2012年3月8日木曜日

安価なロードバイクの実相

6万円台のロードバイクに一年間乗って感じた事と遭遇したトラブル。



車種は khodaa bloom (2010) の Farna F1.0S-2
以下詳しく紹介するが、重要な問題点を纏めると
  • ブレーキとタイヤが貧弱
  • クイックシャフトが破断
で、消費者製品として安全性の最低ラインを割っていると感じた。
GIANTのOEMと言われているが、安心はできない。


■まずは良かった点


1. デザインがおとなしい

ロードバイクは基本的に競技用の機材なので、
原色を多用するなど、どうしてもデザインが派手になりがち。
 
またプロレースでは広告塔としても機能しているので、
パーツというパーツにブランドロゴが入る。
文字に覆い尽くされた車体は耳なし芳一の様で、
一つの造形物として見た時、視覚的にうるさい。

対して6万円台のこのモデルは
無名ブランドのパーツで固められているので、
情報量が少なくスッキリした外観。良い。


2. フレームは丁寧な造り

組み付けられているパーツの質はさて置き、
フレームは溶接部分の仕上げが滑らか、
フォークの断面形状も滑らかな流線型で美しい。
塗装もロードバイクには珍しい淡い色彩で、これまた美しい。

また下り坂を高速で走ったりしても
不快な振動が生じず、安心して身を任せられる。


3. パーツ交換の効果を実感しやすい(はず)

元々が質の低い重量級パーツなので
ちょっと良い部品に変えただけで感動できる。
(タイヤ、フロントディレイラーの交換で実感した。)

フレーム自体は物が良いので、カスタムの仕方によっては
市販の完成車以上のコストパフォーマンスを得られるかもしれない。
(安値のユーロ圏の海外通販を駆使するなど。)


■感じた問題点


1. ギヤが使いにくい

フロントが50/34Tで歯数差が大きく、
使い勝手の良い中間域がポッカリ空いているので、
  • 巡航速度に乗るまではチェーンが襷掛けになる。
  • インナーに落とすと足が空回りして危ない。
  • アウターに上げると一気に重くなる。
  • 安価なFSAクランクセットだからか、変速性能が低い。

実際に良く使うギヤ比がスプロケット中央に来るように
フロントのインナーを34Tから42Tに交換した所、
平地40km/hから上り25%勾配まで42T一枚で賄えるようになり、
フロント変速はほぼ不要になった。(リアは13-26Tの8速)
2012年8月28日追記
その後、脚力が付いてきた為、50T x 13T でも足りなくなった。
また上り急勾配は街中の短距離の坂なら問題無いが、
或る程度距離が長い峠に挑戦したらさすがに苦しかった。

アウターとの歯数差が半減したので変速もスパッと決まる。

50Tと42Tの組み合わせ

リアの多段化が著しい現在なら
フロントはギヤ一枚でも足りるのでは?

ダブルギヤにするにしても、アウターを小さくして最高速を抑え、
代わりにアウターとインナーのギヤ比を近接させた方が
入門機種としては適切に思える。


2. ブレーキが貧弱 (2012年8月28日修正)
 
上位モデルの性能が分からないので主観的に不安な点を挙げる。

一点は、雨天時に制動力が極端に落ちる事。
10km/h程度からの全力ブレーキでも数メートル進んでしまう。

もう一点は、28%程度の下り坂ではブレーキ力に不安を感じる事。
ハンドルバーのドロップ部分から三本指を掛けてやっと速度をコントロールできる。

また、ブレーキ側のクイックリリースレバーが樹脂製部品で
固定強度が低く、走行中に解放する事故が有った。


3. タイヤが劣悪

交換後の Continental Grand Prix 4000S と比較すると、
初期装備の Kenda Competition Kontender は、

硬い。路面からの細かい振動が直に来る。
滑る。急ブレーキを掛けると後輪が簡単にロックする。
減る。 僅か三ヶ月で台形に削れた。
重い。ゴムが分厚く、一本320gも有る。
弱い。厚みの割にはパンクしやすく、サイドも剥離した。
ケーシング露出

スピードが出る乗り物はちゃんと止まれる事が絶対条件だが、
タイヤの性能(摩擦力)がそれに見合っていない。

2013年3月3日追記
ちなみにこのKontenderタイヤ、本来は車椅子用の競技用タイヤらしい。
幾ら競技用でも、車椅子のタイヤをロードバイクに流用して良いのだろうか。

