2018年1月6日土曜日

双方向通行の自転車道を有する幹線道路と生活道路の無信号交差点におけるユニークな事故防止策

オランダ、ユトレヒトのBeneluxlaan(幹線道路)とAmerikalaan(ゾーン30の生活道路)の交差点にちょっと変わった事故防止策が取り入れられていました。生活道路に入る自動車の速度を抑えさせる為のランプを幹線道路の車道上に設置しています。










一般的にはランプが自転車道と平行


生活道路の出入り口を嵩上げして歩道・自転車道を平面で連続させ、そこを横切る自動車には凹凸を乗り越えさせる事で速度を抑えさせるという構造はオランダではごく一般的ですが、ランプは自転車道と平行なのが普通です。アムステルダムの Frederik Hendrikstraat を例に見てみましょう。




抑速ハンプが事故リスクを下げる効果は実証済み


このような無信号交差点での自動車対自転車の事故リスクは路面の凹凸による速度抑制で下げられることを Schepers et al. (2011) が事故統計から実証しています。このノウハウを含むオランダの自転車交通安全策を総括した Schepers et al. (2017) も要チェック。

Schepers, J. P. et al. (2011) ‘Road factors and bicycle-motor vehicle crashes at unsignalized priority intersections’, Accident; Analysis and Prevention, 43(3), pp. 853–861. doi: 10.1016/j.aap.2010.11.005.

Schepers, P. et al. (2017) ‘The Dutch road to a high level of cycling safety’, Safety Science, 92(Supplement C), pp. 264–273. doi: 10.1016/j.ssci.2015.06.005.


ランプをどこに設置するかも重要


ドライバーにどのタイミングで減速させるかという点で、ランプの位置も重要であることが分かっています。

Van Goeverden, C. D. and Godefrooij, T. (2011) ‘The Dutch Reference Study: Cases of interventions in bicycle infrastructure reviewed in the framework of Bikeability’. Available at: http://resolver.tudelft.nl/uuid:cc6d7d3b-6ebf-4ef7-a57c-2d4834bafe9d (Accessed: 4 October 2017).

p.28
As car drivers would slow down anyway when approaching the main carriageway, the deceleration was larger in case of the hump or table crossing. But the most significant effect was the location of the deceleration. Without a speed hump the cars would slow down just before the main carriageway, whereas in the case of the road hump or table crossing with the bicycle route they would slow down before crossing the bicycle route. Having the ramp 5 m before the edge of the bicycle route had significantly better effects than having the ramp just at the edge of the bicycle route. So the effect of the humps was that car drivers will slow down more and earlier.

// 以下、引用者による和訳
幹線道路に流入しようとする際、車のドライバーはいずれにせよ減速はするが、ハンプやテーブル・クロッシングがある場合は減速幅が大きかった。/* これはTilburbとHagueでの実証実験の結果を概観している章です。*/ しかし最も顕著な効果は減速の場所だった。スピードハンプがない場合、車は幹線道路の車道の直前で減速していたが、自転車通行空間を挟むようにハンプやテーブル・クロッシングが設けられている場合は、自転車通行空間を横切る手前で減速していた。ランプを自転車通行空間の端から5メートル手前に設置した場合は、ランプを自転車通行空間の端ギリギリに設置した場合より顕著に良い効果が得られた。つまり、ハンプの効果は車のドライバーにより大きく、より早く減速させる事だった。 

定規の目盛りのような部分がランプ。2箇所のランプに挟まれた部分が嵩上げされている。
出典:Van Goeverden and Godefrooij (2011, p.28)

冒頭で挙げた Beneluxlaan の場合、ランプから自転車道までの距離は約6メートルでした(右タイヤの軌跡の長さ。Google Maps の空撮画像で測定)。経験に基づいたジオメトリと言えそうです。


ところでバンプ (bump) とハンプ (hump) の違いって?


Van Goeverden and Godefrooij (2011) の中では明確な使い分けがあるようなので調べてみたら、こういう事でした。

The City of Des Moines, Iowaの公式サイトに掲載されているFAQ集より

資料内の説明(p.1)を簡単にまとめました:
  • バンプは駐車場や私道で限定的に使われる、短くて高い瘤。ドライバーに強い不快感を与えるだけでなく、高速で通過すると車を制御できなくなることもある。
  • ハンプは生活道路などの公道で普通に使われる緩やかな盛り上がりで、高速で通過した時だけ車を揺さぶる。


オランダ語メモ


この記事で紹介した2本の路線名、Beneluxlaan と Amerikalaan の後半には laan と付いています。これは英語の avenue や alley に相当します。