2017年8月22日火曜日

品川通りの自転車歩行者道(北側)


調布市小島町を東西に走る主要市道12号・品川通りの自転車歩行者道を見てきました。写真の枚数が多いので前後編に分けます。前編では道路北側のインフラを、整備区間の西端から東へ向かって見ていきます。

(市道の名前は調布市公式ウェブサイトの「調布市道路線認定図、路線認定調書」で確認できます。)



自転車インフラ無しで整備された区間


自転車インフラ不在区間(地図URL)。道路は整備されたばかりの様子ですが
ゆとりある車道に比べて歩道がとても狭く、空間配分が不公平です。

北側の歩道。塀や街路樹の圧迫感があり、
自転車同士のすれ違いでヒヤヒヤするくらい狭いです。


ここは車道の幅を3メートルほど縮めて、


自転車通行空間を捻出すべきだったのでは?
街路樹も植えてる場合じゃないですね。優先順位の設定がおかしいです。


自転車通行空間の西側の始端


振り返って東を望むと自転車インフラ整備区間の始まり。


いちおう歩行者と自転車の棲み分けはできている雰囲気です。

現地を短時間見ていた限りではママチャリが多く、スポーツ志向のサイクリストにとっては主要ルートではないようです。歩道上をペイントで簡易的に分離したこの構造は、低速の自転車が主体のこの路線では、比較的うまく機能しています。


Strava Global Heatmap(出典URL)で見る自転車交通量。青色の線が濃い路線ほど、
(Stravaでログを取っている)サイクリストの通行が多い。
ウェブページのキャプチャ画像に路線名と破線を追加した。

黄色の破線で囲った品川通りの整備区間は、並行する甲州街道や多摩川サイクリングロードより線が薄いです。


歩道上の青色ペイント部分の幅は実測で 200 cm でした。


路上駐車の発生状況


路上駐車需要がそこそこ有るようです。

仮にこの路線で車道端に自転車レーンを引いても路駐に塞がれる事は目に見えています。自転車レーンはこの路線に適したインフラ形態ではないですね。

対向車線の黒いミニバンにも注目です。このように右折待ちの待機車が発生すると、その脇を通過する後続車が、自転車レーンが設置されるであろう空間になだれ込んでしまうことが分かっています。

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歩道上の自転車通行空間は、理念的には気に入らない人もいるでしょうが、各地の自転車レーン整備の失敗事例と見比べる限り、それよりは幾分優れています。



路駐を追い越して中央線を跨いだトラックを、
対向車線の車が縁石に寄って避けています。


無信号交差点


細街路との無信号交差点ですが切り開き構造が採用されており、


自転車の快適性の大敵、段差が生じています。

無信号交差点では車に縁石などの段差を乗り越えさせる構造にした方が、車と自転車の事故リスクが低いことが既に分かっています:
Schepers, J. P. et al. (2011) ‘Road factors and bicycle-motor vehicle crashes at unsignalized priority intersections’, Accident; Analysis and Prevention, 43(3), pp. 853–861. doi: 10.1016/j.aap.2010.11.005.

段差はハンプなどをわざわざ設置するのではなく、歩道を同一平面で連続させ、その縁石をハンプ代わりに利用する exit construction 構造が、以下の理由から優れていると言われています:
  • 車の速度が強制的に抑えられる
  • 歩道を通行する歩行者、自転車の側に優先通行権があることが直感的に理解できる


「東京都長期ビジョン」の第3章、都市戦略2(p.110; PDF掲載ページ)でも
整備推進の方針が、整備イメージと共に示されています。


この交差点だけ何故か背の高いボラードが立っています。


車道と自転車通行空間が中途半端に離れていて、
後方から接近する自転車を左折車のドライバーが視認しにくそうです。


太いボラード自体も視野の妨げになりそうです。




縁石の段差が小さい所を通る自転車


ゾーン30政策による事実上の規制速度引き上げ問題


ゾーン30施策の導入以前の日本では、市街地の歩道のない生活道路では
20 km/h の規制速度が一般的でした。


品川通りを挟んだ反対側も似たような幅の生活道路ですが、
向こうはゾーン30規制が掛けられ、実質的に制限が緩和されています。

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細街路から出てくる車の見通し


細街路から出てくる車が品川通りを走る自転車を視認できるか試してみます。

右ハンドル車だとドライバーの視点はもう少し右寄りですが、左ハンドル車視点との間を取って道路の中央から撮影しました。


民地の隅切りはあるものの、この位置では見通しは限定的です。


左も同じ。


ここまで来るとだいぶ見通せますが電柱が邪魔ですね。


左はまずまず。


沿道の駐車場から出てくる車の見通し


沿道の駐車場から出て来る車。車体の前端が自転車通行空間に差し掛かる前に
運転席からの左右の見通しが確保されています。民地から自転車通行空間までの
距離は 2.5 m くらいですね。


車両乗り入れ部のデザイン


車両乗り入れ部は歩道が(ほぼ)同一平面で連続しています。
車の重さに耐えられるように乗り入れ部だけ舗装の種類が違うので、
舗装の切り替え部で僅かな段差が生じていますが。


歩行者、自転車が優先で、出入りする車が劣後であることが、
標識などなくても一目瞭然です。これぞデザインの力。
ただ、多すぎる車止めが歩行者優先のメッセージを薄めてしまっていますね。


車両乗り入れ部には車止めが立っていますが、本数が過剰に感じます。


信号交差点周辺の設計


京王相模原線と交差する手前辺りから歩道の幅員がさらに広がります。
なんでだろうと疑問に思っていましたが……


地下化された京王相模原線

Google Earthで過去の航空写真を見ると、元々は相模原線が地上にあり、道路は線路の下を潜っていたことが分かります。広い歩道はアンダーパスの側道だった部分なんですね。


しかし自転車通行空間は交差点の手前で打ち切られ、
その延長線上は横断歩行者の滞留空間にぶち当たるダメ設計です。
せっかくの空間資源を活かせていません。

自転車通行空間はこう引くべきでした。




信号交差点を渡った先にもうまく活用されていない広大な歩道が。


こう繋げば良かったのに。


再び、過剰な車止め


沿道側の車止めは不要では?


電柱も相まって歩行者の通行空間を無駄に狭めています。




無信号交差点



この交差点では自転車横断帯の幅が青色ペイントの幅と合っていません。


同じ交差点を細街路から。ここにはミラーがありますね。


自転車通行空間の東側の終端


青色ペイントの東側の終端


歩道の幅が半減しています。


整備区間外の信号交差点


さらに進むと小島町3丁目交差点。
車道は右折レーンが加わり、端まで車の通行空間として使い尽くされています。

自転車で車道を走ろうとすると後ろから車に追い立てられ、強いプレッシャーを感じそうです。


歩道はかなり狭いですが、「車道よりはマシ」というのが
大部分の利用者の判断のようです。


交差点の南側の枝、都道120号。品川通りよりさらに狭いですね。


歩道は片側しかなく、幅も道路構造令の最低基準未満。車道も約5.5mと狭いです。


交差点北側の枝は歩道に少し余裕があります。


車道の停止線の後退量がすごいですね。
交差点の角で信号待ちする自転車とは20メートル近く差が付きます。


Google Earthによる測定(キャプチャ画像を加工)

これだけ差があると、車道と横断歩道の信号が同時に青に変わっても自転車が先に交差点に進入できるので、直進自転車と左折自動車の錯綜が減り、かつ優先関係がルール通り成立しやすくなります。


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