4. リムテープの幅が合っていない (2013年5月21日追記

荷造りテープに似た黄色のリムテープが使われていたが、
幅が16mmと狭く、ニップルホールの端が僅かに露出していた。

テープ自体も分厚い割には、あまり耐圧性が高くなく、
ニップルホールの部分はかなり深く凹んでいた。

シマノの18mmのリムテープに交換したところ、
隙間なくキッチリと嵌まった。



■気付いた事


1. ハンドルバークランプ径がマイナー規格

ロードバイクでは少数派の25.4mm外径。
市販のハンドルバーは大抵26.0mmか31.8mmなので、
交換しようと思ったらステムごと取り換えになる。


2. フラットペダルが片面踏み

裏面が凸凹していて、踏める形になっていない。
間違えて裏を踏んだ時、表に引っ繰り返すのが厄介。
どうせ直ぐ交換するパーツとはいえ、
入門モデルにこのペダルは不親切だろう。


3. チェーンラインが前後で一致していない(2012年9月7日訂正)

ノギスで測定した結果、
前スプロケット 46.1mm (*)
後スプロケット 41.4mm
で、両者の間に後ろスプロケット約一枚分のズレが有った。
* 車体中心からの距離がインナーチェーンリングで約43mm、
アウターチェーンリングで約51mmだった。

一般的にはアウター×ロー、インナー×トップの襷掛けは
共に避けるべきとされているが、実際はインナーチェーンリング(42T)で
トップギヤに入れても音鳴り(*)はせず、
逆にアウターチェーンリング(50T)はロー側2~3枚で音鳴り(*)が生じた。

* ここで言う「音鳴り」は、チェーンラインが斜め過ぎて
チェーンのインナープレート内側がスプロケットの歯の側面に当たる事。
チェーンのアウタープレートとフロントディレイラー・ケージの接触音や、
チェーンのアウタープレートとアウターチェーンリングの接触音ではない。

ただし、前が50/34だとインナー×トップ側2枚は
チェーンとアウターチェーンリングが擦れる。


4. トリム操作は双方向から出来るが……

シマノの説明書では、ST-2200のトリム操作は親指レバーでする事になっているが、
ST-2203同様、ブレーキレバーでインナーからアウター方向へもトリムできる。

親指レバーでのトリム操作はミリ単位の繊細さが必要で、
荒れた路面を走る時は誤ってインナーに落としてしまいやすい一方、
ブレーキレバーでのトリム操作は確実に操作できるので使いやすい。

ST-2200のトリム操作にはこうした非対称性が有るので、
フロントのチェーンリングはインナーを基本に使う方が便利だった。

ディレイラーの挙動を見ると、シフターで設定可能な位置は
  1. アウター
  2. アウターからのトリム
  3. インナーからのトリム
  4. インナー
の4ヶ所が確認できるが、親指レバーでは3の位置を通過して
一足飛びに4の位置へ行ってしまうので、場合に拠っては
インナーに落としてからトリム操作で少し戻す
という操作が必要。


2013年3月8日追記
FD-3400に交換したところ、
インナーでのトリム操作は完全に不要になった。



■遭遇したトラブル


1. クイックリリースの軸が破断した


ホイールを取り付けようとクイックレバーを倒した時にバキッと。
ピアノ線が切れた瞬間の調律師の気持ちが分かった。これは後を引く。


発売元に破断面を分析してもらったところ、
鬆が見られない事から製造時の問題ではなく、
使用中に自転車を倒してしまった時の衝撃が原因だろう
との見立て。
確かに一回だけ不注意で倒してしまった事は有るが、
その程度の衝撃で破断する強度なのか?


2. ワイヤーガイドが割れた

購入時からBB下のワイヤーガイド(プラ製)のネジ穴に
罅が入っていて変速がスムーズに行かなかったが、
次第に罅が拡大し、遂には割れて走行中に落下。

リアディレイラーのワイヤーだけが一気に弛み、
上り坂の途中でトップギヤへ強制シフトアップした。


3. フロントの変速不調が頻発した

インナーに落とす時、そのままフレーム側へ落ちる。
アウターに上げる時、ガラガラ鳴っていつまでも上がらない。

チェーン落ちの方はチェーンの伸びが主因だったようだが、
チェーンリングの歯数差が大き過ぎる事(50Tと34T)や
クランクセットがシマノ製でない事(FSAのVEROグレード)も
影響していたのではないかと思う。

チェーンを交換し、インナーチェーンリングを
42Tにしてからは変速の不調は解消した。

(アウター×ローからインナーへの変速では
今でもチェーンが落ちるが、これは仕方無い。
フロント変速はチェーンラインが真っ直ぐの時にすれば問題無い。)


4. 補助ブレーキレバーのネジ山(メス側)が馬鹿になった。

保安部品だからと強めにネジを締め込んでいったら
スルッと回って終了。元々使う機会も少なかったし、
ペアで103gも有ったので取り外した。

入門モデルは補助ブレーキレバーを装備して
安心感を演出する例が多いが、実際に乗ってみると
STIレバーを握るより両手の間隔が狭まる上、
上半身が起きて重心が高くなるので不安定になる。

