「叫ぶ教皇の頭部のための習作」
フランシス・ベイクン(Francis Bacon)の作品の邦題ですが、
誤訳の臭いがプンプンします。誰も気にならないんでしょうか。
個人的には、絵自体がどうでもよくなるほど、
この邦題には心を掻き乱されますが。
「走る犬のため」って、
完成した絵を走っている犬に渡すのでしょうか。
渡す前に走り去ってしまうと思いますが。
「教皇の頭部のため」って、
完成した絵を教皇の頭部に捧げるのでしょうか。
それ、刎ねられて胴体から分離している事が前提になってませんか?
原題はそれぞれ
Study for a Running Dogのようですね。
Study for the Head of a Screaming Pope
この"for"を「のための」と訳した、と。
お前は機械翻訳か。
英語の"for"と日本語の「ため」の意味のずれを
まるで考慮していません。
原題の"for"は「~を題材にした」という意味でしょうが、
日本語の「ため」が形成する副詞句・従属節の意味は、
- (行為や事態の)原因、理由。
例:「繰り返し振動のため疲労破壊した」、「豪雨のため運休する」
- (行為や事態の)目的、用途。
例:「本編はNG集を楽しむために有る」、「放牧のための土地」
- (物品の)授与相手。
例:「彼女のための指輪」
で、どれも原題の意味と一致しません。
日本語としてまともに読めるように直すなら、
「習作: 走る犬」
「習作: 叫ぶ教皇の頭」
これで良いんじゃないかな。
(「:」の代わりに「――」でも良いですが。)
ちなみに、クラシック音楽業界でも
【平均律】クラヴィーア曲集といった、無知に基づく誤訳が有りますが、
"for"に関しては、
2台のチェンバロのための協奏曲などと直訳しても日本語として意味は通っています。幸運にも。
フルートとヴァイオリンのためのソナタ