2013年5月15日水曜日

国交省の自転車ガイドラインの感想 pp.65-66 混在型の交差点

国土交通省が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)
を読みました。

問題点が無いか1ページずつ見ていきます。


以下、ページ番号はPDFファイル上の番号基準です。
紙面のノンブルとは一致していません。


p.65
(1)左折自動車のみ混在の場合
(交差点手前から路面表示を設置して混在させる場合)

p.65
a)道路標識・道路標示
  • 自転車の直進性を確保し、進行方向を明確化するため、
    交差点部には道路標示「自転車横断帯(201の3)」を設置しないものとする。
  • 自動車が左折する際の左折動線を明確にするため、
    道路標示「右左折の方法(111)」の規制を同時に実施するものとする。
  • ただし、主道路の交差点流入側及び従道路の
    交差点流出側ともに混在させる場合は、
    道路標示「右左折の方法(111)」は設置しないものとする。
  • 自転車が通行すると想定される車道左側端まで
    道路標示「停止線(203)」を設置するものとする。

車は道路標示を無視します。物理的な工作物で区切らないと、
設計で意図した左折動線は守られません。

左のトラックが道路標示の白の破線より内側に入っています。

目立つ青のペイントに加えてポールを1本立てたくらいでは

車は入ってきます


それから停止線の設置位置について。

車とは別に自転車用の信号機を設置して、
左折する車と直進する自転車の動線を時間的に分離できるなら、
別にガイドラインの示す位置でも問題は有りませんが、
両者を同時に進行させるとなると問題が有ります。

交差点を左折する車の視点では、
  • 信号が青に変わって発進する時にまず左後方を確認、
  • 横断歩道に差し掛かる手前でも左後方と右前方を確認
と、安全確認が必要な場所が細かく分散してしまい、
確認動作が非常に忙しくなります。
このように注意対象が分散すると、
一つの対象に向けられる注意は浅くなります。

交差点を直進する自転車の視点では、
車が左折を始めると動線が塞がれてしまうので、
滞りなく直進できる自転車は停止線直前で待機している数台に限られます。

信号が青になってから交差点に来た自転車は、
左折車の左から右からすり抜けるように進むか、
完全に足止めされるかのどちらかでしょう。


2014年11月2日 写真の差し替え





(写真の状況について補足しておくと、
白いバンは自転車が来る前に左折を開始しており、
速度も充分低く抑えていました。)

「交差点を直線的に通過できるようにする」というと聞こえは良いですが、
安全上、果たしてそれが最適なのかどうかは慎重に吟味すべきです。


p.65
b)看板・路面表示等

交差点における自転車の安全な通行を促すとともに、
自動車利用者等に自転車動線を知らせるため、
自転車道または自転車専用通行帯が打ち切られた場所から停止線までの間
及び交差点内の自転車通行空間の延長線上の部分の路面に
自転車の通行位置及び通行方向を明確化し、左折自動車と混在することを示す
路面表示(例えば、矢羽根型等)を設置するものとする。

ただし、自転車に停止線を遵守させ、横断歩道上の歩行者を優先するため、
流入側においては、停止線から横断歩道に掛かる部分には設置しない
ものとし、
流出側においては、横断歩道に掛かる部分は設置しないものとする。

横断歩道では青の路面ペイントをしないという事ですが、
車道(自転車レーン)を通行する自転車の大半は、
停止線を越えて交差点の角まで進み、そこで信号待ちしています。


道路行政がうかうかしている間に
民間で定着してしまった行動様式ですね。

この問題には二つの見方が有ります。

まず一つは、ガイドラインと同じく、
車道の自転車と横断歩道の歩行者を
交錯させるべきではないとの考え方から、
自転車にも横断歩道手前の停止線を守らせるというもの。

この場合、路面標示程度の小手先の策では無効です。
信号機の設置位置から見直す必要が有るでしょう。

車用(と、もし設置するとすれば自転車用)の信号機を
停止線と同じ位置に移し、停止線を越えると見えなくなるようにすれば、
停止位置を守らざるを得なくなります。

副次的には、交差道路の信号も見えなくなるので
フライングスタートも無くなります。但し、二段階右折する自転車・原付は、
横断歩道を横切って停止線まで後退する必要が有ります。

もう一つは、自転車は本当に横断歩道の手前で
停止する必要が有るのかという見方です。

交差道路の信号が青で自分の道路が赤の場合、
自転車は交差点の手前で必ず減速しています。
であれば、歩行者とぶつかっても重大事故に至る確率は低いので、
横断歩道の通過は許容できるとの考え方も有り得ます。

(もちろん、単路部の横断歩道は別です。)


p.66
二段階右折する自転車の滞留スペースは、
通行位置及び通行方法を明確化する路面表示と
歩道端の縁石との間に囲まれた範囲となり、
このスペースを明確化するため、路面表示を
設置することが考えられる。(図Ⅱ-22 参照)

これに加えて、原動機付自転車(以下、「原付」という。)の
二段階右折が必要な交差点では、
自転車の滞留スペースとは別に、
原付の滞留スペースを明確化
するため、
路面表示を設置することが考えられる。


二段階右折の待機位置を自転車と原付で分けて標示するのは
良いアイディアです。自転車と原付が一緒に二段階右折する場合、
原付の待機位置が自転車より左になってしまう事が時々有ります。

この場合、信号が青に変わって発進した直後は
事故リスクが高まります。

例えば、
自転車の左後方から発進した原付がそのまま自転車を左から追い越そうとし、
そのタイミングで自転車が左に進路変更して原付に追突される
という事故パターンが想像できます。

交差点での追い越しも、左からの追い越しも、
道交法違反(28条、30条)なのですが、
そんなものは現実には守られていません。

こうした実態を考えると、ガイドラインの路面標示は
有効に機能するでしょう。

なお、丁字路の二段階右折については後のページに出てきます。