都道319号の自転車道。幅は狭いが路上駐車に塞がれない利点は大きい。
(2017年3月 筆者撮影 以下同)
本記事で見ていく整備区間(地図のURL)
この記事では国立新美術館方面(南)から青山公園方面(北)に向かって、道路左側(西側)のインフラを見ていきます。
地図上で青線で示したのは法的効力のある自転車道、緑線は歩道上の通行空間(歩行者から構造的に分離されたもの)です。
過去の関連記事「東京都の自転車通行空間マップ」
まずは南端の交差点から。
左手の機器箱は以前の記事で取り上げたものです。
過去の関連記事「電線共同溝の地上機器の寸法と望ましい設置位置」
振り返ったところ
幅員を実測しました。白線から柵の支柱までが198cmくらいです。
(白線の幅は含まない)
(支柱の幅は含まない)
植樹帯の張り出し部分は158cmくらいに狭まります。
夏になれば灌木の枝が張り出してさらに狭くなるでしょうね。通行空間の端ギリギリに木や柵を配置してしまうのは日本の自転車行政の悪癖の一つです。
心理的な圧迫感で使えない部分を減じると1mも残りません(使用フォント:Lato)
計算の根拠はオランダの現行設計指針(Rik de Groot, Herwijnen, ed. 2017. Design Manual for Bicycle Traffic. Record 28. Amersfoort: CROW. p.49)
乱横断防止柵の高さは80cm弱でした。
歩行者空間の幅も測りました。赤色舗装部分は170cmくらいしかありません。
この狭さは歩行者が自転車空間を歩いてしまう要因になりそうです。
バス停周辺
自転車通行空間が打ち切られ、その延長線上にバス利用者の乗降空間を配置してしまう典型的なダメ設計ですが、車止めを斜めに配置して自転車の動線をバスから離れる方向に誘導しています。
横断歩行者の滞留空間も自転車の動線上
車両の出入り口は切り開き構造
無信号交差点では歩道、自転車道を同一平面で連続させた方が快適で、横切る車に対しては段差が速度抑制要因になるので安全と考えられます。安全性は統計的にも確認されています。
Schepers, J. P., P. A. Kroeze, W. Sweers, and J. C. Wüst. 2011. “Road Factors and Bicycle-Motor Vehicle Crashes at Unsignalized Priority Intersections.” Accident; Analysis and Prevention 43 (3): 853–61. https://doi.org/10.1016/j.aap.2010.11.005.
切り開き構造は車中心発想の悪しき設計で、東京都では現在(安全性ではなくバリアフリーの観点からですが)歩道を連続させる切り下げ構造が推奨されています。この路線でも反対側(東側)の交差点は切り下げ構造になっています。
縁石の段差は小さめですが、もちろん無い方が良い。
今までとほぼ同じ構造ながら、ここから正式な自転車道
大きな黄色い看板で視覚的な乱雑さを増していますが、路面にピクトグラムは設置していません。
入り口の点字ブロックは却って混乱を招かないか心配です。東京都は交差点の周辺で必要もないのに自転車通行空間を打ち切って、建前上、歩道の全幅を歩行者空間という扱いにすることに拘っていますが、その不合理がさらなるカオスを招いている感じですね。
路上駐車に対する圧倒的な防御力。自転車レーンでは完全に塞がっていたでしょう。
道路西側のみ、約180mの長さに亘って停車帯が引かれ、仮眠や休憩をするドライバーの車が鈴なりに止まっています。これらから自転車を確実に守るという一点だけでも自転車道を整備した意義は十分あるでしょう。違法駐車の取り締まりで人的リソースを無駄に消耗しなくて済みます。
停車帯の終端部
標識が自転車道、法定外、自転車道と短い区間で目まぐるしく変化
この辺りから徐々に歩行者が増えてきます。
案の定、歩行者が自転車道に入り込んでいます。
振り返ったところ。歩行者空間が狭すぎます。
カーブに差し掛かると暫定舗装。現在はビル、歩道とも完成しています。
質の低い自転車道ながら、車に撥ねられる心配のない空間を提供した意義は大きい。