレバーの
フード部分を見ると、手袋から出た繊維くずが付着しています。
このまま使い続ければ、おそらく親指と人差し指の間が破れるでしょう。
生地が分厚いにも関わらず、ハンドルを握り締めて立ち漕ぎをすると
中指と薬指の付け根に肉刺ができてしまいます。
平面的な仕立てのせいで手を握った時に生地が余り、
それが余計に肉刺を作りやすくしているようです。
今はメンテナンス時の手の保護用に使っています。
---
さて、こうした失敗の経験を踏まえて自転車用のグローブを店頭で試着すると、
意外にも欠点の有る製品が多い事に気付きます。例えば、
- パッドの位置が、本来欲しい場所から微妙にずれている
- 親指と人差し指の間にパッドが配置されていない/配置が連続的でない
- 手首のベルクロ付近に隙間が有り、手の甲が変な模様に日焼けしそう
- 手の本体に合わせてサイズを選ぶと指先が余る
- 手を握った時の形に最適化されておらず、生地が余る
また、自転車用のグローブは基本的にサイズがぴっちりしているので、
指切りグローブの場合はとても脱ぎにくいものが多いです。
脱ぎやすくするために指を引っかけるループを付けている物も有りますが、
ループの生地が弱そうだったり、手袋への縫い付け位置が悪かったり、
縫い付け強度が低そうなものも数多く見られます。
私が店頭で試着したのは、
Shimano, Pearl Izumi, BBB, OGK Kabuto, Goldwin, ErgoGrip, introの2013年現在の各製品ですが、
夏用グローブで、フルフィンガー、パッド付き、日焼け防止という条件で絞り込んだ場合、introのStinger 1以外はどれも駄目そうでした。
(あくまで私個人の手の形を基準にした場合です。
また、実際に乗車中に使用したわけではないので、
本当に駄目なのかどうかは分かりません。)
で、一つだけ残ったintroのStingerですが、これはかなり理想的です。
危うくその場で衝動買いしてしまうところでした。
すんでのところで踏みとどまりましたが、
非常に興味が有るので、資金に余裕の有る方は
買ってレビューを投下していただけると有り難いです。