2012年8月28日火曜日

フロントの変速不調とディレイラーの破損

以前、安価な自転車の問題点を指摘した記事からの抜粋。
一部、加筆訂正をしている。



以下の構成で、フロントの変速時にトラブルが頻発した。
クランクセット: FSA VERO Compact (50T/34T)
フロントディレイラー: Shimano FD-2200




■症状1
インナーチェーンリング側に変速させる時、チェーンが
チェーンリングを越えて車体中心側に脱落する。


対策として、
  1. 摩耗したチェーンを新品に交換した;
  2. インナーチェーンリングを34Tから42Tに交換した;
  3. フロント変速をする前にチェーンの襷掛け状態を解消する操作(*)をした
ところ、
  1. は交換直後の変速で早速チェーン脱落が起こり、無効;
  2. は脱落確率は下がったが完全には解消はせず;
  3. で確実な防止に繋がった。
以上から、チェーンの車体中心側への脱落の要因は
  • 主としてチェーンラインの歪み
  • 加えて内外のチェーンリングの落差の大きさ
の二点だと推測できた。

* チェーンがフロントで外側、リアで内側のスプロケットに掛かっている
状態を「襷掛け」と言う。(フロント内側にリア外側も同様に呼ぶ。)

この状態でフロント変速をすると、リアで内側に掛かっているチェーンが
フロント側のチェーンを車体中心寄りに引き摺り込む様に作用する。
これを防ぐ一番簡単な方法は、変速前のチェーンが
リアのどのスプロケットに掛かっているかに関わらず、
とりあえずリアを2段ないし3段アップシフトしておく事。

これにより襷掛けが解消され、
フロントを変速してもチェーンが脱落しなくなる。


■症状2
チェーンをアウターに上げる時、ガラガラ鳴っていつまでも上がらない。


対策として、
  1. インナーチェーンリングを34Tから42Tに交換した;
  2. フロントディレイラーの可動部分の(緩んでいた)ネジを増し締めした;
  3. ディレイラーを上位機種(FD-3400)に交換した
ところ、
  1. は変速性能が劇的に改善したものの、その後必要に迫られ50T/34Tに戻し、
  2. は全く改善しないばかりか、二度目の増し締めでネジが破断し、
  3. で当初の50T/34T構成のまま変速性能が劇的に改善した。
以上から、インナーからアウターへの変速がスムーズに行かない要因は、
  • フロントディレイラーの剛性不足
  • チェーンリングの歯数差(落差)が大き過ぎる事
であり、チェーンリングの変速ピンやランプ加工はさほど重要でないと推測できた。


■フロントディレイラーの破損について

増し締めによって破断したFD-2200のネジ。
このネジに関しては説明書に締め付けトルクが書かれていない。
ネジが緩む事は想定されていなかったらしい。

力の掛かる部分の回転軸と固定具をネジ一本で済ませている。
後継モデルのFD-2300ではこの部分はカシメになった。

下手の増し締め壊すに似たり、というか、文字通り壊してしまった。

ねじ山の根元附近が破断し、残りの部分はネジ穴の中に取り残された。


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FD-2200は仕様上、最大歯数差が16Tとされているが、
同2200シリーズのクランクセット(FC-2200)は
52T/39T (13T差) と 50T/39T (11T差) しか出されていない。

仕様では16T差対応を謳っているが、
実際にはコンパクトクランクセット(50T/34T で 16T差)の
変速負荷には耐えられない構造だったのかもしれない。

FD-2200の構造。負荷の掛かる回転軸をネジ一本で支える片側支持構造。
嘗てはDura-Aceもこの構造だった(7700系まで)。


FD-7900の構造。実物は持っていないので写真資料から推定。
回転軸は上下とも両側支持構造になっている。

この両側支持構造は
FD-7900, FD-7800, FD-6700, FD-6600, FD-5700, FD-5600,
FD-4600, FD-4500, FD-3500, FD-3400
で採用されており、ロードバイク向けの現行製品で
この構造に改良されていないのは最下位グレードのFD-2300のみ。
* ちなみに赤字の製品はディレイラー・ケージのネジが
カシメに変更され、メンテナンスが面倒になった。
* CampagnoloもShimanoと同様にフロントディレイラーの構造を
片側支持から両側支持に改良した。現行製品では、
Veloce の2011/2012年モデルのみが旧構造。
2013年のトリプル用ディレイラーはVeloceも両側支持構造になる。