2015年10月29日木曜日

ロードバイクのタイヤの空気圧と沈み量

2015年10月30日 加筆と訂正
2015年10月31日 加筆と訂正



荷重を加えた時のタイヤの沈み量が空気圧に応じてどう変化するか実測しました。



実験に使った製品
  • タイヤ Continental Grand Prix 4000s 700x23c(*1)
  • ホイール Shimano WH-RS21(リム幅は21mm)
  • チューブ Continental Race 28 [700c]
  • 自転車 khodaa bloom (2010) Farna F 1.0 S-2(現構成での実測重量 9.3 kg)

測定方法
  1. 後輪をターボ・トレイナーに固定した
  2. 前後の車軸がほぼ同じ高さになるように前輪を木箱の上に載せた
  3. TNi ハイプレッシャー・フロアポンプでタイヤの空気圧を調整した
  4. 前輪タイヤの接地部分を横からデジカメで撮影した(*2)
    (乗員荷重条件では自分が自転車に跨がり、セルフタイマーで撮影した(*3))
    *1 ただし、摩耗インディケイターがほぼ見えなくなるくらい磨り減っています。
    *2 レンズの焦点距離は35mm版換算で82mmです。
    *3 サドル、ペダル、ハンドルの3点に体重を掛けましたが、前後荷重配分は厳密には統制できていません。


    前輪荷重を推定する為の荷重配分の測定
    1. 後輪をターボトレイナーに固定した
    2. 前輪を体重計に載せた(前後の車軸はほぼ同じ高さ)
    3. 【車体+乗員】条件では自分が自転車に跨がった
    4. 体重計の指示値を手に持ったデジカメで撮影した

    前輪荷重の測定結果
    条件前輪荷重(割合)
    車体のみ3.9 kg (42 %)
    車体+乗員 サドルのみに体重を掛ける15.4 kg (28 %)
    ペダルのみに体重を掛ける24.4 kg (44 %)
    サドルとペダルに体重を掛ける21.9 kg (40 %)
    サドル、ペダル、ハンドルに体重を掛ける24.3 kg (44 %)


    タイヤ沈み量実験の「車体+乗員」条件では、サドル、ペダル、ハンドルに体重を掛けたので、前輪荷重割合は44%辺り(24kg強)だと思います。ああ、実際の荷重も一緒に記録すれば良かった。


    以下、記録画像の続き。タイヤの前に置いた紙の目盛りは補助線込みで 5 mm 刻みです。




























    下表は、ノギスで測定したタイヤ幅と、デジカメ画像上で測定したタイヤ高さ(木箱の上面からリムのブレーキ面の外縁まで)です。タイヤはもう間もなく寿命が来る物なので、長期間の使用でゴムが伸びており、規格の幅(23 mm)より広くなっています。

    タイヤ高さ (mm)
    空気圧 (bar) タイヤ幅 (mm) 荷重:車体のみ 荷重:車体と乗員
    8.0 24.4 23.0 21.9
    7.0 24.3 22.9 21.4
    6.0 24.3 22.7 21.4
    5.0 24.1 22.4 20.9
    4.0 23.9 22.3 20.4
    3.0 23.8 21.7 19.7
    2.0 23.5 21.2 18.1
    1.0 23.2 20.1 15.0


    各空気圧での実験で設定した最大空気圧(8.0 bar)でのタイヤ幅を基準に、タイヤ沈み量の割合(= tire drop)を求めました。
    • タイヤ沈み量 = 無荷重でのタイヤ高さ − 車体・乗員荷重状態でのタイヤ高さ
    • タイヤドロップ = タイヤ沈み量 ÷ 各空気圧 8.0 bar でのタイヤ幅
    但し、無荷重状態は撮影していないので、
    • 空気圧 8.0 bar
    • 荷重 車体のみ
    のタイヤ高さを無荷重での値と見做しています。

    下図が結果です。



    最適なタイヤ空気圧は、このタイヤドロップが15%になる圧力だとの記事が有りますが、

    Frank Berto (2006) All About Tire Inflation, p. 2 
    Tire Drop is the distance that the tire sags under the weight of the rider and the bike. For a given tire size and load, the optimum inflation pressure for comfort and rolling resistance produces a Tire Drop of about 15% of W (the Section Width) or about 20% of H (the height from the ground to the rim).
    今回の実験でタイヤドロップが 13.8 % だった 3.0 barでさえ、画像で見ただけでもちょっと不安になるくらいタイヤが沈んでいますね(というか、3 bar ってママチャリのタイヤ並みです)。

    実際、15%で運用するとタイヤの感触が柔らかすぎたりリム打ちパンクしやすくなる、と海外の掲示板で報告されています。

    Bike-Air.com (2013) 15% drop FORMULA for tire pressure as a function of width and load
    Looigi 2013-10-01 14:27
    tl;dr mainly because 15% tire drop on 23 and 25 mm road tires doesn't work for me. Too squishy, especially in the front when standing. Also prone to pinch flatting.

    そもそも何を以て15%を“optimum(最適)”だと言っているのか、Berto (2006, p.2) は根拠を示していないので、あまり参考になりません。


    また、Berto (2006) を引用した別の雑誌記事には、

    Vintage Bicycle Press (2006) Bicycle Quarterly, Vol. 5, No. 4
    Depending on your bike’s weight distribution, achieving the optimal 15% tire drop may require different pressures in your front and rear tires.
    と、前後の荷重配分に応じて空気圧を調整する必要が有ると書かれていますが、その続きに書かれている荷重配分の調べ方は、水平な路面上で静止した状態しか考慮しておらず、現実のライドで登りや下り、加速やブレーキによって荷重配分が大きく変化する(前10:後0やその逆も有り得る)事を考慮していません。

    転がり抵抗と乗り心地・トラクションの最適バランスとは別に、路面の段差にヒットした時のパンク性能も考えなければいけないので、“tire drop = 15%”という目安に頼るのはちょっと危なそうですね。



    外部サイトの関連記事


    2015年12月31日追記{
    空気圧の違いによる乗り心地の変化を、実際に外を走って主観評価しました。

    評価手順
    • TNi ハイプレッシャー・フロアポンプで前後タイヤとも同じ空気圧に調整した。
    • 家の近所の生活道路(様々な路面状態)を同一ルート、同一方向で低速走行した。
    • 空気圧は7.0 barから1.0 barずつ下げてそれぞれの空気圧での乗り心地を評価した。
    • 荷重条件は自転車が約9.5kg、乗員が約45kg。
    • タイヤは前後ともContinental GP4000s 700x23c(限界まで摩耗)。
    • パッドの有る専用ウェアではなく普段着。

    結果
    • 7.0 bar ガチガチに硬い。段差通過時はサドルに座っていられない。
    • 6.0 bar 少し衝撃の角が取れたがまだ硬い。
    • 5.0 bar かなりまろやか。座ったまま段差を通過できる。操縦性も悪くない。
    • 4.0 bar 柔らかいが、操縦性にややもっさり感が有る。
    • 3.0 bar タイヤがフニフニするのを感じて不安。大きな転がり抵抗を感じる。
    最後に4.5 barにして、幹線道路での高速走行も含めた試走をしましたが、5.0 barの時の感触とほぼ変わらず、特に問題ありませんでした。

    やはりタイヤ空気圧は実際に試さないと駄目ですね。乗員の体重だけでなく路面状態やフレームの振動吸収性などにも左右されますし。

    それと、自分は機材の違いについてかなり鈍感な方だと思っていましたが、今回のように短時間に次々と空気圧条件を変え(かつその他の条件を揃えて)立て続けに試行すると、意外と違いが感じられるという事が分かりました。