2018年8月18日土曜日

「世界の潮流から外れる日本の自転車政策」の発表スライド

2018年7月8日に文京学院大学で開催された交通権学会で口頭発表をしました。その際に使ったスライドを公開します(発表後に若干の修正を加えています)。


「世界の潮流から外れる日本の自転車政策——過去の経緯と今後の課題の概括」

読み上げ原稿はスライド下部の歯車アイコンから “Open speaker notes” で表示できます。スライドには書き切れなかった補足や詳しい出典などもここに入れてあります。


発表の概要

学会に発表を申し込んだ際に提出した概要です。
世界では、渋滞や運動不足の対策として自転車の利用を促進する都市が増えている。その手段として重視されているのが、自転車を誰でも使える移動手段にするための、主観的にも客観的にも安全な通行空間整備である。特にニューヨークは、従来の施策方針から大転換し、車道から構造的に分離された通行空間を整備することによって、自転車の交通量や安全性、自転車利用者の多様性を向上させている。

一方、日本では2008年の有識者懇談会以降、「自転車は歩道より車道を通行した方が事故リスクが低い」との認識が広まり、車道上を自転車通行空間とする施策が増加したが、その根拠となった研究には結論ありきのチェリーピッキングをしているものが多く、安全性の正確な評価が為されていない。また、通行空間の安心感が軽視され、一般的な自転車利用者にはあまり恩恵が及ばない整備事例も散見される。

本発表では日本におけるこうした自転車政策の歪みを詳しく取り上げ、真に安全で快適な自転車通行環境の実現には何が必要かを論じる。


3行でまとめると

発表の核心部分は、日本の自転車政策がおかしなことになった経緯についてです。それを3行でまとめると、
  1. 歩道通行政策から脱却する過程でノイジーマイノリティーから圧力を受けた
  2. 彼らの主張に同調した研究者らが不正行為によって歪めたデータを提供した
  3. 国土交通省や警視庁がそれらを鵜呑みにしてインフラ整備方針に反映させた
概ねこのような流れです。

もちろん、これがそのまま因果関係であるとは限りません。逆の解釈も可能です: 国土交通省と警察庁が予め施策の大まかな方向性(自転車道は極力整備させず、車道空間を温存する、など)を決めておき、それに都合の良い主張(「自転車道は不要」)をしている団体・有識者らを検討委員会に取り込んだという可能性です。


関連資料

国土交通省・警察庁の自転車ガイドラインについての意見
発表の冒頭で触れた、国土交通省ほかに送付した意見書を紹介している記事です。PDF原稿へのリンクがあります。

「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」についての意見
Cycling Embassy of Japanのサイト内特設ページ。上と同内容のPDF原稿を公開しています。