夕焼けが綺麗な道路
(滝野川四丁目〜板橋加賀二丁目)
(滝野川四丁目〜板橋加賀二丁目)
写真の道路には妙に広大な中央分離帯が設けられています。
以前は居眠り休憩のタクシーなどが道の左右に連なっていましたが、
現在は中央分離帯にオレンジ色の樹脂製ボラードが建てられて
駐停車する空間的余裕が無くなりました。
車だけを考えるならこれで一件落着なのですが、
実質的な通行空間の幅が狭まった事で、
車道を通る自転車を車が追い越せなくなりました(*)。
* 車道片側の有効幅員3.7mに対して、
ですから、安全な追い越しには0.7〜1.8m不足しています。
- 縁石から自転車までの安全マージン:0.5m以上
- 自転車の幅:0.6〜0.7m
- 車と自転車の安全マージン:1.0m以上
- 車の幅:1.8〜2.8m(ドアミラー含む)
- 車からボラードまでの安全マージン:0.5m以上
ドライバーからすれば、自転車を追い越せそうで追い越せない
という非常に苛立たしい中途半端な幅員です。
特に、埼京線の跨線橋に向かっての登りでは、
速度が出ない自転車で車の流れが閊えてしまいます。
(それほど交通量の多い道路ではありませんが。)
同区間の歩道はそれほど狭い訳ではなく、歩行者も少ないので、
自転車は歩道を走れば良いではないかと思われるかもしれません。
しかし、
- 車道と歩道の間の植え込みが濃くて見通しが悪い
- 歩道を横切って沿道の民家に出入りする車が有る
- 歩道が広いのはこの区間だけ
(その先で自転車が再び車道に降りる時の事故リスクが高い)
失敗であると言えます。
ではどうすれば良かったのか。
道路の断面構成を、Streetmix を使って再検討してみました。
現状の断面構成
歩道も含めた道路全体で19.5mもの幅が有りながら、
自転車の通行空間を確保できていません。
一方、車道も歩道も実際の交通需要に対して
過剰に空間が配分されています。
さらに、歩道上の植樹帯の茂みは歩行者の姿を隠すほど高く
(図では足元くらいの高さですが、実際は1.5mくらいです)、
信号の無い横断歩道では歩行者が安全に横断できません。
(通過する車も横断歩道手前で徐行していません。)
暫定的な空間再配分
現状の街渠・縁石の位置を変えないまま、
とりあえず自転車の通行空間を確保してみました。
自転車レーンはボラードで区切っています。
ボラードが無ければレーンが路駐車両に
塞がれてしまう事が予め分かっているからです。
しかし、沿道の民地から出て来る車からは
濃く繁った植樹帯が死角になり、車道の端を走る
自転車と出会い頭衝突するリスクが残っています。
また、自転車レーンの2.1mという幅員も
自転車同士での追い越しには狭過ぎます。
抜本的な空間再配分
そこで、更に改良を加えました。
自転車レーンは自転車同士での追い越しが
安全にできる3.0m幅に拡大しています。
車のレーンは元々3.7mだったのを3.0mにまで縮小しています。
この道路路線の性格は幹線道路(arterial road)というよりは
地区内道路(distributor または access road)に近いので、
車にスピードを出させない事が重要だからです。
死角を生んでいた歩道上の植栽は撤去し、
道路の中央に緑地帯として纏めています。
この方が木々も伸び伸びと枝を広げられるので、
都市景観としての成熟度や格が高まります。
横断歩道の処理
信号の無い横断歩道では中央の緑地帯を交通島として使い、
歩行者が左右の安全確認を一度にする必要を無くして
横断時の安全性を高めます。
(もちろん、緑地帯には視界の悪さに繋がる植栽、
特に樹高1〜2mの低木は植えてはいけません。)
自転車レーンと車道の間にも交通島を挟むと
横断歩行者の安全性は更に高まります。この場合、
車のレーンを道路中心に湾曲させて空間を捻出します。
これは副次的には横断歩道の直近で車にハンドルを切らせる事で
通過速度を抑制する効果も期待できます。
バス停の処理
この道路には路線バスが通っていますが、
バス停が設置された側の車線を中央に大きく寄せる事で
このように自転車レーンと車道の間にバス停を設置する事もできます。
これなら自転車がバスの脅威に晒されたり、
停車中のバスに進路を塞がれる事が有りません。
こうすれば自転車は安心して自転車レーンを走れるので、
道路改良後の自転車の歩道走行率は劇的に下がるでしょう。
バス乗客も安全に乗り降りできますし、安心して歩道を歩けます。
自転車の為に安全かつ安心な専用の通行空間を用意すると、
このように他の道路利用者にとっても利点が有ります。