これが現状
これが改善案
それでは順を追って見ていきましょう。
山手通り(手前〜奥方向)と新目白通り(左右方向)の交差点
自転車横断帯の延長線上が横断歩行者・自転車の滞留空間になっています。これでは自転車の動線が大きく乱れ、歩行者やドライバーや他の自転車利用者がその動きを予測しにくくなります。予想外の動きは認知や判断のエラーに繋がり、エラーは事故に繋がります。なのでこの構造は駄目です。
望ましい空間配分
滞留空間と通行空間を明確に分ければ、歩行者、自転車、車が互いの動きを予測しやすくなると期待できます(が、実証研究が有るのかどうかは知りません)。自転車横断帯は現状より左、水色の帯の辺りにオフセットした方が良いのではないでしょうか。
左折車と自転車横断帯の位置関係
自転車横断帯を左にずらす理由はもう一つ有ります。現状では、車が自転車横断帯に差し掛かる時、自転車と車の動線の交差角度が直角にならず、ドライバーから自転車が視認しにくいと考えられるからです。
私は車を運転しないんで断言できませんが、この角度だと自転車がドアミラーにも映らないし直接目視もできない死角に入るんじゃないでしょうか? だとしたら認知エラーの原因になりますよね。
自転車横断帯をもっと左にずらせば車の角度が直角に近付いて、見落としが減ると期待できます……が、
大きな半径で曲がる左折車
この交差点は流出側が2車線有るので、左折車は車道中心寄りのレーンに入るライン取りをすれば、速度を落とさずに大きな曲線半径で曲がれてしまうんですよね。自転車横断帯をずらしても、これでは交差角度が浅いままですし、車の速度を抑える事もできません(車の速度を抑えるのは交差点の事故防止で特に重要な点ですよね)。
自転車インフラの改良だけでは不充分で、車道の方も
- 流出側1車線化
- 横断歩道の短縮
- 交差点の角のRの縮小
交差点を通過した先の自転車通行空間
上の写真から奥に進んだ地点です。共同溝が埋まってますね。この点検蓋の段差も地味に自転車の乗り心地を悪化させます。歩行者の歩きやすさには影響が無いんだから沿道の方に埋設すれば良いのに。
カクカクと折り曲げられた通行空間
自転車での走りやすさを無視した線形です。これに対して、自転車はクロソイド曲線を描いて曲がったり、インコーナーを繋いで直線的に走り抜けたり、或いは歩行者空間と行き来したりと挙動が一定しません。他の自転車の動きを予測しにくいので、追い越しもすれ違いも困難です。これも設計ミスが招いた不規則行動です。
わざわざ屈曲でシフトさせた先は滞留空間
そして、この屈曲はそもそも必要ないんです。自転車通行空間を屈曲させずにまっすぐ通していれば、横断待ちの歩行者・自転車の滞留空間にぶつかる事も無いし、交差点でドライバーの死角に入る事も無い。
自転車通行空間の舗装材
山手通りは歩行者と自転車の空間を舗装ブロックの色だけで区別しています。しかし色の区別は単なる模様としか認知されていないらしく、歩行者が気付かずに自転車空間に入ってきたり、ずっと自転車空間を歩いていたりします。単なる色の区別では力不足だと分かります。
また、ブロック舗装は自転車にとってガタガタと乗り心地が悪いので、車道の端を通行する利用者もしばしば見られます。
歩道は乗り心地が悪すぎて利用者に避けられている。
歩行者に空間の区分を認知させる意味でも、自転車利用者に選ばれる快適な路面を提供する意味でも、
- 歩行者空間はブロック舗装に、
- 自転車通行空間は滑らかなアスファルト舗装に
通行区分を示す標識
一応こういう標識は立ってますがあまり効いてません。木の枝で隠れちゃうし。寧ろ自転車の通行空間を物理的に制約する障害物になっています。
交差点周辺の空間的余裕
以上見てきた問題は、空間が乏しければ確かに解決は難しいんですが、山手通りの中落合周辺では歩行者の通行量に対して歩道空間が有り余っています。これだけ有れば、本来なら誰にとっても使いやすい道路空間にできたはずです。
(新宿区の古い道路台帳を見ると、どうやら以前は交差点の四隅に左折車用のバイパスが引かれていたようです。)
では最後に私が考える改良イメージを。
Before
After
どこを通るべきか、どこで待つべきか、どこで注意が必要かが、誰にとっても分かりやすいでしょ?
一点だけ補足すると、路面に描いた白い逆三角形は「譲れ(yield)」を意味する標示です。交差方向の移動者(横断歩行者など)が居る場合、自転車は(減速し、必要なら止まって)そちらの通行を優先し、居ない場合はそのまま通過できるというルールを意味します。
2015年4月30日追記
{
あ、肝心の交差点内の図を描いてない!
}
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