2014年12月27日土曜日

国道246号の自転車ナビラインについて

2014年12月27日 本文を訂正

国道246号の一部区間に自転車ナビラインを整備する計画が、2014年12月24日に国交省と警視庁から発表されました。
http://www.ktr.mlit.go.jp/toukoku/kisya/pdf/20141224002.pdf

バス専用の第1通行帯の左に矢羽根模様を描き、自転車が車道の左端を走るように誘導する事が狙いのようです。

国交省・警視庁(2014)p. 1

国交省・警視庁(2014)p. 4



記者発表資料を読んだだけでは、その目的が
  • 歩行者、自転車利用者、バス乗客の安全確保なのか
  • 安全性は度外視して、とにかく自転車利用者にルール(*)を守らせる事なのか
判然としませんが、極端に狭い自転車通行空間を作ろうとしている事は確かです。

* 国道246号のように車両通行帯が設けられた道路(片側2車線以上の道路)では、自転車が第1通行帯の中で左端に寄らなければならないという規定は無い(道交法18条)ので、国交省と警視庁は、法定外標示という手段によって、そもそも存在しないルールを自転車利用者に守らせようとしている訳ですが。

ところが記者発表資料では整備イメージの写真も断面構成の図も不正確な寸法で作図されていて、実際より余裕が有るように見えます。自転車で車道を走り慣れていない人なら、「これくらい有るんだったら良いんじゃないの?」と誤解するかもしれません。

そこで、冒頭に挙げた二つの画像を検証する事にしました。

2014年12月27日追記

記者発表資料の図に示された数値の意味を誤解していました。良く読むと、資料中では自転車ナビラインの幅そのものは明示されていないので、正確かどうか検証のしようがありません。



国交省・警視庁(2014)p. 1

まずこれですが、国交省・警視庁(2014, p. 4)の記述によれば、ナビラインの幅が0.5m、バスレーンが2.75mの計3.25mです。

国交省・警視庁(2014)p. 1(部分拡大・補助線と数値を追加)

画像上で水平線を引くと、赤い部分の幅は350ピクセルでした(1mが107.7pxに相当)。
一方、縁石から矢羽根模様の右端までは92ピクセルなので、図の上では0.85mです。

0.5 m → 0.85 m

だいぶ盛ってますね。


次に、

国交省・警視庁(2014)p. 4

これですが、バスレーンなのに何故か乗用車が描かれています。というかそれ以前に、

国交省・警視庁(2014)p. 4(部分拡大・補助線を追加)

もう明らかに寸法線とナビラインの位置がズレています

2014年12月27日追記

この図を誤解していました。この寸法線がナビラインの幅を示しているとはどこにも書かれていません。恐らく0.50mというのは街渠(路肩)の幅です。


ただ、この図は寸法線自体が
  • 歩道の3.50mが334px(1mが95.4px)
  • ナビラインの0.50mが41px(1mが82.0px)
と不正確なので、streetmix で一から作図し直す事にしました。

これが正確な寸法です。

2014年12月27日追記

路面の塗り分け位置に関しては、これが正確かどうかは分かりません。実際はグリーンに着色した部分はもう少し広いものと思われます。


自転車を拡大するとこうです。

自転車は縁石にペダルがぶつかるほど左端ギリギリに寄らないとバスにぶつかりそうです。本当にこんな危険なインフラを整備するつもりなんでしょうか?

なお、バス車体の図はstreetmixが用意しているものが不正確なので、いすゞERGA(サイドミラーを除く全幅が2490mm)の車体寸法図に基づいて作図し直しました。(246を走っているバスがERGAかどうかは、バスマニアではないので知りませんが。)


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では、実際にこのナビラインが整備されたらどうなるでしょうか?
私なりに予想すると、
  • 自転車の通行実態は殆ど変わらないが、
  • ドライバーや歩行者が自転車の「ルール違反」を今まで以上に意識するようになる
こんな感じじゃないですかね。

ただ、
  • 本来の道交法を知らずに律儀にナビマークに従う自転車利用者と
  • 側方間隔を取らずに自転車を追い越すバス運転手
が出会ったとしたら、それは悲惨な事になりそうです。


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では、私ならどうするか。まず、これだけ空間が逼迫している道路で街路樹なんか植えてる場合じゃないだろってのが指摘できるので、

改良案

こうです。歩道の植栽部分を削り込んで自転車レーンを確保。車の第2、第3通行帯もちょっとずつ狭くしています。また、自転車同士の間で追い越しが発生すると1.5mのレーンからはどうしてもはみ出すので、万が一そこにバスが来ても事故に直結しないように(**)、自転車レーンとバスレーンの間にバッファを挟んでいます。

** 交通参加者が万一判断を誤ってもそれが(重大)事故に至らないようにインフラの側に寛容性を持たせるという発想は、オランダの交通安全思想、Duurzaam veilig(持続可能な安全性)の5原則の一つです。

上の図を見て、「自転車にこんな贅沢に空間を割いてやる必要なんか無い」と感じる人がいるかもしれませんが、記者発表資料(国交省・警視庁, 2014, p. 2)に拠れば、この区間の交通量は
  • 自転車 2239台
  • 歩行者 2966人(自転車の1.3倍)
であり、私が描いた横断面構成の案では、
  • 自転車レーン 2.3 m(バッファ含む) 
  • 歩道 2.5 m
なので、それほど非常識な空間配分ではありません。


バス停部分の構造案

記者発表資料(国交省・警視庁, 2014, p. 3)では次のような問題が指摘されていますが、
  • 右側から追い越す自転車がバスの発車を阻害
  • バス停車中、自転車が歩道に移行し、歩行者と交錯し危険
この問題は上の図のように自転車レーンを歩道側にバイパスさせれば解決できます。


横断歩道部分の構造案

これは、自転車が横断歩道で足止めされないようにし、車に対する旅行速度で自転車を有利にさせる為の構造です。横断歩行者は自転車レーンとバスレーンの間の交通島で待機し、その背後を自転車が通過します。

歩行者が自転車レーンを横切る箇所では、
  • 自転車レーンを横断する歩行者がいれば歩行者が優先
  • いなければ自転車はそのまま通過できる
というGIVE-WAYルールでの運用を想定しています。(自転車レーンに描いた▽▽▽がそれを意味します。)