前回見た西葛西駅前の商店街通りの続き。(2017年4月撮影)
車の交通量の少なさとは不釣り合いな広い車道を有する路線ですが、自転車レーンに似た帯状ペイントは何故か約0.6mしかありません(途中から若干広がって約0.9mになりますが)。交差点での処理も独特で、走っていて色々疑問が浮かぶ整備事例です。
西葛西周辺の自転車通行インフラのうち、このシリーズ記事で見に行ったもの。
これ以外にも何本かインフラ整備路線がある(Google Mapsを加工)
最初に、前回、前々回の記事で見た路線との位置関係を地図で確認しておきましょう。撮影した日は、まず西葛西駅の北西部の生活道路(1)に入り、そこから駅前通り(2)に出て南下。そのまま清砂大橋通り(都道450号)を渡って、今回見る虹の広場通り(3)を進み、整備区間の終端まで行って折り返し。帰りしなに交差道路のナビライン(4)をチラ見しました。
撮影中の移動軌跡をアニメーションにしてみました。
(Google Mapsを加工)
虹の広場通りは点線の流れに沿って進み、途中、気になるものがあれば立ち止まって撮影していきました。
アニメーションはGIMPのPaths ToolのStroke Path機能で少しずつ初期位置をズラした点線を12本(別々のレイヤーに)引いて、それらのコマをAnimated GIFとして出力しただけです。原始的。
自転車レーンとして安全上必要な最低幅を満たさない青色の帯ですが、
横には自転車に車道通行を指示する看板が立っています。
歩道が狭いのは確かです。
いや、流石にもうちょっと広くできるでしょ、青色の帯は。
車の交通量が少ないからか、ちょいちょい逆走が発生していました。
親水緑道(旧「長島川」)との交差点。
青色ペイントを縁石に沿って回り込ませているのが特徴的です。
青色ペイントを縁石に沿って回り込ませているのが特徴的です。
青色ペイント部分は元々停車帯だったんでしょうか?
だとしても、軽自動車ですら収まりきらない幅しかありませんが。
単路の無信号横断歩道。車道幅に十分余裕があるにも関わらず、
ドライバーに横断歩行者の優先を促すデザインになっていません。
こうでしょ。(上の写真をGIMPで加工)
2018年1月9日追記{
いや、これだと車が車道中央の縁石に斜めにぶつかった時に左手の自転車レーン・歩道側に跳ね返って危ないかな。
}
真新しい青色ペイント。この辺りは幅が若干広がって約0.9mですが、
街渠を含めても自転車レーンの最低幅員には、まだ少し足りません。
歩道とどっこいどっこいの狭さ。
ちなみに沿道は住宅地なので、路上駐車需要はほぼありません。
自転車レーンの設置環境としては恵まれている方です。
自転車レーンの設置環境としては恵まれている方です。
どう見ても青色部分の拡大余地があるんですが。
バス停部分。交差点(西葛西八丁目)の付近だけ車道の幅が広くなっています。
最近整備された様子の区間も、細街路との交差点では
青色ペイントの回り込み処理は変わらず。
青色ペイントの回り込み処理は変わらず。
2018年1月9日追記{
このような交差点で青色ペイントを車道左端の延長線上に直線的に引くと事故リスクの低減に繋がるでしょうか? Schepers et al. (2011) の研究では、
- 交差点内で自転車レーンに赤い舗装を用いた場合
- 自転車レーンを白色の{ドット、破線、または連続線}で縁取りした場合
Schepers, J. P. et al. (2011) ‘Road factors and bicycle-motor vehicle crashes at unsignalized priority intersections’, Accident; Analysis and Prevention, 43(3), pp. 853–861. doi: 10.1016/j.aap.2010.11.005.
}
虹の広場通りで最高に狂っているのがこれでしょう。
優先道路の車道上であるにも関わらず「自転車とまれ」マーク。
車線付加で突然ガバッと広がる車道。
簡易レーン整備区間の終端近くで再び唐突な車道の拡大と簡易レーンの打ち切り。
路上駐車スペースが必要だったんでしょうか?
