2012年7月13日金曜日

枻出版の誤字脱字

『ロードバイクが一からわかる本』
山本健一 著 2004(第一版第一刷) 枻出版社

を読みました。



寸法合わせ、乗り方、メンテナンス、食事、トレーニングと
幅広いテーマを扱っていて参考になるし、
口絵の各部名称の図は美しくて見やすかったのですが――

――誤字、脱字、論旨のブレ、説明に不適当な写真、
たかだか232ページの本でこういうのが40箇所近く有るって
おかしくない?



p.21
路面抵抗もタイヤが細かく、ホイール径が大きいので
接地面積が少なく、これも結果的に少なくて済む。

「こまかいタイヤ」ってどんなタイヤ?
語順も酷い。「路面抵抗も」を文頭に持ってきたせいで掛かり先が遠すぎる。
それから「結果的に」は余計だ。
タイヤが細くホイール径が大きいので接地面積が少なくなり、
路面抵抗も少なくて済む。
とでもすべき。

p.45
まず指で拇趾球(足の親指の付け根の間接)の位置を確認し、
変換ミス 「間接」→「関節」

p.63
私は以前、横断歩道上でよそ見運転でフルスロットルのまま突っ込んできた車に
愛車をめちゃくちゃにされたが、やってきた保険会社の人間は、
私が無灯火だったための事故として押し切ろうとした。

私はそれが日没前の事故だと主張。

結局、警察への通報時刻の証拠と、電話をかけてくれた人の証言で、
何とか壊された自転車の代金を取り戻したが、もしヘッドライトが
ついていなかったら、あるいは電話の記録が残されていなかったら、
泣き寝入りになっていただろう。
無灯火運転は駄目だよという文脈での挿話。にしては、
「日没前の事故」という主張をしたという記述は論旨からずれてない?

p.64
先に述べた多摩川のサイクルロードは、ここ数年でいつの間にか
「サイクル遊歩道」と呼称を変えた。「サイクリング・ロードにおいては、
歩行者はこれを横断するなどのほかは通行してはならない」という道交法とは
矛盾するものになってきている。
まず、道路交通法にはそのような文は無い。
道路交通法に書かれているのは、
自転車道(車道の脇に設置される物)を
自転車以外の車両が通行してはいけませんよ
という事だけ。(第十七条3)
サイクリングロード(自転車専用道路)を歩行者が通行する事を
禁じているのは道路法第四十八条の十五1です。

それから、サイクル遊歩道(自転車歩行者専用道路)に
変更されたのであれば、もはや矛盾は無いでしょ?

歩行者と自転車が同じ空間を共有する事に対して
著者が危惧を抱いているのは分かるけどね。

p.69
ダンシングは力強くリズミカルに
ダンシングは全身を使うので高出力が出せる反面、エネルギーの消費も大きい。
速く長く走るためには効率的なフォームを覚える事が大切だ
立ち漕ぎの仕方を詳しく解説するページのはずだが、
「リズミカルに」ってどういう事? 具体的な記述が無い。
普通に考えたら、「リズミカル」の意味は
時系列上に複数回(3回以上?)生起する音や動作の間隔に
法則性が有り、観測者に「リズム」を感じさせる
事なんだろうけど、何も考えずに普通に漕いだって「リズミカル」にはなる。
寧ろ、unrythmicalなダンシングの方が難しいって。

「理想的なダンシング動作の流れ全体からはリズミカルな印象を受ける」
と言いたいなら、もっと分析的に説明してくれないと分からない。
「脚はこう、腕はこう、その時自転車はこうなって……」みたいに。

p.69
ブンブンではなくスッスッとスムーズに
力任せにブンブンバイクを振るのは派手だがパワーロスが多い。
重心の軸を地面に対して垂直に維持し、スッスッとスムーズに走るようにしよう
重心は点だから軸は存在しない。
従って「地面に対して垂直」という記述は意味を為さない。
第一、重心ってどの重心? 身体の? 自転車の? 両者一体の?

p.70
[写真]
ハンドルの下ならワンフィンガーもアリ
ブレーキングというよりはシューをリムに軽く当ててスピードコントロールする
いわゆる“あて効き”のときによく使うのが一本指のブレーキング
ハンドルバーのドロップ部分を握り、ブレーキレバーに指を掛けている写真だが、
掛かっている指は二本。写真の選定が間違っている。

p.77
プロはよりカラダがコンパクトになるので、ハンドルを
握るフォームを使うことも多いが、これはブレーキレバーから
手が遠ざかることになるので、ビギナーにはオススメできない。
「よりコンパクト」の掛かり先が「ビギナー」であると誤読させる。
本来の掛かり先は「ハンドルを握るフォーム」だが、その「ハンドル」も
ハンドルバーのどの部分か書かれていないので分からない。

