2017年8月30日水曜日

コペンハーゲンの駐輪空間捻出手法と目黒通りへの適用例

コペンハーゲンのØster Farimagsgade通りは、道路の大規模改修を伴わずとも自転車の通行空間と駐輪空間を両方確保できる手法の例として参考になります。

出典:StreetView @55.6909253,12.575754(2016年5月撮影)

車道端にパーキングメーター枠と同じように白線で枠を描き、前輪を止める簡易ラックを設置しています。日本でもこれと同じデザインを適用できる道路が各所に見られます。



道路全景
出典:StreetView @55.6909253,12.575754(2016年5月撮影)


自転車道と車道の間に帯状空間を挟み、そこに駐車枠と駐輪場を収めています。
この空間は横断歩行者の滞留空間や、バス停の乗降空間としても使えますね。


東京への導入可能性


Øster Farimagsgade通りの道路デザインを東京の既存の幹線道路に適用できるか考えてみます。

都道312号・目黒通りの上大崎交差点から目黒駅南口ロータリー前までの約240mにはパーキングメーターの駐車枠が、道路の両側合わせて30個ほどあります。

関連資料

2014年5月撮影

交差点や横断歩道の前後5〜6mは駐車枠がありませんが、自転車はトラックやミニバンなどの車と違って死角をほとんど生まないので、駐輪場は交差点、横断歩道の直近にも設置できるでしょう。

枠一つは長さ4.5mで、自転車なら9〜10台が収まります。仮にこの区間のパーキングメーター枠の半数を駐輪場に転用すれば150台ほどの収容能力になり、JR東急目黒ビル駐輪場の収容台数の半分に達します。

自転車の通行空間はどこに確保すれば良いでしょうか? 目黒駅の周辺の歩道は歩行者で非常に混雑しているので、歩道上に設置しても有効に機能しないでしょう(同じ312号の白金台付近はその形式で整備されてしまいましたが)。車道の一部を転用するのが現実的です。

312号の目黒駅付近は車道幅員が19.5mほどあるので、Øster Farimagsgade通りと同じように空間配分できます:

再配分の例(Streetmixで作図)

車道の一部を自転車道に転換すると車に対する交通容量は低下します。しかし東京都の2015年の道路交通センサスに拠れば、線路西側の調査地点(下り線)では混雑率が0.43(「3-2-4 交通量調査(区部)観測地点別調査票(主要地方道)」, p.401)で、車道空間が大幅に過剰です。

画面奥がセンサスの観測地点(2017年2月撮影)

また、車は空間利用効率が低い交通モードですから、車道の一部を自転車道に転換した方が却って道路全体の交通容量が(車の台数ではなく、その道路を通行する人数で)改善する可能性があります。ただ、これについては
  • 国内の設計基準が自転車道の交通容量について慎重すぎる見積もりをしている事
  • 自転車道の処理能力の上限まで負荷を掛けた実績データが国内に無い事
から、断言はできません。

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