2015年8月27日木曜日

歩道の構造要件と車道の規制速度

警察庁(2011(平成23)年)『交通規制基準』の最高速度の規制実施基準の表に、

p. 119 (pdf p. 122)
  • 「基準速度を下方補正するケース」として「歩道が設置されていない」
  • 「基準速度を上方補正するケース」として「歩道が設置されている」
との記述が有りますが……

下井草駅前



現実には、
  • 嵩上げ+縁石による防護
  • 車道と同一平面+乱横断防止柵による区分
などの別を問わず、幅が1mに満たないような歩道が散見され、歩行者同士がすれ違えず(または横に並んで歩けず)、片方の人が車道に降りて歩かざるを得ないケースが(特に雨の日で傘を広げている場合は)見られます。

車と歩行者の通行区分が現実には崩壊している訳ですから、規制速度は30km/hや40km/hでは高すぎで、歩道は無いものと見做し、20km/hや(『交通規制基準』では端数を認めていませんが)15km/h(*)などに設定するのが適切だと、一利用者として感じます。

* 端数を含めるとドライバーが規制速度をより意識するようになるのではと私は想像していますが、それを実証した研究は見付けられないでいます。

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この写真の撮影時、バスの風圧が結構怖かったです。
普通に歩道上に立っていただけですが、通過車両との位置関係で言えば、
駅のプラットホームで黄色い線の外側に立っているようなものです。


「歩道」は、道路構造令の2条1号では
専ら歩行者の通行の用に供するために、縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分をいう。
と定義されていて、その構造要件として同令11条3項で
歩道の幅員は、歩行者の交通量が多い道路にあつては三・五メートル以上、その他の道路にあつては二メートル以上とするものとする。
と定められていますが、現実には、車が双方向通行できるようにする為などの理由で歩道の幅員が犠牲になっている例が有り、制度の想定外(かどうかは分かりませんが)事象が多発しています。

そうした猫の額ほどの歩道の存在を盾に30km/hや40km/hという規制値を設定してしまうというのは、プログラムで言うバグのようなものだと私は感じていて、そのデバッグには、構造令11条の幅員要件を2条の定義の中に組み込んでしまうのが良いのではないか、つまり、一定の幅員に満たない歩道は、最初から歩道とは認めないという制度にすれば良いのではないかと思います。(それはそれでまた別の所で不具合を生みそうですが……。)


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それとついでにもう一つ、『交通規制基準』の「規制速度決定方法」には「歩行者交通量 多い/少ない」(p. 118, pdf p.121)という項目も有りますが、私はこのアルゴリズムの安易な利用には反対です。

なぜなら、規制速度が高く設定され(る事で車の実勢速度が上昇す)れば、歩行者の安心感が下がり、歩行者がますますその区間を通らなくなるという悪循環に繋がりかねないからです。(車の実勢速度が高い事で自転車が車道を忌避し、歩道通行率が上がるといった間接的な悪影響も考えられますね。)