2015年3月20日にOVE南青山で開催された自転車活用推進研究会の定例セミナーを動画で見ました。
動画は2時間も有るので全部観るのは大変ですが、既に要旨が記事化されています:
http://cyclist.sanspo.com/175080
(講演の中で曖昧だったり不正確だったりする部分まで正確な情報を補ってある、質の高い要旨です。)
動画を見て印象的だったのは、講演者の青木さんが
- 自転車レーンは物理的な分離が必要
- 自転車にとって現在のロンドンは東京より危険を感じる環境
- ロンドンで信号を守るサイクリストが増えてきた
- ヘルメット着用義務化には負の側面も有る
- 人々の細かな振る舞いや(手で挨拶するドライバーが多い、など)
- 言葉のニュアンス("cyclists stay back"ステッカーの問題)
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一つ気になったのは、司会の小林さんから出た余談で、ニューヨークが自転車レーン(segregated bike lane)を導入するにあたって比較検討したオランダ方式とデンマーク方式のインフラについて、
2015年4月5日 訂正
{
以下に引用した発言(とその前後のやりとり)だけでは本当に理解していなかったのかどうか分からないので取り消しました。
}
動画の25分40秒辺りから
オランダとコペンハーゲンは同じだと思うんですよ。どっちの名前を付けるかだけだと思うんですね。2015年3月29日 表現を修正
{
同じではないです。
}
(どちらの国も「方式」と呼べるほど画一的なインフラを作っているわけではありませんが、)交差点周辺の典型的(or 特徴的?)な自転車通行空間の構造では、2つの国は正反対と言えるほど対照的な設計手法を採っています。
これについてはロンドンのブロガーによるコペンハーゲン視察記が非常に詳細で参考になります。
David Arditti(2013年5月22日)Lessons from Copenhagen
Comparison with Dutch cycling is inevitable. Perhaps the most obvious difference in the infrastructure concerns junctions. Typically, at junctions where all movements are allowed, the semi-raised Danish cycle tracks drop to carriageway level shortly before a junction and merge with the right-turn lane for motor vehicles. This means that if you get to the junction when traffic is flowing, you will be interacting with moving motor vehicles potentially crossing your path.
オランダの自転車環境との比較は避けられない。インフラの面で一番目に付く違いは恐らく交差点に関するものだろう。/*車の*/右折や左折が禁止されていない交差点で典型的に見られるのは、デンマーク型の半嵩上げ構造の自転車道が交差点の直前で車道と同一平面に下がって車の右折レーン/*日本の左折レーンに相当*/と合流する構造だ。これはつまり、車が流れている時に/*自転車で*/交差点に差し掛かると、自分の進路を横切るかもしれない走行中の車と反応し合う必要が出るという事だ。
それでもコペンハーゲンであれば、自転車の交通分担率が高く、車の交通量が比較的少ないので、この交差点構造でもさほど問題は顕在化しないんでしょうが、これをロンドンやニューヨークや東京に移植した場合どうなるかについては、あまり楽観的な予想はできませんね。
あ、もう一つ別のブログ記事も有るのでとりあえずリンクだけ。
David Hembrow(2010年7月12日)
The "Copenhagen Left" and merging of cyclists with cars turning right: Dangerous and inconvenient junction design in Denmark.
2015年3月25日追記
{
なぜ私がこんな細かい事を気にするのかというと、道路の世界では
悪魔は細部に宿るからです(道路構造のほんの些細な違いで利用者の行動や事故率が大きく変わる可能性が有るという意味)。
これは設計や施工を直接担う人だけでなく、政策立案や支援運動に関わる人にも意識して欲しい点です。そうしないと、過度に単純化した議論で誤った結論に至り、本来求めているものとは真逆の方向に進んでしまいかねないからです。
複雑なものを複雑なまま理解するのも時には重要だって事ですね。
}