車道幅に余裕はあるものの、ここから何故か青いペイントは歩道上へ。
画面右手、丁字路を表わす「T」マークが描かれているのも異例ですね。
道路北側の歩道。ここが全区間で一番、青色ペイントの幅が広い(笑)
が、車道をそのまま進む自転車もいます。
車道上のレーンから歩道への切り替え部分で急ハンドルを強いられるので当然ですね。
撮影はこの交差点で折り返しです。
撮影はこの交差点で折り返しです。
折り返して西葛西駅方面へ。警視庁考案のナビマークとは別の小さなアイコンが、
だいぶ擦り切れてしまっていますが微かに残っています。
縁石は段差のないスロープ形状
虹の広場通りのもう一つの特徴は、信号交差点でも自転車用の停止線が無いことです。
都内各地で通行実態を見る限り、車道を走る自転車は大抵、赤信号でも横断歩道を超え、交差点の角まで進んで信号待ちしているので、停止線の省略は、良いかどうかは別にして、自転車利用者の一般的な挙動に合致しています。
バス停でバスが止まるとこんな感じ。
ここでは車道幅が街渠込みで9.5mくらい。左右端の簡易レーンは
1.5m幅の正式な自転車レーンにすることもできそうなのに何故……。
1.5m幅の正式な自転車レーンにすることもできそうなのに何故……。
横断歩道が無い場所にも何故か押しボタンが……
と思ったら、丁字路を二段階右折する自転車用なんですね。
しかし二段階右折の待機空間は用意されていません。
メトロ東西線が見えてきましたが、ここで車道上の青色ペイントは打ち切り。
看板が立っている屈曲部の先で途切れているようですが、
ちょうど死角になっていて、打ち切り部がどうなっているのか見えません。
角を曲がると突然歩道が口を開けています。初見では判断が間に合いません。
段差の無い縁石で、一応乗り心地への配慮は感じられますが、
如何せん、視距と動線が劣悪すぎます。横断勾配もだいぶ急ですね。
上がった先の歩道は公園側の半分が「歩行者用通路」と書かれていますが、
通行人には特に意識されていないような。そのまま車道を進む自転車も見られます。
虹の広場通りは途中、西葛西八丁目交差点で
自転車ナビライン(矢羽根)整備路線と接続しています。
規制速度は30km/hと低めですが、オレンジ色のセンターラインはそのままというのがちぐはぐですね。はみ出し禁止にするなら、自転車のピクトグラムや矢羽根は車線の中央に配置しないと不合理です。
矢羽根型路面表示のアイディア元と思われるアメリカのsharrowの設置指針では、車線の幅が四輪車と自転車の安全な並走に足りない場合、sharrowを車線中央に配置することが推奨されています。そうする事で自転車を車線の中央に陣取らせ、後続の四輪車に同一車線内での危険な追い越しをしないよう促す(四輪車と自転車を一列通行させる)発想です。もちろん、これには road rage の誘発リスクやSMIDSY型の追突リスクが伴います。必ずしも正解とは限りません。
Shared Lane Markings (no date) National Association of City Transportation Officials. Available at: https://nacto.org/publication/urban-bikeway-design-guide/bikeway-signing-marking/shared-lane-markings/ (Accessed: 30 December 2017).
四輪車が対向車線にはみ出さずに自転車を追い越そうとすると
必ず側方間隔不保持になるので、適法な追い越しができない。
追い越しができないなら自転車を左端に寄せる意味がない。
しかし矢羽根とピクトグラムは左端に配置されている。矛盾。
sharrowの背景にある「自転車を四輪車と対等な乗り物として扱う」というアメリカの思想を敢えて受け入れないという判断もアリでしょう。ただ、その場合は、アメリカとは異なる運用の仕方に応じた調整(センターラインの抹消など)が必要です。
シリーズ一覧
- 自転車ナビマークの原点、西葛西の生活道路
- 西葛西の駅前商店街の自転車レーン
- 西葛西・虹の広場通りの簡易自転車レーン