2018年10月17日に南青山のナビタイムジャパンで開催されたシンポジウム
神奈川県大和市の自転車政策と、滋賀県の「ビワイチ」地域振興の講演に続いてパネルディスカッション。個人的に一番注目したのはパネルで出てきたこのスライドでした。
Four types of cyclistsの日本版?
明らかにポートランドの「サイクリストの4分類」の影響が見て取れますね。
Alta Planning + Design (2017) Understanding the “Four Types of Cyclists”, Alta Planning + Design. Available at: https://blog.altaplanning.com/understanding-the-four-types-of-cyclists-112e1d2e9a1b (Accessed: 8 August 2018).
2006年に発表されたオリジナルの4分類は、自転車通行空間に求める安心感が人によって異なるという認識から生まれたもので、端的に言うと、
- 速い車の流れに混じって平気で走れるのはごく少数の「強い」サイクリストだけ
- 大多数の市民にとってはもっと安心感の高い通行空間が必要
これと似た概念が日本の自転車政策の文脈で語られるようになったことには大きな意義があるのではないかと思います。
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国の自転車政策は2000年代後半ごろから、スピードを追求するノイジーマイノリティーのサイクリスト団体(自転車活用推進研究会)からの圧力もあり、安心感を求める大多数の一般的な自転車利用者の意向を無視する方向に進んできました。
その結果、幹線道路だろうと何だろうとお構いなしに矢羽根やピクトグラムを車道の端に設置するだけという粗悪なインフラが濫造されるようになっています。
こうした施策は、当初は「安心と安全は違う」だの「自転車は車道を走った方が安全」だの「車から分離しない方が緊張感でルールを守るようになる」だのと理由を並べて正当化されてきましたが(*)、本質的には大多数の自転車利用者を置き去りにするものでした。
* これらは国の有識者委員会に参加していた古倉宗治氏を始めとする専門家らの主張ですが、そこには憶測やチェリーピッキングが多数見られ、科学的根拠は薄弱です。少なくとも現時点では、単なる希望的観測の域を出ません。
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このように国の自転車施策がサイレントマジョリティーを等閑視していることに対して、真正面から批判を突き付ける性格を有しているのが「サイクリストの4分類」の考え方です。今回のシンポジウムではそれに似た概念が提示された——そこに私は注目しました。
実際、上のスライドを出して説明していた藤田住環境計画の藤田有佑氏も、子供乗せ自転車の視点から幹線道路への矢羽根設置を批判していました。
スライドのピラミッド型の図については、正直まだ表現意図を完全には掴めていませんが、そこには日本の自転車政策の議論が正常化する兆しが感じられました。
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会場周辺の様子については次の記事「南青山の自転車環境」で。