2012年9月17日月曜日

涼しい顔

『大辞林
涼しい顔 
自分にも関係があるのに、何の関係もないかのような顔をしてすましているさま。
そしらぬ顔をしてしらばくれているようす。

では実際、どの様な表情を言うのか。


画像検索してみると、人だけでなく犬、猫、魚、鳥、昆虫の写真まで出てくる。
表情は「微笑み」または「無表情」といったところ。


犬猫ならギリギリ擬人化できるだろうが、
人間がそこに表情を認識しがたい魚や昆虫にまで
「自分には関係無いよ」という台詞を当てられるのか?


画像を掲載しているページの文を読むと、
「気温が高いのに平然としている」という意味合いで書かれている。


この用法は人間を主語にした文にも見られ、
  • 激しい運動をしているのに表情には余裕が有る
  • 猛暑日にスーツを着込んでいるのに暑苦しそうな表情を見せない
などの文脈で用いられていた。「涼しい顔」の意味が、文字通り
気温や体温が快適な範囲にある時の表情
という意味に変容してきているようだ。


一方で、比喩表現としての「涼しい顔」の用法には、
冒頭の辞書の定義が不足していると感じる例も有った。
こちらは小説から。

米澤穂信 2008 『儚い羊たちの祝宴』 新潮社
p.203
「…あれは、時宜を得るということについて
教える逸話だったはずよ。それがどうして、おかしかったのかしら」
 五十鈴は涼しい顔でこう答えた。
「借金を断わられた腹いせに、まわりくどい喩え話で
延々と相手をなじる。そんな荘子が滑稽で、楽しかったんです」

これは単なる「関係が無い」じゃない。どう定義するか…。