2014年12月11日木曜日

評判の悪いドイツの自転車道

日本ではドイツをヨーロッパの自転車先進国と捉えて、その自転車インフラ事例をむやみやたらとありがたがる風潮が有りますが、実際にはドイツの自転車インフラはオランダと比べればかなり劣っており、場所によっては日本と大差無い場合も有るようです。



2014年12月11日追記

以前書いた記事、ベルリン・オリンピックと自転車道でも触れましたが、ドイツでは設計の拙さから自転車道の交差点での事故が多く、1998年に自転車利用者に対する自転車道の一律の通行義務が撤廃されました。そして、個々の状況に合わせて車道も走れるように見直しが図られ、通行義務の有無で自転車道に法的な分類が生まれました。Wikipediaドイツ語版の自転車道の記事(Radverkehrsanlage)では、この通行義務に関する記述に厖大なスペースが割かれており、ドイツ国内の自転車利用者がこの問題に如何に関心を寄せているかが窺えます。この追記部分の出典も同記事とその参考文献なので、詳しくはそちらをご確認ください。



http://www.aviewfromthecyclepath.com/2010/05/just-how-safe-are-dutch-cyclists-and.html

この記事は、自転車道より車道を走った方が安全だと主張するドイツ・サイクリスト協会に対し、オランダの専門家がデータ解釈の誤りを指摘し、全く逆の結論(車と自転車の走行空間は完全に分離した方が安全)を提示した、と伝えています。そして記事の最後では、事故率だけを安全の指標にして議論するドイツに対し、オランダは主観的な安全(=安心感)や社会的な安全(=防犯)も考慮に入れており、それが自転車の高い交通分担率を実現する上での鍵だと説明しています。

どうやら、ドイツも日本と同じく車道安全説を盲信している国のようです。この国で書かれた研究論文やインフラ整備事例は疑って掛からないと駄目ですね。



http://www.aviewfromthecyclepath.com/2010/05/german-cycle-paths-vs-dutch-cycle-paths.html

こちらの記事では、同じ【自転車道】に分類されるインフラをオランダとドイツで比較し、ドイツの自転車道に様々な構造上の問題が有る事を指摘しています。そして、ドイツ人が自国内の劣悪な自転車道のみに基づいて自転車道一般を否定する過ちを犯している、と書いています。また、ドイツより更に劣悪な自転車インフラしか持たないイギリス人は、ドイツのインフラにすら感銘を受ける事が多い、と警告を発しています。記事に埋め込まれた比較動画では、オランダとドイツの国境で自転車道の水準がガラッと変化しているのが見て取れます。これは見事な対比。



一口に「ヨーロッパ」と言っても自転車インフラの水準が国によって全く違う現実が分かりますね。では日本人として、世界のどの国、どの都市の事例を見習うべきでしょうか。私は、【自転車の交通分担率】が最も高い国、最も高い都市(※)を重点的に研究するのが良いと思います。

交通分担率を基準にするのは、それが自転車インフラの総合的な成績を端的に表わす指標だと思うからです。また、最も分担率が高い国を重視するのは、本物を知らないと良し悪しが判断できるようにならないと思うからです。料理も音楽も絵画もそうですが、まずは一番良いもの、一流のものをたくさん見聞きしないと、鑑識眼は育ちません。

2014年12月14日 助詞、語順などを修正{
(※但し、学生人口の多い都市ではその安さと手軽さから自転車が使われがちなので、インフラに多少の問題が有っても覆い隠されてしまいます。自転車の走行距離当たりの事故件数なども加味する必要は有るでしょうね。)



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そんなこんなで、ドイツに対する過剰な期待を排して見ると、海外視察記が伝える現地の様子もだいぶ違って見えてきます。
http://www.slowmobility.net/columns/world/2013-08-04_12-11/

なお、視察記の中で触れられている、交差点手前で直進車線と右折車線に両側から挟まれる自転車レーンについては、こんな動画も有りますので、併せて見るととても参考になります。