ドロップハンドルバーの左右それぞれの末端かもしれないし、
ハンドルステム近くの中央部分かもしれない。

どちらもブレーキレバーから遠いし、
どちらも身体の前面投影面積を小さくできるし、
どちらもプロがレース中のダウンヒルで使っている。

p.80
フロントアウター×ローギヤのままフロントをインナーにチェンジすると、
リヤのチェーンに張力がないので、チェーンは簡単に脱落する
そうかなあ。
ローギヤはトップギヤより歯数が多いからチェーンの張力は高い方だと思うけど。
フロントでチェーンが内側に脱落する原因は寧ろ、チェーンラインが
斜めになっていて車体中心方向に引っ張る力が掛かってるからじゃない?


それから、「チェーンの張力」は前後のスプロケットの間で生じるものだから、
「リヤのチェーンに張力がない」という記述は不正確なのでは?

p.84
前走者はどこ吹く風、後輪に接触しても前には響がない
脱字 「(影)響」

p.88
スタンディングで平衡感覚を養う
突然できるようになる(できる人はそう言う)スタンディング。
これをどれだけ長い時間できるか、タイムトライアル!
なんて遊んでるうちにできるようになるんだな…
[写真]
スタンディングの基本は重心の見極め
やり方を解説するページで何も解説せずにサラッと流した!

p.89
自転車の前ブレーキを右レバーで操作するのは日本人にとって
普通のことだ。ところがヨーロッパでは前ブレーキは左手で操作するのが
普通になっている。日本とは逆というわけだ。「ヨーロッパは右側通行だから
前ブレーキは左手で操作するんだ」と大まじめで言ったヤツがいたが、
その答えはあまり説得力がない。右利きの人が日本には多いからと
言った人もいるが、……
なぜ説得力が無いのか反論しないで次の議論に移った!

pp.90-91
Bragnet: ブラケ。ギヤ比のこと。
DIstancé: ディスタンセ。置いていかれた。
 …上り坂をMontee:モンテ、…
綴りミス Bragnet → braquet 手書き文字を誤読した様な間違い方だ……。
綴りミス DIstancé → Distancé なぜuppercaseに気付かない……。
綴りミス Montee → Montée 他の語はちゃんとアクサン付けてるのに。

p.92
下死点では最初から力を完全に入れずに走行する。
初めから入れてしまうとパワーの無駄遣いになってしまうからだ。
そして下死点を通過した瞬間から引き足を開始し、
右足が上に上がるときに引き足の最大の力を投入する。
回すペダリングの解説文。
第一文の「走行する」は解説の焦点がペダリングから外れるので不適切。
下死点では最初から力を完全に入れない。
とすべき。
第三文の「右足」は、ここまでの文脈で足の左右を特定した記述が無かったので、
唐突で無意味な記述に思える。

p.94
過酷ゆえにチョンボも多く、コースをショートカットしたり、
途中車で移動したりなどの違反行為が後を絶たなかったという。
チョンボは麻雀用語に由来する言葉で「うっかりミス」を意味する。
(初めて知った。)

文後半の主語「違反行為」は助詞が「が」なので、
「違反行為」はチョンボの例示であると誤読させる。
ここは助詞を「も」にして、例示ではなく並列構造だと示す所。

p.98

第4章「ペダリングは走行の要」の第4節は「足首の角度」と題しているが、
内容の大部分が足首の角度とは関係無い
「ペダル回転数と走行場面の目安」の解説に費やされている。

p.108
[写真]
足裏のツボである湧泉の位置。
土踏まずのくぼんだところのやや前の中央を圧迫する。
写真はツボを押している様子を写した物だが、
足裏の前部が見切れているので、正確なツボの場所が分かり辛い。

p.118
マッサージの概略がわかったところで、
実際に一人で行うための基本的な姿勢も紹介しよう。
前の節まで写真を使って説明していたのに、ここに来て唐突に手書きイラスト。
同じ見開きの右ページではまた調子が変わってベクター系ソフトによるイラスト。
なぜ統一しない。

p.134
タイヤの外周を見てパンクの原因を探し、その原因を取り除く。
次にパンクしたチューブをタイヤの中から取り出し、
1本目のタイヤレバーをタイヤのビードワイヤーに差し込む。
そしてタイヤレバーをスポークに引っ掛ける。
この間違い方は、凄いな……。唖然とした。
(正しい順番は、1. 原因除去、2. タイヤレバー、3. チューブ取り出し。)

p.138
シューを横方向から見た場合、その上端がリムのタイヤ接地面から
1mmほど下がった部分で、リムと平行ならばOK。
ブレーキシューの位置調整の解説。
だが、リムにはタイヤ接地面など存在しない。(タイヤとの「境界線」)

p.139
シューホルダーからシューブロックを引き抜く場合、
手で押し出さなければ、写真のようにシューの溝にドライバーをかけて抜く。
誤字 → 「手で押し出【せ】なければ」

p.144
チェーンを洗うときはアウターにセットしてクランクを動かすと効率がいい。
内側はプーリーの間に泥が詰まりやすいので丁寧に。
「プーリーの間」と呼ばれる場所が分からない。

