自転車関連の論文を読みました。
内容を掻い摘んで紹介しながら
感想をダラダラ書いていきます。
自転車の走行空間等の違いによる旅行速度の差異に関する分析(PDF)
2011年に発表された論文です。
本論では,自転車施策の推進に活用することを念頭に,
自転車の旅行速度に着目して研究を行った.
道路幅員や,交通量,信号等の外的要因の影響を
受けない状況下における旅行速度(自由旅行速度)と,
実際に様々な外的要因の影響を受ける
公道上における旅行速度との2種類の調査を実施した.
自転車で或る程度長い距離を走行した時の旅行速度を、
試験場の周回コースと街中のそれぞれで調べたそうです。
旅行速度とは、信号待ちや休憩時間を含めた
総移動時間で割った移動距離の事です。
なお,調査における走行距離は,どちらも5~6kmと長い距離とした.
短かっ! 「長い距離」って言ったら100km以上でしょ。
(と言うと、「1000km以上でしょ」と言う人が出て来そうだ。)
実走調査における被験者については,10~50歳代の年代ごとに
男女各1人計10人に協力をいただき調査を実施した.
なお,被験者の選定条件としては,日頃から自転車を
利用されており,軽快車(ハンドルが曲がっている自転車.
通称:ママチャリ)に乗車していること.
さらには,一般的な自転車利用者の旅行速度を把握するため,
サイクリングを趣味としていない方を選定した.
「ハンドルが曲がっている」って、
ロードバイクのドロップハンドルも曲がってますけど。
この調査で使用した自転車は,(財)自転車産業振興協会の
報告による国内の販売動向6)より,最も販売実績のある
軽快車(ギアなし)を採用した.
さらに,近年,注目を集め,今後の普及が見込まれる
電動アシスト付き自転車(以下「アシスト車」という.)についても
軽快車と比較するため実走調査を行うこととし合計2車種とした.
「近年注目を集め」たと言えば、震災後に増えた自転車通勤で
需要が伸びたクロスバイクでしょ。
今後、車での移動需要を自転車に置き換えていくなら、
主役になるのはクロスバイクなんだから、
歩道用に開発された軽快車・アシスト車
だけ調べたのでは片手落ちです。
調査の方法は,GPSを活用した市販の自転車速度計を
それぞれの自転車に装着し,試験走路を1周,
合計2周していただいた.なお,被験者が速度計を見て
運転をしないように,計測機器の画面は見えないように工夫した.
「GPSを活用」というのが曖昧で良く分かりません。
普通のサイクロコンピューターはスポークに取り付けた磁石を
センサーで読み取る方式で、有線式なら誤計測は殆ど無いのですが、
GPSのみで速度を算出する方式だと、
ビルの谷間や高架橋の下などで
恐ろしい速度が記録される事が有ります。
以前GPSロガーで移動記録を付けていた時に、
とある下り坂で70km/h近い速度が記録された事が有りましたが、
私の脚力と体重でそんな速度を出すのは物理的に不可能です。
平均自由旅行速度は軽快車16.8km/h,アシスト車18.6km/hとなり,
2km/h程度アシスト車の速度が速くなった.一方で,
最大値は軽快車,アシスト車ともに21.7km/hと同値となった.
遅い。
ロードバイクを駆る諸兄なら35~40km/hくらいでしょうか。
スタート地点からの累加距離が増加しても速度低下は見られず,
スタートから1500mまでと,後半の4500mから6000mまでの
各1500mにおける500m区間旅行速度について,
有意な差があるかt検定を行った結果,
軽快車でt=-1.40,アシスト車でt=-1.35と,
ともに有効水準5%において有意な差はないとの結果を得た.
5~6kmでヘタれる人なんて居るんでしょうか。
どうせ実験するなら20kmくらいでも良かったのでは?
実際に様々な外的要因の影響を受ける公道上において,
2.の外的要因の影響を受けない状態と比べ
自転車の旅行速度がどのように変化するかを把握するため,
東京都江東区の亀戸駅周辺に設定した
図-8に示すコースで実走調査を実施した.
(図は論文のPDFから引用)
よりにもよってあの亀戸か……。
使用した自転車及び計測機器は,自由旅行速度調査と
同一のものを使用し,かつ被験者についても同じ方に協力を得た.
計測機器が何なのか気になります。
GSP式だと建物に遮られる場所で測位精度が下がりますし、
磁石式でも無線式だと街中の電磁波を誤受信する事が有ります。
調査ルートは,様々な自転車通行空間で
データを収集することを目的とし,
自転車道,自歩道,車道(細街路を含む)を
通行する1周約5kmのコースを設定した.
なるほど、そういう目的なら亀戸は適地ですね。
公道での旅行速度は,軽快車もアシスト車も,
ともに9.6km/h程度という結果になり,
外的要因による影響がない状態と異なり,
アシスト車による速度向上が見られていない.
この原因については,今後,詳細な分析が必要と考える.
亀戸みたいな平らな土地では顕著な差は出ないでしょう。
アシスト車が本領発揮するのは登り坂です。
それにしても9.6km/hとは遅い。ロードバイクなら
信号や一時停止を遵守しても17km/hです。
信号交差点部は,全体の15%程度の延長しかない
にもかかわらず,信号交差点の通過にかかる旅行時間は,
全体の30~40%を占めていることが分かった.
信号って本当に時間食うんですよね。
特に都心の大通りだと信号サイクルが長くて長くて。
二段階右折なんかしたらとんでもないロスです。
あのサイクルを短くできないのは、横断歩道が長くて、
渡る時間を考えると歩行者用信号の青を
あれ以上短くできないからだそうです。
横断歩道が長いという事は、車道の幅が広いという事なので、
信号サイクルの長さの原因は広過ぎる車道に有ります。
で、広過ぎる車道が何故造られたかというと、
車を利用する人が多過ぎるからです。
走行空間別の旅行速度の結果を図-12に示す.
なお,いずれも軽快車のデータを使用する.
これより,どの走行空間においても自由旅行速度より
速度が低下していることが分かる.
(図は論文のPDFから引用)
え? 自転車道で28km/h出した人がいる?
変速機の無い軽快車で、下り坂でもないのに28km/hとは……。
周回コースでおとなしく走っていた人が
あの狭い自転車道で突然爆走するとは思えませんが。
誤計測かな。