2018年10月10日水曜日

志木市・本町通りの自転車レーン



2018年10月12日 加筆・誤字修正




整備区間は本町3丁目交差点から北上して柳瀬川と新河岸川を渡った先までの約850mです。整備区間の南端から北に向かって見ていきます。


起点からしばらくは混在通行


本町3丁目交差点内は特に矢羽根型路面表示(自転車ナビライン)も何もなく、交差点流出部から整備が始まります。


右折車線付加のしわ寄せで起点から約80mは混在通行区間

小型車とならギリギリ並走できてしまう微妙な幅員ですが、バスに追い付かれたら追走されて20秒間くらいプレッシャーを受け続けることになりそう(速度15km/hの場合)。


使われない矢羽根

自転車の種類に関係なく、この区間の車道通行率は低い感じでした。



次の信号横断歩道の直前でやっと自転車レーンが始まる。


自転車レーンの起点


矢羽根の中心線と自転車レーンの位置関係

矢羽根の中心線は自転車レーンの青いペイント部分の中心と揃っていません。恐らく縁石と白線のちょうど中間に合わせて配置しているのでしょう。ということは自転車レーンも、青いペイント部分の中央ではなく、縁石と白線の中間辺りに自転車を走らせる想定と考えて良さそうです。しかしその位置でも車との側方間隔は十分確保されないように見受けられます。

自転車レーンの青いペイント部分の幅は(隣接する白線幅を15cmとするなら)82cmくらいでしょうか。かなり狭いです。街渠のエプロン部はやや幅の狭いタイプで、自転車レーンの青いペイントとの間に25cmほど隙間が空いています。この微妙にケチった塗り方も加わって余計にレーン幅が狭く見えます。

ちなみに自転車レーンの推奨幅は、日本国内の現行ガイドラインでは
自転車の安全な通行を考慮し、1.5m以上を確保するものとする。ただし、道路の状況等によりやむを得ない場合(交差点の右折車線設置箇所等、区間の一部において空間的制約から 1.5m確保が困難な場合)は整備区間の一部で 1.0m以上まで縮小することができる。
となっていますが(p.Ⅱ-17)、オランダの現行基準に照らすと、これはもう「自転車の安全な通行を考慮した」とは言えない水準です。

2017年の改訂版でCROW(Rik de Grout, 2017, p.110–111, 236)は、自転車レーンの推奨幅を2.00–2.25mに、最小幅を1.70mに変更しました(通行帯区分線の幅は含まない)。これは
  • 自転車同士の並走・追い越しの際にレーンからはみ出さない
  • 車が自転車をギリギリの側方間隔で追い越すことを防ぐ
ことを目的として定められた水準で、最小幅は10年前の2007版(Rik de Grout, 2007, p.118, 166–169)より0.20m広げられています。

Rik de Grout, H. (ed.) (2007) Design manual for bicycle traffic. Den Haag: CROW (record, 25).
Rik de Grout, H. (ed.) (2017) Design Manual for Bicycle Traffic. Amersfoort: CROW (record, 28).


自転車レーンの停止線の前出し


前出し量は車のホイールベースくらい

この程度の中途半端な前出しでは自転車が大型車の車体直近の死角に入りそうです(ここでは左折が生じないのであまり関係ありませんが)。


細街路との無信号交差点は切り開き構造

こういう交差点は歩道を同じ高さで連続させ、車道を分断した構造(continuous footway)の方が、Schepers et al. (2011) の研究からは安全と推測されますが、日本では一向にその構造がデフォルト化しないですね。

Schepers, J. P. et al. (2011) ‘Road factors and bicycle-motor vehicle crashes at unsignalized priority intersections’, Accident; Analysis and Prevention, 43(3), pp. 853–861. doi: 10.1016/j.aap.2010.11.005.

過去の関連記事
巣鴨地蔵通り商店街のcontinous footwayとsimultaneous green


うーん、やっぱり自転車レーンは細すぎて頼りなく見える。

青くペイントするならこの2倍くらいの幅が適正でしょうね。省スペース型の街渠と組み合わせればそれほど困難な課題でもないはずですが。


縁石までキッチリ着色するとこんな印象

あー、やっぱりだいぶ印象が変わりますね。


バス停は交錯回避措置なし

バスの運行が疎らな路線ならこのような簡素な構造でも問題になりませんが……。


走りながらだと読みにくいです。なぜ真上から見る前提の縦横比?


2つのバス会社が共有しているバス停

時刻表を見ると、
  • 平日朝7時台は東武バスが6本/h、国際興業バスが13本/h(計19本/h)
  • 平日日中は東武バスが4本/h、国際興業バスが10本/h(計14本/h)
で、結構頻繁に運行されています。特に朝は車道上の自転車と頻繁に交錯しそう。


車道を走る自転車の通行位置はペイント部分の左端辺り

自転車レーンを走る自転車もいなくはないですが、歩道より明らかに少なかったです(朝の通勤通学ピーク時は違うかもしれません)。

歩道の方が広く、安心感も高く、双方向に通行できて便利なので、当然と言えば当然ですが、車道も路上駐車が皆無で規制速度も30km/hと比較的恵まれた条件です。正直もう少し自転車レーンの利用率が高くても良さそうなものなのにと意外でした。レーンの狭さの他に、始終端で混在通行化してしまうのが影響しているんですかね。


代替レイアウト案

現在の自転車レーン部分を地上機器や信号柱の収容空間にして、その左に自転車道を設けた方が幅広い利用者に喜ばれたかもしれません。Kendrick (2011) が指摘するように排気ガスへの曝露量も減りますし。

Kendrick, C. et al. (2011) ‘Impact of Bicycle Lane Characteristics on Exposure of Bicyclists to Traffic-Related Particulate Matter’, Transportation Research Record: Journal of the Transportation Research Board, 2247, pp. 24–32. doi: 10.3141/2247-04.


