2012年8月8日水曜日

追い越し時の側方間隔

現行の道路交通法・令・規則には
車道を通行する自転車を車やバイクが追い越す際の
側方間隔について規定が無い(*1)(*2)。



*1 自動車教習所では1.5m間隔を取るように指導されているらしい。
*2 追い越し時の徐行義務も無い。

――ところで、例えば制限50km/hの道路を
40km/hで走行するロードバイクを追い越す車両の速度は
「徐行」と言えるだろうか。

仮に、追い越す車両の義務が「側方間隔保持か徐行」の
二択(論理和)で明文化された場合、その規定は笊になる。

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自転車が他の車両に追い越される際に必要な側方間隔は
何メートルなのだろうか。心理面・物理面から考えてみる。


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まず心理面から。

自転車が自転車に追い越される場合、
心理的に危険を感じ始める側方間隔は1.5mという実験結果が有る(*3)。
しかし、車に追い越される場合は速度差が大きくなる上、
大型車の場合は圧迫感が強くなるので、同じ値が適切とは思えない。
筆者は今のところ、車道で車に追い越される場合の心理実験を探し出せていない。

*3 山中英生、半田佳孝、宮城祐貴 (2003)
「ニアミス指標による自転車歩行者混合交通の評価法とサービスレベルの提案」

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次に物理面。

突発的な事態に際して物理的に必要になる側方間隔は
実験、統計などが無いので不明だが、以下のケースが考えられる。
(値は自転車が横方向に移動する距離または占有する範囲)

0~50cm程度
  • ビル風などの強い横風に吹かれて走行ラインがブレる。
  • 大型トラックに追い越された直後、スリップストリームに吸い込まれる。

50~100cm程度
  • 左側から車道に飛び出した歩行者・自転車などを緊急回避。
  • 路肩のタクシーを右側から追い越し際に
    タクシーが右前方に急発進して、これを緊急回避。

100~150cm程度
  • 路面の溝、段差などにタイヤが挟まり、道路中央側に転倒する。
  • 前方を走る別の自転車が転倒し、道路中央側に緊急回避。

以上は非常時に消費する安全マージンなので、実際には
これに数十センチ加えた値が物理的に必要な安全マージンとなる。


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こうして考えると、車と同じ空間に自転車レーンを設置するより
柵で区切った自転車道を用意した方が省スペースになりそうな気がする。