2015年3月17日火曜日

ストックホルムの駅前駐輪場プロジェクト

社会の問題を解決し、より良い未来を考えるというテーマで意欲的に記事を送り出しているgreenz.jpというウェブマガジンが有ります。そのサイトに、ストックホルムの新しい駐輪場を紹介する翻訳記事が有りました。

岡田弘太郎(2015年3月15日)
自転車が街にもたらす価値は安全性と環境だけじゃなかった!
ストックホルムに建設される、つい長居したくなる駐輪場って?



ただ、中身を読んでみると、どうも文章に違和感が有ります。特に引用文の部分は論理の展開が不自然で、意味が上手く取れません。

何かおかしいなと思って元記事を見てみると、翻訳の問題だと分かりました(口を憚らずに言えば、これはもう単なる誤訳のレベルを超えた、謂わばカットアップですね)。

で、「本当はどういう話なの?」と思って調べました。

元記事
Adele Peter(2015年2月17日)
Stockholm's Newest Parking Garage Is Only For Bikes

ほぼ同内容の別記事
Kiran Umapathy(2015年3月18日)
City works with Belatchew Architects to design a more city-friendly parking garage

駐輪場の設計を手掛けた建築事務所のページ
Belatchew Arkitekter(英語版)
(独創的な建築作品がたくさん載っていて、眺めているだけでも楽しいです。)

スウェーデンの現地メディアの記事
Dagens Nyheter(2015年1月27日)
Garage mitt i Stockholm förbjuder bilar

ふむふむ、なるほど。プロジェクトの背景と位置付けがだいぶクリアに見えてきました。

Dagens Nyheter(2015年1月27日)
Ett cykelgarage med 700 platser planeras vid Södra station. Det ska krönas av ett hus med 57 bostäder – helt utan parkering för privatbilar. Den rödgrönrosa majoriteten i Stadshuset ser det som ett pilotprojekt för att bygga stad i framtiden.
ストックホルム南駅の近くに700台収用の駐輪施設を作って、そのビルの上層階を57戸の集合住宅にしようという計画。しかも個人所有のクルマ用の駐車場は一切無し。未来の都市の作り上げて行く上での試験事業として、市議会各党の注目を集めている。/* 第1段落を要約して和訳 */

どうやら、駅近の一等地に大規模駐輪場を確保する為に住宅と一体で開発しようという話のようです。これと似た話、発言小町とかYahoo!知恵袋で読んだ事あります。

発言小町(2010年3月4日)
駅前マンションの駐輪場、不正使用を依頼されて困っています

Yahoo!知恵袋(2010年12月3日)
友人のマンションに自転車を止めていたら、管理人に見つかって怒られた。

どちらもトラブル事例ではありますが、駅前マンションの駐輪場を住民以外も利用するという構図はスウェーデンの計画と同じですね。ストックホルムはそれを最初から計画に組み込んでいると。そして、その駐輪場の一つのポイントは防犯のようです。

Dagens Nyheter(2015年1月27日)
Trygga cykelgarage som skyddar såväl mot snö och regn som mot tjuvar och vandaler har länge varit ett starkt krav från Stockholms cyklistorganisationer.
雨や雪だけでなく盗難や破壊からも自転車を守れる駐輪場は、ストックホルム・サイクリスト協会の宿願だ。/* 第2段落の冒頭を要約して和訳 */

あー、そういう理由も有っての自転車修理工房や喫茶店なんですね。

Adele Peter(2015年2月17日)
" /* 中略 */ there are great possibilities of creating possibilities for activities like bike repair shops or smaller cafes, which in turn make a neighborhood more lively and safe since there will be people around."

オランダもそうですが、犯罪を未然に防ぐ為には計画・設計段階からの工夫が必要だという意識が明確ですね。日本がその点で遅れているのは或る意味で幸せな事だったんでしょうが……。