プーリーとプーリーケージの間?
プーリー本体とプーリー回転軸の間?
プーリーとチェーンの間?
二つ有るプーリー同士の間?

p.145
[写真4]
ハブの内側は長めのブラシを使い、バケツの上に置いて回転させると
作業がしやすい。普段はクリーニングしにくい部分だけにしっかり洗おう
[写真5]
ハブの内側もブラシでしっかり洗う。水分がかかることを嫌う人もいるが、
後で給脂するから大丈夫
[写真7]
フリー側を立てかける側にすると内部に水が残らないのでいい
誤字 → 「ハブの【外】側も」
写真7は説明文と違って反フリー側を立て掛けている。

p.160
プロのレーサーと同じトレーニング・プログラムが、
今のキミに正しいトレーニングとは思えない。
最適なトレーニングは個々人で異なるという文脈。
見ず知らずの読者に対して何故そのように言い切れるのか。


より適切には、「…正しいトレーニングとは限らない。」

読者に対して「キミ」と語り掛ける文体はこの節から唐突に現れる。

p.170
ロードバイクライティングに関係する筋肉をなんらかの方法で鍛えることは、
プラスになりこそすれマイナスになることはまずないはずだ。
誤字 → 「ライ【デ】ィング」
編集部はライティング (writing) に関係する力を鍛えてください。

p.178
魔法の薬といってもあやしげな薬のことを指しているわけではなく、
各種のビタミン、
補助食品、強壮剤などに頼ってしまうことも含んでの話。
含んで」って何だよ。結局「あやしげな薬」を排除しないのかよ。

p.180
トレーニングに必要な条件
●体重をコントロールできるもの。
●糖質を充分に含んでいるもの。
●脂質が少ないこと。
●蛋白質を充分に含んでいること。
●塩分を多く含む食事を制限すること。
●アルコールを制限すること。
●充分な水を飲むように配慮されていること。
見出しの表現を略しすぎ。
「トレーニング【のための食事】に必要な条件」とすべき所。

「●体重を」から「●蛋白質を」までは食べ物が主題だが、
「●塩分を」と「●アルコールを」は食事法や管理栄養士が主題に変わっている。
最後の「●充分な水」なんて飼育されてるペットかよ。

p.182
ダイエットの手順は次の計算で行う。
1 ┤減らすべき体重をkg単位で決める。
2 ┤この数値を0.75で割る。ここで得られる数字は、
何週間かけて減量するかという目安。
3 ┤現在の体重レベルを維持するために、必要なカロリーを計算。
4 ┤1日あたりのカロリーを750カロリー減らし、それに従って食事をとる。
2で用いた0.75は固定値なのか、自由に設定する値なのか。
それに2で求めた数値はどこへ消えた。

4の「750カロリー」って計算例? 固定値?
というか「【キロ】カロリー」じゃなくて良いの?

p.183
炭水化物含有量の多い食事をとるには、精製されていない炭水化物をとるべき。
「精製されていない(=純度が低い)」食品は炭水化物含有量が
少なくなるのが論理。この論理を否定する主張が書かれていない。

「未精製だとビタミンやミネラルが豊富で炭水化物の吸収率が高まる」などと
言いたいのかも知れないが、ここで提示されている命題は
炭水化物含有量の多い食事をとるには
であって、
炭水化物を多く吸収するには
ではない。

もしかして、
「精製されていない → 味に深みが有って飽きが来ない」って事?
だったらそう言ってくれよ。

p.205
まず、本誌の読者をはじめスポーツ好きの人は、
単行本化したんだから「本書」でしょ? 雑誌掲載時のまま直してないな。

p.219
フレーム溶接されたアウターワイヤーを
ホールドする留め具のことをアウター受けといい、
語順が不適切で係り受け構造が捉え難い。
「アウターワイヤーをフレームに溶接する」と誤読させる。
より適切には、例えば
アウターワイヤーをホールドするために
フレームに溶接された留め具のことをアウター受けといい、
とする。

p.222
クサドライブ
用語集の一項目。この項目だけ行頭一文字のフォントサイズが大きい。

p.224
Q(キュー)ファクター
ファクター両方のペダルの中心から中心までの距離を指す言葉。
いろいろな説があるが、これが最も有力な内容だ。
 「ファクター」消し忘れ。