歩いてきた方(南)を振り返っています。


無信号丁字路

区間途中でも自転車レーンが途切れて矢羽根化。日本では「自転車に車道を走らせる」という信念ばかりが先行して、その通行空間がbicycle-friendlyかどうかが軽視されるきらいがありますね。



おや、歴史的な建築が意外と多い。

志木市「国の登録文化財:朝日屋原薬局




自転車レーンは市場坂上バス停を境に再び矢羽根化


ユーザー・エクスペリエンスで肝心な交差点周辺で混在通行

交差点流入部でこのように自転車レーンが打ち切られて混在通行化される構造は、国の自転車ガイドラインが2012年の初版から推奨しているものです。これに関してはガイドライン検討段階の有識者委員会(安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会, 2012, p.11)で徳島大学の山中氏が、
交差点直近までレーンをひくのは、米国やデンマークでは問題とされており,2段階停止の対策以外にも,事前にマージする対策など多様な対策が実施されています。
と指摘したり、埼玉大学の久保田氏が交差点での混在通行の安全性を示唆する実験結果 (Rahimi, Kojima and Kubota, 2013) を報告したことなどが背景にあります。

ただしアメリカでは、交差点手前での混在通行化は自転車利用者にとってストレスが大きい (FHWA, 2015, p.103) と認識されていますし、NYCでは2017年に混在型交差点で巻き込みによる自転車利用者の死亡事故が発生したため、当初は混在型で整備された交差点が試験的に分離型に改修される (Meyer, 2017) という事例も現れています。

デンマークも同様に、交差点手前での混在通行化は自転車利用者にとって不安 (insecure) で、交差点の通過も困難になるとして、既存のインフラも分離型に改修する方針が示されています (City of Copenhagen, 2013)。

そして久保田氏の実験(種々の交差点構造の比較検討)ですが、これは旧運転教習所内で行なわれたもので、自転車利用者役の実験参加者は車との混在に危険や不便さを感じても歩道に上がることができない(上がる歩道がない)という点で、現実の道路とは決定的に違います。実験でも混在通行化は自転車利用者役の参加者からの評価が最低 (Rahimi, Kojima and Kubota, 2013, p.1438) で、現実の道路で導入すれば大多数の自転車が混在を嫌って歩道を走ることは目に見えていました。


City of Copenhagen (2013) Focus on Cycling. City of Copenhagen. Available at: https://kk.sites.itera.dk/apps/kk_pub2/pdf/1133_mLNsMM8tU6.pdf (Accessed: 12 October 2018).

FHWA (2015) Separated Bike Lane Planning and Design Guide. Federal Highway Administration. Available at: https://www.fhwa.dot.gov/environment/bicycle_pedestrian/publications/separated_bikelane_pdg/separatedbikelane_pdg.pdf (Accessed: 12 October 2018).

Meyer, D. (2017) ‘DOT Tests Out New Intersection Design for Protected Bike Lanes’, Streetsblog New York City, 9 October. Available at: http://nyc.streetsblog.org/2017/10/09/dot-tests-out-new-intersection-designs-on-protected-bike-lanes/ (Accessed: 16 October 2017).

Rahimi, A. R. A., Kojima, A. and Kubota, H. (2013) ‘Experimental Research on Bicycle Safety Measures at Signalized Intersections’, Journal of the Eastern Asia Society for Transportation Studies, 10, pp. 1426–1445. doi: 10.11175/easts.10.1426.

安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会 (2012) ‘第3回 参考資料1-1 第2回委員会後の追加意見’. 国土交通省・警察庁. Available at: https://web.archive.org/web/20130315081217/http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/cyclists/pdf3/5.pdf.


市場坂上交差点

車道左端から交差点に進入して矢羽根に沿って走る自転車は皆無でした。交差点内で車との距離が近すぎますし、その先もずっと混在通行区間が続くからでしょう。



柳瀬川に掛かる栄橋に向かって登り勾配+混在通行


大型車混入率も高い

あー、これは車道通行率が低いのも無理ないですわ。車に追い立てられながらの上り坂はプレッシャーが大きい。


当然の帰結

安心感を無視した矢羽根を車道端に設置しただけでは、利用者視点で実質的な環境改善とは言えないですね。


続いて新河岸側に掛かるいろは橋


こちらは自転車レーンがありますが、やはり利用は低調。


右折車線に入る先頭の車を避けて自転車レーンに侵入してしまう後続車


橋を渡ったらすぐ先で自転車レーンの終端部




これで車道通行は無理ですって。

1台だけ、この先も引き続き車道を走るロードバイクを見ましたが、大型車に追い立てられながら車道を走るのは一般の自転車利用者にとってはストレスが大きすぎるでしょう。