2018年11月27日火曜日

Protected bike lane整備による自転車の高速化(バルセロナ)


Zicla社のZebra®で車道から分離された自転車レーンが整備された路線の整備前後を比較した車載動画がツイッターに上がっていました。整備前は車の渋滞に阻まれて中々進めなかった自転車が、車とは別の専用通行空間ができたことで劇的に速く、スムーズに走れるようになっています。



日本では2000年代後半から自転車活用推進研究会の疋田氏や古倉氏が「自転車は車道を走るべきだ。何故なら車道の方が歩道より速く走れる(移動手段として車に対抗できるようになり、車から自転車への乗り換えが進むことで環境負荷が下がる)からだ」と盛んに訴えてきましたが、「車道の方が速く走れる」という命題は、「A地点からB地点までの所要時間(旅行速度)」という観点から評価すると必ずしも真にはなりません。

確かに車道は瞬間的な最高速度では有利ですが、幹線道路では車の渋滞や路上駐車に進路を阻まれることもしばしばあり、歩道上を淡々と進む自転車に追い抜かれることもあるからです。また、自転車に乗る人の誰もが常に、息が上がるほど全力でペダルを漕ぐわけではないので、渋滞や路上駐車に足止めされた分の遅れをスピードで取り戻そうにも、自ずと限界があります。

自転車を都市部の速達移動手段にするという基本的発想には賛成ですが、それには自転車利用者全体の平均旅行速度を着実に引き上げる必要があります。自転車レーン整備やピクトグラム設置で自転車に車道を走らせようとしても路上駐車や渋滞で阻害される実態が多数ある以上、「歩道か車道か」という問題の捉え方は本質を外しています。

重要なのは、冒頭に引いた動画からも分かるように、「妨げのない通行空間を確保できるかどうか」です(これは旅行速度だけでなく、自転車に乗る人にとっての安心感や快適性の面からも重要)。もちろん、路上駐停車が少なく交通も穏やかな路線なら、車道上の視覚的分離の自転車レーンでも多くの利用者から選ばれています

自転車にとって「妨げのない通行空間」を提供することは歩道上の歩行者保護の観点からも重要です。その空間が歩道より走りやすいとなれば、教育や取り締まりで強制しなくても自転車はそちらに移ります(施策の持続性の点でも望ましい)。「とにかく自転車を歩道から出せ。歩道以外なら何でもいい」という雑な考え方では駄目です。