2013年7月1日月曜日

アクセント句独立の接頭辞と音韻制約の鬩ぎ合い

テレビコマーシャルで
非現実的

ひっげんじつてき
と発音しているのを耳にしました。




「非」は連結した後部要素とアクセント句が統合される場合も有りますが、

非+効率=ひ[こ]うりつ
非+国民=ひ[こ]くみん
([は音程の上昇、]は下降の位置)

統合されない場合も有りますね。

非+現実的=ひ]げ[んじつてき

で、この場合、後部要素と一つのアクセント句にまとまれず、
孤立して浮遊している「非」は不安定だからか、

ひーげんじつてき

と母音を延ばして(音節を重くして)発音される事が多いですが、
音節を重くする手段は何も長母音化だけではありません。
長子音化でも良いはずです。

ひっげんじつてき

ところが日本語には有声の長子音を避けたい
という制約が働いています。

bed ベッド(実際の発音は「ベット」)
bag バッグ(実際の発音は「バック」)

コマーシャルのナレーターは
この制約に打ち勝ったんでしょうか。

いや、でも、「げんじつ」の「げ /ge/」の直前が/i/だから、
/g/に備えて舌を口蓋に向けて持ち上げたら、
思いのほか早く接触してしまい、意図せず/g/に
移行してしまったという線も考えられますね。