2013年5月13日月曜日

夏のウェア (4) フェイスマスク

本格的に暑くなる前に、夏用サイクリングウェアの効用や欠点をまとめてみます。

4回目はフェイスマスクとアンダーヘルメットキャップを取り上げます。

2016年5月15日 全面的に修正・加筆



ここでは、以下の製品を使って感じられた効果と欠点を挙げます。

まずは効果から。


汗が垂れない

走行中は顔に風が当たり続けるので、汗の水分がどんどん飛び、顔面に残った汗の塩分濃度が非常に高くなります。その汗が額から垂れて目に入ると激痛が走るので、安全上も問題が有ります。アンダーヘルメットキャップを被れば、垂れる前に汗を吸い取れます。

また、塩分濃度の高まった汗は肌荒れの原因になります。これは時々手袋などで拭っても良いのですが、丁寧に拭き取らないと逆に皮膚を痛めつける事になります。フェイスマスクをしておけば自動的に汗を吸い取ってくれるので楽です。


日焼けを防げる

夏の強い日差しの下、何時間もサイクリングをすると、目の周辺だけサングラスの形に白いまま焼け残る「逆パンダ焼け」ができてしまいますが、これはフェイスマスクで覆えば防げます。


ヘルメットのフィット感が向上する

ヘルメットと頭の間にアンダーヘルメットキャップが入ると、生地が隙間や圧迫箇所をうまく吸収してくれるので、あまり頭の形に合っていないヘルメットでもフィット感が向上します。荒れた路面を走る時もヘルメットがぐら付かず、ガッチリと固定されるので、安心感も増します。


虫が口や鼻に入らない

自転車で自然豊かなフィールドに出掛けると、夏から秋にかけては特に、大小さまざまな虫が口や鼻から飛び込んでくることが有ります。息を吸うタイミングと合ってしまうと喉の奥の方まで入ってしまうので、激しく咳き込むことになり、ペースが狂ってしまいます。特に夜間は直前まで虫が見えないので、避けるのが困難です。

フェイスマスクで口と鼻を覆えばこうしたストレスから解放されるのでとても快適です。また、耳まで覆うマスクであれば、しつこく付いてくる虫の羽音にもそれほどイライラしなくなります。


大気中の有害物質をフィルターアウトできる

街中を走る場合は車の排気ガスや煙草の煙が運動の障害になります。私の場合、幹線道路では走り始めてから10分足らずで喉が痛くなり、翌日まで痛みが残ります。一時期に比べれば日本の都市の空気は綺麗になったと言われますが、それでも依然、有酸素運動に適した環境とはとても言えません。歩行中や運転中の車内で煙草を吸っている人も多いですしね。

ちなみに、日本では戦前の1933年から運転中の喫煙が法令で禁止されていたそうですが、敗戦後、アメリカの占領軍が圧力を掛けたらしく、1947年には罰則が無くなり、1949年には規定自体が廃止されたそうです。当のアメリカは今どうなっているかというと、まだ一部の州ですが、子供が同乗している車での喫煙を禁じる法律を既に成立させています(自家用車含む。「子供」の年齢は州によってまちまち)。同様の法律は他にも、
  • アラブ首長国連邦
  • オーストラリアの一部の州
  • カナダの一部の州
  • キプロス
  • ギリシャ
  • バーレイン
  • 南アフリカ
  • モーリシャス
に有りますし、導入を検討している国も幾つか有ります。

口と鼻を覆うフェイスマスクは、特別なフィルターが付いていないものでも或る程度は効果が有ります。マスク越しでも排気ガスや煙草の臭いは感じられますが、喉が痛くなる事は有りません。

但し、おたふく手袋のフェイスマスクは口元がメッシュ生地になっているので排気ガスがほぼ素通りで入ってきます。

なお、冬から春にかけても、フェイスマスクは皮膚のひび割れや鼻水の軽減に非常に役立ちます。


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今度は欠点を見ていきます。


暑い

頭部以外のウェアならインナーを着た方が却って涼しい場合が多いですが、ヘルメットインナーの場合、毛髪が生地と肌の密着を妨げるので、その空間が熱を溜め込みがちです。また、気化熱で生地が冷えても、その冷却効果が肌にはあまり及びません。ヘルメットが風を部分的に遮っている事で、風冷効果も限定的です。

メッシュ生地のCoolbitのインナーはともかく、裏起毛のMCNのマスクでは、夏は目眩がするほど暑いです。特にヒルクライムでは速度が落ちて風が弱まるので、熱中症を助長します。冷感を謳うおたふく手袋のマスクも、MCNのマスクより多少マシという程度です。

防寒効果がありがたい冬はともかく、夏は頭頂部まで覆う意義があまり無いので、アンダーヘルメットキャップよりヘッドバンドのような物の方が良いかもしれません。


息が苦しい

MCNのフェイスマスクは生地が厚めで通気性が低く、運動強度を上げると呼吸が妨げられます。ただ、メッシュ生地のおたふく手袋のマスクでは排気ガスのフィルター効果がほぼ無くなってしまうので悩ましいところです。


水分補給が面倒

フェイスマスクをした場合、ボトルの水を飲む時の動作が増えて手間取ります。

MCNのフェイスマスクは鼻から顎まで生地が顔に密着するので、水を飲む時は必ず手で上か下にずらす必要が有ります。信号待ちの間にボトルの水を飲もうとしても、手間取っている間に信号が青に変わってしまい、その交差点では飲めずじまいという事がよく有ります。

対して、おたふく手袋のマスクは口元を覆う生地が割と自由にひらひらと動くので、ボトルのバルブで生地を捲ってそのまま飲む事も可能です。


生地が肌に食い込む

MCNのフェイスマスクは着用時に鼻の頭に載る部分の生地が分厚く(解れを防ぐ為に生地が折り返してある)、しかも生地には後頭部の方に引っ張る力が掛かっているので、長時間着用していると鼻の頭に痕が赤く残ります。

おたふく手袋のフルフェイスマスクも生地の端は、共布を細く切って4つ折りにしたものを被せてあり、分厚くなっているので、同様に鼻の頭を圧迫します。


額が露出する

MCNのフェイスマスクは生地の裁断形状の問題から、普通に着用すると額が大きく露出します。夏は汗が垂れて目に入りますし、本来の用途である冬の防寒用にも力不足です。頭の上に来る生地を下に引っ張るようにして被ると額を覆えますが、そうすると今度は、その生地に連動して口元を覆う生地が頭頂部の方に引っ張り上げられるので、鼻の頭に掛かる圧力が増します。

この問題は、おたふく手袋のフルフェイスマスクには無いので、MCN製品に固有の設計ミスです。MCNの商品ページには、第2世代では額部分のフィット感を高めたと書かれていますが、額が開く事に変わりは有りません。


生地を濡らすと外の音がほとんど聞こえなくなる

以前、あまりの熱さに参って、フェイスマスクを着用したまま水道の蛇口から頭に水を被った事が有りますが、水を大量に含んだ生地は外部の音を遮断してしまう事が分かりました。