2018年8月2日木曜日

Wikipedia「自転車歩行者道」を編集しました

最終更新 2018年8月16日

日本語版Wikipediaの「自転車歩行者道」のページに大幅な加筆をしました。


従来の最新版

私が編集を行なった版
  • Wikipedia「自転車歩行者道」2018年7月31日版(最初の加筆)
  • Wikipedia「自転車歩行者道」2018年8月1日版(私の加筆の内、主観的だった部分の記述を削除)
  • Wikipedia「自転車歩行者道」2018年8月1日版(画像と出典を追加)

Wikipediaでは簡単な誤字修正程度なら以前にもしたことがありましたが、節の追加を伴う大規模な編集は初めてです。その作業に今回踏み切ったのは、従来の版のチェリーピッキングが目に余り、記事の中立性が著しく損なわれていると感じたからです。加筆の結果、記事の分量は一挙に2倍以上に膨らみました。



主な変更点


従来の版では自転車歩行者道の利点について一切触れておらず、日本が自転車歩行者道を導入したことは完全に誤った判断だったかのように印象付ける内容でした。この偏りを是正するため、自転車の死亡事故減少と交通分担率維持という2つの重要な効果についての記述を追加しました。

また、自転車歩行者道のようなインフラ形態は日本独自のものという記述がありましたが、これは端的に事実誤認であり、海外にも(名前は違えど物理的な実態は)ほぼ同等のインフラが存在することを、8ヶ国の資料を挙げて説明しました。

自転車歩行者道(あるいは歩道一般)が自転車にとって、車道を通行している時より対自動車事故のリスクが高いという記述については、従来の版が引いている出典の文献が科学的とは到底言えないものであると指摘しつつ、国内外の主な既往研究の概観を追加して、歩道通行と車道通行にリスク差が無い、ないし車道の方が危険であるという知見を紹介しました。

マイナーな箇所では、ママチャリという日本に独特の(走行性能の低い)自転車は歩道通行の所産であるという記述は二重に誤りである(日本独自でもなければ歩道通行の所産でもない)ので、これも文献に基づいて否定しました。


編集で心がけたこと


Wikipediaは個人のWebページではなく百科事典であり、いくつもの特殊なルールがあります。私はまだ不慣れでその作法を完全に把握できているとは言えないのですが、その内の一つである中立性の確保には特に注意を払いました。具体的には、これまでの版の執筆者が積み上げてきた記述は、たとえそれが誤りだと思っても削除せずに残しています。従来の版の記述に反論する場合は私個人の意見を書かず、異なる視点として参考文献の記述を示す形を取りました(これは完全には実行できていないかも)。

参考資料の選定にも配慮しています。科学的な厳密性が求められる論点の根拠には、(従来の版の執筆者が用いたような、根拠の曖昧な)一般向け書籍などではなく、できるだけ学術的な論文やそれに類する報告書を選びました。一方で、単純な事実だけが分かれば良い場合(「どこどこの都市にこういうインフラがある」など)は、個人のブログも参照しました。論文だけではなかなか現地の写真が見当たらないからです。


従来の版に対する個人的な所感


正直、怒っています。一応は出典を示し、検証可能性こそ確保しているものの、それらの資料が客観的根拠に乏しい、デマまがいの主張さえ含むものだからです。検証可能性以前に、資料の信頼性について考えてほしいです。

さらに腹立たしいのは、従来の版の表現が、形式的にはWikipediaの中立性の方針に極めて忠実である点です。執筆者個人の意見や判断を慎重に避け、参照した文献の記述を、あくまでも一つの視点として冷静に示しています。それほど高度な編集能力があるなら、特定の立場の利益に合致する文献のみを引いた偏向記事が問題であることくらい分かっているはずです。公平中立を装ってWikipediaをプロパガンダに使うのはやめてほしいです。


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