0.8〜1.4m
で、一方通行の自転車レーン(bike lane)のペイント幅並みの狭さです。
有効幅員の定義
今回の記事では、自転車道の「有効幅員」を、
利用者が縁石や植栽、電柱などの物体から受ける圧迫感、接触の恐怖感を考慮し、それらを緩和するために余白を差し引いた結果残る、安心して通行できる正味の幅員
と定義します。路面の物理的な幅ではありません。
利用者が受ける圧迫感、恐怖感は物体の形状や材質によって変わります。これについて日本国内には詳細な基準が無いので、オランダの自転車インフラ設計指針、CROW. (2007). Design manual for bicycle traffic. p.48 に掲載されている値を参考にします。
写真から推測した有効幅員
2015年2月に撮影された Street View には、青色の路面ペイントなどが施される前の段階の自転車道が写っています。街路灯の位置は完成時と同じに見えるので、これを元に有効幅員を推測しました。
交差点部分の拡大写真(Street View@33.8561194,132.7522059)
横断歩道のゼブラの幅を 0.45 m と仮定して推測すると、自転車道の幅員は公称通り 1.8 m です。本当に縁石ギリギリまで幅員に数えているんですね。通行空間内に街路灯が立てられている箇所では、物理的な幅員は 1.3 m にまで狭まっています。ここから安全マージンを差し引くと有効幅員になります。
CROW (2007, p.48) に拠れば、利用者に恐怖感を生じさせる距離は
- 高さ 5 cm 未満の縁石: 自転車の車体中心(タイヤ)から縁石まで 0.25 m
- 高さが 5 cm 以上の縁石: 自転車の車体中心(タイヤ)から縁石まで 0.5 m
- 街路灯の柱: 自転車とその乗員が占める範囲から柱まで 0.325 m
なお、CROW (2007, p.48) は自転車とその乗員が占める幅を 0.75 m としていますが、日本では道路交通法施行規則(9条の2)が普通自転車規格として車体幅 0.6 m 以下と定めています。後者は車体幅の上限を定めているに過ぎませんが、技術基準でもこの規格がそのまま、乗員を含めた占有幅であるかのように扱われています(日本道路協会(1974)『自転車道等の設計基準解説』p.39)。乗員の体(肘や膝など)が車体幅を超える場合は想定されていません。
また、普通自転車規格は元々、自転車道が整備されるまでの暫定措置として自転車に歩道通行を認めた際、歩行者保護の目的で設けられた規格ですから、自転車専用の通行空間である自転車道の設計根拠として用いるのは不適切です。松山市でもリヤカーを牽引する配送用自転車が使われているので、普通自転車規格への固執は合理的とは言えません。
ただし、ここでは市道中央山越線を通行する自転車の大多数が普通自転車規格に収まるものと仮定して、占有幅 0.6 m で計算することにします。
以上を元に計算すると、この自転車道の有効幅員は両側に高い縁石が設置されている箇所で約 1.4 m、それに加えて自転車道の中に街路灯が設置されている箇所で約 0.8 m です。最も狭い箇所では、心理的には自転車一台がやっと通れる幅しか無いことが分かります。
自転車利用者の恐怖感を視覚化した。
本当に必要だった幅員
双方向通行として運用する自転車道に最低限必要な幅員は、現行の日本国内基準(道路構造令 10条3項)では 2.0 m ですが、日本道路協会(1974)を読む限り、これはすれ違いの際の接触やその恐怖感を考慮しておらず、過小な値です。先に引用した CROW (2007, p.173) は、自転車交通量が少ない路線であっても 2.50 m を下限としています。
従って、
- 双方向通行で運用
- 高い縁石を両側に設置
- 自転車道の中に街路灯を設置
3.5 m
です。自転車道を片側に集約して初めて確保できる幅ですね。
逆に、車道の両側に自転車道を設けるという前提を固定して、その他の因子の調整で幅員を捻出するなら、以下の工夫が必要でした:
- 車道幅員を 1.0 m 削って左右の自転車道に割り振る(片側当たり 0.5 m 増)
- 自転車道を一方通行で運用する(必要幅 0.5 m 減)
- 歩道と自転車道の境界に高い縁石を設置しない(有効幅員 0.2 m 増)
- 街路灯の柱は歩道の中に設置する(有効幅員 0.8 m 増)
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- 松山市道路建設課(2016年08月26日)「市道中央山越線に自転車道を設置し、警察署と合同で通行指導を行います」
- cyclist(2016年09月03日)「愛媛県内初の水色で色分け「自転車道」 松山市内で9月から運用開始」