涼しい顔
自分にも関係があるのに、何の関係もないかのような顔をしてすましているさま。
そしらぬ顔をしてしらばくれているようす。
では実際、どの様な表情を言うのか。
画像検索してみると、人だけでなく犬、猫、魚、鳥、昆虫の写真まで出てくる。
表情は「微笑み」または「無表情」といったところ。
犬猫ならギリギリ擬人化できるだろうが、
人間がそこに表情を認識しがたい魚や昆虫にまで
「自分には関係無いよ」という台詞を当てられるのか?
画像を掲載しているページの文を読むと、
「気温が高いのに平然としている」という意味合いで書かれている。
この用法は人間を主語にした文にも見られ、
- 激しい運動をしているのに表情には余裕が有る
- 猛暑日にスーツを着込んでいるのに暑苦しそうな表情を見せない
気温や体温が快適な範囲にある時の表情という意味に変容してきているようだ。
一方で、比喩表現としての「涼しい顔」の用法には、
冒頭の辞書の定義が不足していると感じる例も有った。
こちらは小説から。
米澤穂信 2008 『儚い羊たちの祝宴』 新潮社
p.203
「…あれは、時宜を得るということについて
教える逸話だったはずよ。それがどうして、おかしかったのかしら」
五十鈴は涼しい顔でこう答えた。
「借金を断わられた腹いせに、まわりくどい喩え話で
延々と相手をなじる。そんな荘子が滑稽で、楽しかったんです」
これは単なる「関係が無い」じゃない。どう定義するか…。