急ブレーキが予想できる場所では
予めSTIレバーに握り替えているし、
前傾姿勢も慣れれば苦しくないから
補助ブレーキレバーは不要だった。


5. フロントディレイラーが破損した。(2012年5月13日追加)

FD-2200。可動部分が緩んでいたので増し締めしたらネジが破断した。
このネジに関しては説明書に締め付けトルクが書かれていない。

力の掛かる部分の回転軸と固定具をネジ一本で済ませている。
後継モデルのFD-2300ではこの部分がネジではなくなった。

ねじ山の根元附近が破断し、残りの部分はネジ穴の中に取り残された。


FD-2200は仕様上、最大歯数差が16Tとされているが、
同コンポーネントのクランクセット(FC-2200)は
52T/39T (13T差) と 50T/39T (11T差) しか無い。

仕様では16T差対応と謳っているが、
実際にはコンパクトクランクセット(50T/34T で 16T差)の
変速負荷には耐えられない構造なのではないか。

FD-2200の構造。重要な可動箇所がネジ一本による片側支持。
嘗てはDura-Aceもこの構造だったが(7700系まで)、現在は
7900系からSora 3400系に至るまで両側支持構造になっている。

FD-7900の構造。実物は持っていないので写真資料から推定。
可動軸は上下とも両側支持構造になっている。
現行コンポでこの構造に改良されていないのは
最下位グレードのFD-2300のみ。


■パーツの実測重量


手元の工具で取り外せるパーツのみ重量を実測した。
ただし測定誤差が±10g程ある。

STIレバーが意外に軽く、Dura-Aceの7800系に次ぐ水準。
(ワイヤー分を含めていないから?)

フォークkhodaa bloom original770g
フロントディレイラーShimano FD-2200 31.8φ110g
リアディレイラーShimano RD-2200GS280g
シフターShimano ST-2200430g (pair)
ブレーキShimano BR-R450 57mm200g (each)
補助ブレーキレバーTektro RL-570103g (pair)
ハンドルバーHL DR-AL-145 25.4mm325g
ステムHL TDS-AL-59-8165g
サドルkhodaa bloom original350g
シートポストSP-220 アルミ 27.2x350mm290g
シートクランプEVG MX38 アルミ 31.8φ25g
ペダルVP386330g (pair)
ホイールセット(前)khodaa bloom amigo 700C1030g (*1)
ホイールセット(後)khodaa bloom amigo 700C1620g (*2)
タイヤKenda Competition Kontender 700x26320g (each)
チューブKenda 700x23-25C S1740-T110g (each)
ベル不明24g

*1 ハブ、クイックリリース(57g)、スポーク、リム、リムテープ合計
*2 ハブ、クイックリリース(60g)、スプロケット、スポーク、リム、リムテープ合計

ハブはFORMURA CO31-F 28H 100mm(フロント)/130mm(リア)
スプロケットはShimano CS-HG50 8S 13-26T
スポークは14G ステンレス
リムはQUANXIN CR-32 700C 28H

後輪のクイックリリースは測る前に手放してしまった
(破断したあと発売元に送った)ので、
重量は交換後の類似モデルのもの。


2013年3月3日追記

工具を買い揃えて以前より分解できる箇所が増えたので、重量表を作り直した。


未計測のバーテープは、その後交換したFi'zi:kや
BikeRibbonのバーテープの実測重量から推測すると、左右合わせて
50~70g程度と考えられるので、計算上の合計重量は10.2kgになる。

これはカタログ重量10.3kgに100gほど足りない。
42項目に分けて計測しているので、誤差が積み重なったのだろう。

後はホイールのリム重量が知りたいところだが、
これを分解してしまうと日常の移動手段が無くなってしまうので、
少なくとも予備のホイールを入手するまでは分解できない。



■入門ロードバイクの安全基準


現在、スポーツ自転車の安全基準については
SBAA認定制度が有る。

メーカーと消費者の知識差を埋める
良い仕組みだと思うが、残念ながら認定モデルは少ない。

メーカーが取得に熱心でないのか、
取得できる製品が少ないのかは分からないが、
折角の認定制度が粗悪品の排除原理として機能していない。
認定取得を受けてもカタログに表記しない場合さえ有る。

そんな環境下ではあるが、
アキコーポレーションのLOUIS GARNEAUブランドと
ブリジストンサイクルのANCHORブランドの
一部モデルではSBAA認定を取得している。

これから入門クラスの自転車を買う人に推奨したい。

他にもSBAA取得モデルを擁するブランドは有るが、
ちゃんと広報していないので書いてやらない。


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