2015年12月24日木曜日

多摩湖自転車道

多摩湖自転車道

東京では稀な質の高い自転車ルート。
現状の利用実態や道路構造を観察し、改善の可能性を考えました。



Tokyo By Bikeの多摩湖自転車道の実走レポートに触発されて私もこの前のよく晴れた日に行ってきました。

関連ページ
Tokyo By Bike(2015年12月15日)"Cycling Tokyo's Tamako Cycling Road"(2015年12月24日閲覧)


遊歩道と自転車道が分かれていますが、遊歩道部分はあまり使われておらず、
自転車道部分で歩行者と自転車が混在しています。

それぞれの幅員を巻き尺で実測した所、
  • 遊歩道は(最近改修された区間では)2.0m
  • 自転車道は3.0m
で、自転車道に比べて遊歩道が極端に狭いわけではありません。入口の車止めの邪魔さ加減や横断歩道からのオフセット量もそれほど違いませんが、はて、何故だろう?

これは"design vs user experience"(設計者の意図と利用者の行動が食い違っている状況)の一事例と言えますが、なぜ歩行者が自転車道を選好するのか、その判断プロセスが見えにくく、興味深い例ですね。

この問題に関して、横断面構成が
歩道|自転車道
になっている事が問題で、
歩道|自転車道|歩道
にすれば良いとの意見が有りますが、
歩道|自転車道
の横断面構成はアムステルダム中央駅で今年11月21日に開通した歩行者・自転車用のトンネルでも採用されており、こちらでは問題なく両者の分離ができているので、決定的な要因とは考えにくいです。

参考ページ
Bicycle Dutch(2015年11月24日)"Amsterdam Central Station Tunnel"(2015年12月24日閲覧)

2015年12月30日 加筆・訂正{
それに、限られた幅員の中で歩道を左右に分ける
歩道|自転車道|歩道
のレイアウトにしてしまえば、(歩道をまとめて確保するより)歩道の幅が狭くなってしまいますから、歩行者が横に並んで(例えば親子が手をつないで)歩くのが困難になるかもしれません。

歩行者が自転車の空間を選好する背景には、何かもっとディテールの部分に要因が有るはずです(縁石で高低差が付けられていない、とか)。



自転車道部分の幅員は3.0m

3.0mという幅員は、2台が並走し、且つ別の1台とすれ違いするにはちょっと狭いです。実際、現地には並列禁止の看板が立っていました。(快適に並走するには3.5m辺りが最低ラインでしょうね。)

日本では自転車の並走は違法行為であり、取り締まるべきものという価値観が強固で、並走可能性を考慮したインフラは滅多に整備されませんが、横に並んで会話しながら移動できるという事は、人の移動行動の社会的側面を考えれば、極めて重要な要件です。

警察や自治体の担当者は、自分の青春時代、登下校時の友人との会話が人生をどれほど豊かにしてくれていたかを忘れてしまったんでしょうかね?

自転車の並走は(それが安全にできる交通状況であれば)実に良いものです。

私が思うに、危険を生じさせたり他者に不利益をもたらさない限り、楽しい事、幸せな事を認める事が社会正義です。

日本の現行の道路交通法(19条、63-5条)は、そうした幸福な体験を抑圧する理不尽で無粋な規定だと思いますよ。

過去の関連記事
自転車の並走に関する法律の国際比較


車道との無信号平面交差部分

多摩湖自転車道は(都心側起点から2、3ヶ所を除き)、ほぼ全ての無信号平面交差で自転車道側に車止めが設置され、交差道路側の車を優先する構造になっています。(この車止めさえ無ければどんなに快適なルートになる事か……。)

しかしこの日は複数の交差点で車から道を譲られました。考えられる要因は、
  1. 自転車道が盛り土で高くなっており、車に対して大型ハンプとして機能している。
  2. 自転車の通行量が車よりも圧倒的に多く、自転車を優先する雰囲気ができている。
辺りでしょうか?



信号制御されている交差点
車道の制限速度は30km/hと低めなので、
オランダやドイツであれば無信号の「ゆずれ」規制でも行けそうです。

車椅子用のスロープ縁石が使われています。

多摩湖自転車道の全区間がこうなっているわけではなく、小平市周辺のみで採用されているようでした。尤も、自転車道をスロープで車道に滑らかに繋げればこんな工夫はいらないんですけどね。

参考ページ
Bicycle Dutch(2012年12月6日)"Who else benefits from the Dutch cycling infrastructure"(2015年12月24日閲覧)


自転車道の縁ギリギリまで枝を伸ばす植栽

剪定の直前の時期には自転車道の建築限界を侵してきそうですね。日本の道路はこのように植栽を余裕無くギュウギュウに詰め込む傾向が有ります。利用者にとって通行空間を心理的に狭く感じさせるので、このような植え方は望ましくありません。


小平駅の直前
ここでも全ての歩行者が自転車道部分を選んでいます。
遊歩道部分は狭く、曲がりくねって見通しが悪く、路面は石畳で凸凹しています。
この環境であれば歩行者から選ばれないのも無理はないですね。

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ここで一旦多摩湖自転車道を離脱し、小平駅周辺の市街地の自転車インフラを見学しました。それは別記事で。

関連記事
小平駅周辺の自転車インフラ

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自転車道に復帰しました。画面奥は小平駅前。

振り返って多摩湖方面
他の区間なら遊歩道が設置されるであろう位置に駅前駐輪場が有ります。

自転車で犬の散歩
通行空間の安心感(subjective safety)の高さを示す一つの指標と言えます。

駅周辺は自転車道に面して商店が幾つか立地しています。
(樽型歪みをGIMPで補正)


石畳の遊歩道部分が三角コーンで塞がれています。

剪定だけかと思いきや、

いろいろ改善されるようです。
ただ、既に改良済みの他の区間の様子を見る限り、
ここの改修工事が自転車と歩行者の分離に効くかどうかは不透明ですね。

西武20000系

多摩湖に着きました。


空気が透き通っていて富士山がよく見えます。

多摩湖を一周
ママチャリで行ったので自転車道の細かな起伏が意外と脚に応えて、
距離的には倍の入山峠にロードバイクで往復した時より疲れました。

吊り橋のケーブル固定部分

割りピンでかい!