2017年8月23日水曜日

品川通りの自転車歩行者道(南側)

丁字路の横画上側に相当する側。車道が赤信号でも交差点を直進できるのが
車道から分離された自転車通行空間の強みですが、デザインは要改善ですね。

今回は、整備区間の東端、小島町3丁目交差点から西に向かってインフラを見ていきます。



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整備区間外の信号交差点


小島町3丁目交差点

車道は端まで車の通行空間として使い尽くされてしまっているので、自転車レーンなどを設置する余裕がありません。ほとんどの自転車は狭い歩道を通行しています。


歩道のキワまで建物の壁がせり出しているので圧迫感が強いです。


自転車通行空間の東側の始端


自転車インフラの東側の始端

車両乗り入れ部には過剰にボラードが並んでいるのにここには樹脂製のが1本立っているだけですね。

同じ場所を反対側から


車道から分離された通行空間でなければ、このように多様な年齢層の利用者に
使われることは無かったでしょう。




車から保護された通行空間の強さ


走行する車から構造的に保護され、


路上駐車に行く手を塞がれないという絶大なメリット。

品川通りは車の交通量・速度が比較的低めではありますが、それでも、追突されたりサイド・スワイプされる心配や、走りながら後ろを振り返る必要とは無縁な歩道上のインフラは車道より圧倒的に楽ですね。ストレスの面でも、運転タスクの面でも。



特に子供連れで自転車移動する場合は周囲に警戒しつつ子供の動きにも気を配らなければならない多重タスク状態でしょうから、車の脅威が交差点以外ではほぼ無くなるインフラの恩恵は大きいのでは?


Exit construction の無信号交差点


この交差点は珍しく歩道が同一平面で連続しています。


細街路からの見通しチェック














ゾーン30標識に関する問題


次の交差点も細街路の道幅は大して変わらないのに切り開き構造。




ゾーン標識については言いたいことが沢山あります。

日本の生活道路には高すぎる規制速度


日本が参考にした欧州のゾーン規制は「生活道路(living street)」を面的に規制するものですが、ゾーン30規制の対象となる道路は基本的に歩道があって歩行者と車が分離されています。

これに対して日本の旧来の住宅街では、歩道がなく幅員3〜4メートルも珍しくない狭隘道路ばかりで、ゾーン規制の 30 km/h が良好な住環境を脅かさない速度とは言えない場合がまま有ります。

現地に立って冷静に考えれば、こんな狭い道路で 30 km/h も出せないと分かるのに、「ゾーン30」というキーワードに囚われて、従来なら 10〜20 km/h 規制を掛けていたような道路にせっせと 30 km/h 標識を立てているのが現在の日本なのです。

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直感的に理解できない欠陥デザイン


日本のゾーン30標識は開始と終了それぞれのデザインの違いが標識下部の2文字(「から」と「まで」)だけで、遠目には見分けが付きません(もちろん平仮名が読めない外国人には通じません)。日本が参考にした欧州諸国の標識はもっと分かりやすいデザインが採用されているのに、なぜそれらに倣わなかったんでしょうね。

Tempo 30-Zone 開始標識(出典
Tempo 30-Zone 終了標識(出典


Woonerfを表わすのに使われている標識図案の不適切な流用


欧州ではゾーン30とは別に、woonerf や zone de rencontre、living street と呼ばれる規制が存在します。歴史的にはこちらの方が古く、急激なモータリゼーションへの反動で1970年代、道路を人の生活空間として取り戻す運動の中から生まれました。

これらは道路空間の中で歩行者を最大限に優遇し(道路のどこを歩いても良い、道路で遊んでもよい等)、車には細心の注意を求めるもので、車に対する規制速度は「歩く程度」、15 km/h、20 km/h などとかなり低く設定されています。

ドイツ(StVO 2013, Anlage 3
Wer ein Fahrzeug führt, muss mit Schrittgeschwindigkeit fahren.

オランダ(RVV 1990, Artikel 45
Bestuurders mogen binnen een erf niet sneller rijden dan 15 km per uur.

フランス(Code de la route, Article R110-2
La vitesse des véhicules y est limitée à 20 km/ h.

警視庁がゾーン30のモデル地区の標識として使っているのは、欧州諸国が woonerf 類を表わすのに使っている図案を流用したもので、図案が意味する規制本来の趣旨(空間の主役は歩行者で、車は歩行者の安全を脅かさないように最徐行しなければならない)を歪めるものです。

ドイツのVerkehrsberuhigter Bereich標識(出典
品川通りのゾーン30モデル地区標識

なぜこんな判断をしたのか気になって以前、警視庁の交通規制課に問い合わせましたが、担当者はこの図案が欧州でどういう意味で用いられているかを把握しておらず、原義の歪曲を指摘しても「問題ない」の一点張りで、議論が成立しませんでした。


信号交差点周辺のデザイン


車道は交差点の東側のみ右折車線が追加されています(丁字路なので)。


交差点の少し手前から歩道がさらに広くなっていますが……


自転車通行空間は手前で打ち切られ、広い歩道が活用されずに無駄にされています。
横断歩行者の滞留空間に向かって自転車を誘導するダメ設計は北側と同じ。


横断歩行者・自転車の滞留空間を避けて滑らかに迂回させるデザイン


ペイントだけだと直線的にショートカットできてしまうので植栽を追加してこうですね。
(すごく雑なコピペ)

滞留空間をこのようにポケット状に囲めば、滞留する人も通過自転車の邪魔にならないように立ち位置を意識するかもしれません。






歩道上に自転車通行空間をペイントしている割には自転車横断帯が無いです。


これだけ広大な空間がありながら自転車通行空間は途切れっぱなし。




無信号交差点の改善イメージ


またしても切り開き構造の無信号交差点。これを exit construction 化してみましょう。


自転車にとっては縁石の段差がなくなり快適に、
細街路に出入りする車にとっては段差ができて速度抑制になります。


自転車インフラ整備区間の西端。やはり単路の車止めの乱立が気になります。
沿道側の歩行者空間に自転車を走らせない為なんでしょうかね。




望遠レンズの圧縮効果ではなく、本当に電柱と車止めが至近距離に立っています。


もしこの車止めが機能的に不要なら、整備区間全体で数十万円は無駄に支出してそう。


品川通りを通るバス


路線バスが2系統と学校バスが経由しています。通るのは1時間に2〜3本(片側)で、
ひっきりなしにバスがやってくるという印象は無いですね。


自転車通行空間が途切れた先の無信号交差点


自転車通行空間のペイントが途切れた先ですが、切り開き構造ではない交差点です。


30 km/h で走って良い雰囲気の道ではないですね。
二輪車はともかく、良識あるドライバーならもっと速度を抑えるでしょう。



歩道から見た交差点

さて、この交差点、歩道から見るとこうなっています。ぼんやり走っているだけでは、そこに交差点があることに気付きにくいです。また前方に歩道橋の階段があるので、自転車は予め沿道側に寄って、車止めの左を通るのが自然に感じられます。




そこへヌッと顔を出すトラック。ここはちょっと危なそうですね。


鶴川街道との交差点


電話ボックスでかなり有効幅員を削られている歩道

歩道橋を越えてさらに西に進むと、以前観察した鶴川街道との交差点が見えてきます。

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品川通りの車道には左折専用車線が追加され、
その分、歩道も外にオフセットしています。