2017年7月28日金曜日

国道16号・相模原市の自転車道 (2) 単路の構造




バス停部分は島式でバス降車時の自転車との衝突を防いでいます。

が、自転車道はバスベイと乗降空間に二重に押しやられてかなり屈曲しています。


撮影時点では植栽が一切なく、車道から自転車道・歩道の見通しは良好でした。
(今どうなっているかは未確認)




バス停


もしバス停に風除けパネルが設置されていたら、その圧迫感から自転車道の有効幅員が大きく削られていた所ですが、ここは横断防止柵のみ。


歩行者の横断箇所にはゼブラではなく破線が引かれています。

この様式は、オランダで横断歩道の代わりに使われるkanalisatiestreep(channeling stripe)に良く似ています。

オランダに住む人のブログに拠れば、近年横断歩道のゼブラ(zebrapad)を撤去してkanalisatiestreepに転換する例が増えており、車道を渡る子供の安全が気懸りとの事です。前者は法的に歩行者が優先で、車が止まらなければならないのに対し、後者は法的な効力が無く、歩行者は車の切れ目を狙って渡る事になるからです。

自転車の場合、郊外のラウンダバウトでは自転車側に優先通行権を持たせない方が事故リスクが低い事が分かっており、自転車の横断箇所は同様に破線で示されています。

ただ、それが自転車と歩行者の関係にも当て嵌まるかどうか…。


切り開き構造(車道が平面で連続している構造)の交差点

歩道の沿道側の端に横断防止柵が立てられています。横断位置を車道寄りに制限し、歩行者と車の出会い頭事故を防ぐ意図でしょうが、事故防止や被害軽減を意図しているなら、脇道から出てくる車の速度を抑える手段を取らないのは不合理です。


exit construction類似構造(歩道・自転車道が平面で連続する構造)の交差点

こちらの交差点(車両乗り入れ部)は車に縁石を乗り越えさせる構造で、その速度を効果的に抑制できます。このような交差点では車と自転車の事故リスクが低い事が既に分かっています。

  • Schepers, J. P. et al. (2011) ‘Road factors and bicycle-motor vehicle crashes at unsignalized priority intersections’, Accident; Analysis and Prevention, 43(3), pp. 853–861. doi: 10.1016/j.aap.2010.11.005.


「自転車とまれ」ではなく「自動車注意」

今まで日本では、法的には自転車側に優先通行権が有っても「自転車とまれ」の法定外表示が濫用されてきましたが、やっとまともな表示が現われましたね。


自転車道より車道の方が路面が高く、横断方向に勾配が付いている。


脇道から出てくる車にとっては約14%の急な登り勾配です。


自転車道の沿道側の端で勾配を測ると、左の縁石に向かって


4.5%の下り勾配です。


雨水は沿道側に集まるようです。


歩道上で水平になります。


脇道から出てくる車のドライバー視点


車よりも歩行者・自転車が優先である事がデザインで明確に表現されています。


だいぶ暗くなってきました。

これだけ暗くなっても車に撥ねられる心配をせずに走れる自転車道は、移動の自由に直結するインフラと言えますね。


共同溝の地上機器は歩道と自転車道の間に設置されています。


車止めの寸法を測りました


高さは80cm


基部のコンクリートが30cm角で、


車止めを除いた部分が8cmなので車止めの直径は14cmくらい?


車道と自転車道の間の緩衝帯が、場所によってはやや狭い

もしこの緩衝帯の幅が5mほど有れば、

  • 国道16号から脇道や沿道駐車場に入ろうとする車のドライバーは、国道16号の後続の直進車を気にせず、落ち着いて自転車道・歩道の安全確認ができる。
    また、車体の前端が自転車道に差し掛かる時の進入角度が直角に近くなるので、ミラーを通さず窓から直接左右を確認できる。
  • 脇道や沿道駐車場から国道16号に出ようと待機する車が自転車道を塞がなくなる。
  • 自転車利用者の排気ガス曝露量が下がる。

というメリットが生じます(車の全長は軽乗用車で3.4m、小型乗用車で4.2〜4.7m)。


自転車道を塞いだ軽乗用車が余計な事故リスクを生んでいる例(3分30秒から)

国道16号には自転車道と歩道の間にも緩衝帯が有りますが、これを車道側に移して一つの幅広の緩衝帯に統合すれば、その構造が実現できました。各要素の正確な幅員が資料で分かる富士見地区を例に説明します:

相武国道事務所による富士見地区の空間配分(淺井 (2016) による)

緩衝帯を統合して5m幅を確保した例。総幅員は同じ。

緩衝帯の幅が2〜5mの場合に事故リスクが低いとの研究(再掲):
  • Schepers, J. P. et al. (2011) ‘Road factors and bicycle-motor vehicle crashes at unsignalized priority intersections’, Accident; Analysis and Prevention, 43(3), pp. 853–861. doi: 10.1016/j.aap.2010.11.005.


相武国道事務所による空間配分(部分拡大)

この配置にも、沿道に出入りする車のドライバーが自転車と歩行者を別々のタイミングで確認できるという利点が考えられます。実証研究に期待したい所ですが、脇道・沿道駐車場からの流入車両が自転車道を塞ぐ欠点は変わりません。


緩衝帯を一箇所に統合した例(部分拡大)


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