2013年1月22日火曜日

高齢者ドライバー対策2【自転車視点】

路上で高齢者が運転する車に遭遇したら、
自転車はどう対処すれば良いか、
もう一冊、別の本からも戦略のヒントを読み取ってみましょう。


 

『安全運転の科学』 牧下 寛 2006 九州大学出版会


高齢者の認知・反応特性を探る為に
公道を使って行なった実験(p.83)が紹介されています。

実験の概要を掻い摘んで説明すると、

実験協力者(様々な年代)に公道上で車を運転してもらう。
  1. 前を走る車に乗った係員が急ブレーキを踏んだ時、反応に何秒掛かるか。
  2. 街中に隠れた係員が交差点から飛び出した時、反応に何秒掛かるか。

というものです。


結果(p.90)は

  • 反応時間は大部分が0.4~1.6秒だったが、2.3秒という外れ値も有った。
    (クラクション反応実験よりデータ分布が遅い方向に広がっている。)
  • 反応時間の大きな遅れは高齢者で多かった。
  • 高齢者は視線の移動回数が少なかった。
  • 歩行者飛び出しに対する平均反応時間は、高齢者で有意に長かった。
  • 先行車の急ブレーキに対する平均反応時間は有意な年代差が無かった。
    (前の車のブレーキランプだけ見ていれば良いから)

などの特徴が見られたそうです。

高齢者は運転中、視界の中の或る一点をじいっと見詰めてしまい、
周辺視野の異常に気付くのが極端に遅れてしまう、という事でしょうか。

また、クラクションに対する反応が早いのは、視線の方向に関係無く
音が耳に入ってくるからでしょうか。



だとすれば、自転車側が採るべき対策は、
  1. 車道上では、ドライバーが中心視野で見るであろう位置を走行する
  2. 誘目性の高い色彩の服装をする
  3. こちらに気付いていなさそうな車に対しては大声を出す/ベルを鳴らす
の三点が有効でしょう。



1は、車道の左端ギリギリではなく、車線の中央付近に寄って走るという意味です。
これは片側二車線以上の道路であれば現行法の下でも適法です。
片側一車線や中央線の無い道路では微妙です。

(これは、道路交通法第18条の
又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
をどう解釈するかに拠ります。海外の一部の国・地域の法律では、
安全の為に車線の中央を走るべき場合を例示し、積極的に推奨しています。)



2の「誘目性」は、
何を見るでもなく漠然と見ている人の目を自然に引き付ける性質の事です。
「視認性」はこれとは違い、それを探している人の目に留まりやすい性質の事です。

例えばセブンイレブンやローソンの看板は
それほど目が引き付けられる色では有りませんが、
コンビニを探している人にとっては良い目印になります。

交通場面で考えると、ドライバーは車道に
自転車がいるとは思っていないので、
この文脈では「視認性」とは言いません。

誘目性は背景に拠って変わります。
赤色は目立つ色ですが、中華街の中では誘目性は落ちるでしょう。
日本の普通の道路環境では蛍光イエローが無難です。



3は、状況が切羽詰る前に早めの段階で鳴らしておく事が効果的ですが、
現行法では自転車のベルも「警音器」扱いで、緊急時以外の使用は違法です。
しかし、私は車のホーンと自転車のベルを同列に扱う事自体に違和感を覚えます。

理由の一つは、両者の音量レベルが桁違いである事、
もう一つは、自転車の走行音が極めて静かで、
ベルを鳴らさないと他者に気付かれない事です。

(ハイブリッド・カーが車両接近通報装置を
OFFにして走っているようなものです。)